一部改正後の三重県食の安全・安心の確保に関する条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第九条)
第二章 基本方針(第十条)
第三章 基本的施策
第一節 安全・安心の推進(第十一条―第十八条)
第二節 県民の参加等(第十九条―第二十二条)
第四章 安全・安心の確保
第一節 出荷の禁止(第二十三条)
第二節 自主回収の報告(第二十四条・第二十五条)
第三節 立入調査及び措置勧告(第二十六条・第二十七条)
第五章 三重県食の安全・安心確保のための検討会議(第二十八条・第二十九条)
第六章 雑則(第三十条)
附則
食は、我々が日々の生活を送る上で基本となるものであり、健康で豊かな生活を送るためには食の安全・安心が確保されなければならない。
近年、製造技術の高度化や輸入食品の増加等により、我々の食生活を取り巻く環境は大きく変化しており、食に対する県民の関心が高まっているところである。
食の安全・安心を確保するために多くの法律が制定されているが、本県のほか、各地において食に関する様々な問題が繰り返し発生したことから、食の安全・安心の確保に対する県民の要請は一段と強まってきている。
このような状況において、同様の問題が繰り返されることなく、食の安全・安心を確保していくことは、本県が取り組むべき喫緊の課題であるが、その取組に当たっては、食品等の監視、適正な表示の実施の確保、食品関連事業者への指導の強化等による県民の健康の保護並びに地産地消等の推進を通じた食品関連事業者と県民との間の信頼関係の構築並びに安全でかつその安全性を信頼できる県産食品の供給及び消費の拡大を図っていくことが重要である。
ここに、食の安全・安心の確保に関する基本理念を明らかにしてその方向性を示し、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に推進するため、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、県民が豊かな食生活を通じて健康に暮らしていくためには食の安全・安心を確保することが重要であることに鑑み、食の安全・安心の確保に関し、基本理念を定め、並びに県及び食品関連事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定めることにより、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に推進し、もって県民の健康の保護並びに食品関連事業者と県民との間の信頼関係の構築並びに安全でかつその安全性を信頼できる食品の供給及び消費の拡大に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 食の安全・安心 食品の安全性及びその安全性に対する信頼をいう。
二 食品 全ての飲食物(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除く。)をいう。
三 食品等 食品並びに添加物(食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第四条第二項に規定する添加物をいう。)、器具(同条第四項に規定する器具をいう。)、容器包装(同条第五項に規定する容器包装をいう。)及び食品の原料又は材料として使用される農林水産物をいう。
四 食品関連事業者 食品等又は肥料、農薬、飼料、飼料添加物、動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある農林漁業の生産資材の生産、輸入、加工、調理又は販売その他の事業活動を行う事業者をいう。
五 生産者 食品関連事業者のうち、農林水産物を生産し、又は採取する者及びこれらの者で構成される団体をいう。
六 特定事業者 次に掲げる食品関連事業者及び団体であって、県の区域内に事業所、事務所その他の事業に係る施設又は場所を有するものをいう。
イ 食品等を生産し、採取し、製造し、輸入し、又は加工することを営む者
ロ 食品等を販売することを営む者であって、規則で定めるもの
ハ イに掲げる者により構成される団体
(基本理念)
第三条 食の安全・安心の確保は、このために必要な措置が県民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講ぜられることにより、行われなければならない。
2 食の安全・安心の確保は、県民、食品関連事業者、県等全ての関係者の相互理解、連携及び協働の下に、食品の安全性に対する県民の信頼が確保されることを旨として行われなければならない。
3 食の安全・安心の確保は、食品等の表示が適正に実施されることにより、行われなければならない。
4 食の安全・安心の確保は、食品等の生産から消費に至る一連の行程の各段階において、県民の健康への悪影響を未然に防止する観点から、科学的知見に基づき必要な措置が講ぜられることにより、行われなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(食品関連事業者の責務)
第五条 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、自らが食品等の安全性及びその安全性に対する信頼の確保について第一義的責任を有するとの認識の下に、関係法令を遵守して事業活動を行う責務を有する。
2 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、県民の信頼を損なうことのないよう、食品等の安全性を確保するために必要な措置を食品等の生産から販売に至る一連の行程の各段階において適切に講ずる責務を有する。
3 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、関係法令を遵守する意識の向上を図り、並びに関係法令の趣旨及び内容に関する知識を習得するための教育及び研修を実施するとともに、その事業活動の適正を確保するために必要な体制の整備に努めなければならない。
4 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る食品等に関する正確かつ適切な情報を提供することにより、食品等に対する県民の信頼を確保するよう努めなければならない。
5 食品関連事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、県が実施する食の安全・安心の確保に関する施策に協力する責務を有する。
(事業者団体の役割)
第五条の二 食品関連事業者により構成される団体は、その構成員に対し必要な情報の提供、助言その他の協力を行うように努めることによって、食の安全・安心の確保に積極的な役割を果たすものとする。
(県民の役割)
第六条 県民は、食の安全・安心の確保に関する知識と理解を深めるよう努めるものとする。
2 県民は、県が実施する食の安全・安心の確保に関する施策について意見を表明するように努めることによって、食の安全・安心の確保に積極的な役割を果たすものとする。
3 県民は、県が実施する食の安全・安心の確保に関する施策について協力するよう努めるものとする。
(国等との連携)
第七条 県は、食の安全・安心の確保に関する施策の推進に当たっては、国又は他の地方公共団体との密接な連携を図るものとする。
2 県は、食の安全・安心の確保を図るため必要があると認めるときは、国に対し意見を述べ、必要な措置を講ずるよう求めるものとする。
(年次報告)
第八条 知事は、毎年、議会に、食の安全・安心の確保に関して実施した施策に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
(財政上の措置)
第九条 県は、食の安全・安心の確保に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第二章 基本方針
(基本方針)
第十条 知事は、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に推進するため、食の安全・安心の確保に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 食の安全・安心の確保に関する基本的方向
二 食の安全・安心の確保のために実施すべき施策
三 前二号に掲げるもののほか、食の安全・安心の確保に関する重要事項
3 知事は、基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、三重県食の安全・安心確保のための検討会議に意見を求めるとともに、広く県民等から意見を聴かなければならない。
4 知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 基本的施策
第一節 安全・安心の推進
(体制の整備)
第十一条 県は、食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に推進するために必要な体制の整備を図るものとする。
2 県は、食品を摂取することにより人の健康に係る重大な被害が生ずることを防止するため、当該被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生防止に関する体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
(監視、指導等)
第十二条 県は、食の安全・安心を確保するため、食品等の生産から販売に至る一連の行程の必要な段階において、監視、指導、検査その他の必要な措置を講ずるものとする。
(調査研究の推進)
第十三条 県は、食の安全・安心の確保に関する施策を科学的知見に基づき効果的に実施するため、必要な調査及び研究並びにその成果の普及啓発を行うものとする。
(人材の育成)
第十四条 県は、食の安全・安心の確保に関する専門的な知識を有する人材を育成するために必要な措置を講ずるものとする。
(食育の推進による普及啓発)
第十五条 県は、県民が食の安全・安心の確保についての理解と関心を深めることができるよう、家庭、地域、学校その他の様々な場における食育の取組の推進を通じて、食の安全・安心の確保に関する普及啓発を行うものとする。
(適正表示の推進)
第十六条 県は、食品等の表示に対する県民の信頼を確保するため、食品等の表示が適正に実施されるよう監視及び指導を行うとともに、食品等の表示に係る制度に関し、普及啓発その他の必要な措置を講ずるものとする。
(自主基準の設定及び公開の促進)
第十七条 県は、食品関連事業者自らが提供する食品等に係る食の安全・安心に関する自主基準の設定及び公開を促進するために必要な措置を講ずるものとする。
(認証制度の推進)
第十八条 県は、一定の要件又は基準に基づいて県内で生産された農林水産物等及びそれらを主原料として使用して県内で生産された食品の認証制度等を積極的に推進し、安全でかつその安全性を信頼できる食品の生産、流通及び消費の拡大を図るものとする。
第二節 県民の参加等
(相互理解の増進等)
第十九条 県は、県民、食品関連事業者、県等全ての関係者の相互理解を増進し、信頼関係を構築できるようにするため、意見交換又は相互交流の機会の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
(関係者との連携及び協働)
第二十条 県は、食の安全・安心を確保するため、県民及び食品関連事業者並びにこれらの者により構成される団体と連携及び協働して、施策を推進するものとする。
(施策の提案)
第二十一条 県民及び食品関連事業者は、食の安全・安心の確保に関する施策の策定、改善又は廃止について、知事に提案することができる。
2 知事は、前項の規定による提案が行われたときは、必要な検討を行い、当該提案をした者にその結果を通知するものとする。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による提案に関し必要な事項は、規則で定める。
(危害情報等の申出)
第二十二条 県民は、食の安全・安心を損ない、又は損なうおそれのある食品等についての情報を入手した場合は、必要な措置が講ぜられるよう、県に対して申出をすることができる。
2 食品関連事業者は、食の安全・安心を損ない、又は損なうおそれのある食品等についての情報を入手した場合は、必要な措置が講ぜられるよう、県に対して申出をするよう努めるものとする。
3 県は、前二項に規定する申出の内容に相当な理由があると認めるときは、速やかに、関係法令に基づく必要な措置を講ずるものとする。
第四章 安全・安心の確保
第一節 出荷の禁止
(出荷の禁止)
第二十三条 生産者は、食品衛生法第十一条第二項又は第三項の規定により販売等が禁止された農林水産物を出荷してはならない。
第二節 自主回収の報告
(自主回収の報告)
第二十四条 特定事業者は、その生産し、採取し、製造し、輸入し、加工し、又は販売した食品等の自主的な回収に着手した場合(法令に基づく命令又は書面による回収の指導を受けて回収に着手したときを除く。)であって、当該食品等が次の各号のいずれかに該当するときは、速やかに、その旨を規則で定めるところにより知事に報告しなければならない。
一 食品衛生法の規定に違反する食品等(同法第十九条第二項の規定に違反するもの(規則で定めるものを除く。)を除く。)
二 前号に掲げるもののほか、健康への悪影響の未然防止の観点から規則で定める食品等
2 特定事業者(第二条第六号ロに規定するものを除く。)のうち、自ら生産し、採取し、製造し、輸入し、又は加工した食品等を、当該食品等を生産し、採取し、製造し、輸入し、又は加工した施設又は場所において、他の者を経ることなく直接販売することを主として営む者については、前項の規定は、適用しない。
(回収に係る指導等)
第二十五条 知事は、前条第一項の規定による報告に係る回収の措置が、健康への悪影響の発生又はその拡大を防止する上で適切でないと認めるときは、当該報告を行った特定事業者に対し、回収の措置の変更に係る指導その他の必要な指導を行うことができる。
2 知事は、前条第一項の規定による報告を受けたときは、速やかに当該報告に係る食品等が流通する地域を管轄する地方公共団体の長に対し、当該報告に係る情報を提供するものとする。
3 前条第一項の規定による報告を行った特定事業者は、当該報告に係る回収を終了したときは、速やかにその旨を知事に報告しなければならない。
4 知事は、前条第一項又は前項の規定による報告を受けたときは、速やかに、県民に対し当該報告の内容に係る情報を提供するものとする。
第三節 立入調査及び措置勧告
(立入調査等)
第二十六条 知事は、第二十三条の規定の施行に必要な限度において、生産者に対して報告を求め、又は当該職員に、これらの者の事業所、事務所その他の事業に係る施設若しくは場所に立ち入り、食品等、帳簿書類その他の物件を調査させ、関係者に質問をさせ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、これらの物件の提出を求めさせることができる。
2 前項の規定により立入調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(措置勧告)
第二十七条 知事は、生産者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該生産者に対し、必要な措置を勧告することができる。
一 第二十三条の規定に違反して農林水産物を出荷したとき。
二 前条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同規定による調査若しくは物件の提出を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
2 知事は、前項の規定による勧告をしようとするときは、当該勧告に係る生産者に対し、あらかじめその旨を通知し、釈明及び証拠の提出の機会を与えるものとする。ただし、公益上緊急を要するときは、この限りでない。
3 知事は、第一項の規定による勧告をした場合は、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。
第五章 三重県食の安全・安心確保のための検討会議
(設置及び所掌事務)
第二十八条 食の安全・安心の確保に関する施策を調査審議するため、知事の附属機関として、三重県食の安全・安心確保のための検討会議(以下「検討会議」という。)を置く。
2 検討会議は、次に掲げる事項について調査審議する。
一 基本方針に関する事項
二 食の安全・安心の確保に関する施策に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、知事が必要と認める事項
3 検討会議は、前項に規定する事項に関し、知事に意見を述べることができる。
(組織等)
第二十九条 検討会議は、委員十人以内で組織する。
2 前項の場合において、男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数の十分の四未満とならないものとする。ただし、知事がやむを得ない事情があると認めた場合は、この限りでない。
3 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。
一 消費者
二 食品関連事業者
三 学識経験を有する者
四 前三号に掲げる者のほか、知事が必要と認める者
4 委員の任期は、二年とする。
5 委員は、再任されることができる。
6 前各項に定めるもののほか、検討会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第六章 雑則
(規則への委任)
第三十条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第四章の規定は、平成二十一年七月一日から施行する。
(経過措置)
2 第四章第三節の規定は、平成二十一年六月三十日までに出荷された農林水産物については、適用しない。
3 この条例の施行の際現に策定されている三重県食の安全・安心確保基本方針は、第十条の基本方針とする。
(見直し)
4 この条例の規定については、食の安全・安心の確保に関する国の施策等の状況及びこの条例の施行の状況を勘案し、必要があると認められるときは検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。
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