障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくり条例案
議提議案第六号
障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくり条例案
右提出する。
平成三十年六月十一日
提出者 障がい者差別解消条例策定調査特別委員長 杉本 熊野
障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくり条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第九条)
第二章 障がいを理由とする差別を解消するための措置(第十条―第十五条)
第三章 障がいを理由とする差別を解消するための体制の整備
第一節 相談体制(第十六条・第十七条)
第二節 紛争の解決を図るための体制(第十八条―第二十四条)
第四章 障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策(第二十五条―第三十一条)
第五章 共生社会の実現に向けた施策の推進(第三十二条・第三十三条)
第六章 雑則(第三十四条・第三十五条)
附則
平成十八年十二月、障がい者の人権と基本的自由の享有を確保し、障がい者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする障害者の権利に関する条約が採択され、我が国は、平成二十六年一月に同条約を締結した。
障害者の権利に関する条約は、「障がいが、機能障がいを有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずる」という社会モデルの考え方を基本としている。また、同条約は、合理的配慮の否定を含めたあらゆる形態の差別を障がいに基づく差別とし、この差別を撤廃するための措置をとることを定めるとともに、合理的配慮とは、障がい者の人権と基本的自由の享有を確保するための「必要かつ適当な変更及び調整」であり、恩恵的に施されるものではないことを明らかにした。
これらの画期的な考え方をはじめとする障害者の権利に関する条約の理念を実現するため、政府は、関係する法律の整備などを行っており、三重県においても、これらを踏まえ、障がい者の権利を守るための取組を進めているところである。
しかしながら、今なお、障がい者に対する理解や、障がい者との対話を通じて社会的障壁を認識し、除去することの重要性に対する理解が十分に深まっておらず、障がい者はもとより、その家族も様々な偏見や差別に直面し、苦悩している。また、障がい者とその家族は、障がい者が自らの選択に基づき、地域において自立し、社会参加することについて不安を抱えている現状がある。
このような状況を踏まえ、県民が互いに支え合い、社会全体で常に障がい者との積極的な対話を通じて社会的障壁の除去に取り組み、障がいを理由とする差別や障がい者の自立と社会参加を妨げている諸要因の解消を図らなければならない。我々は、このような取組を進めることによって、障がい者がその個性と能力を発揮し、社会のあらゆる分野に参加し、活躍できることが、県民一人ひとりの幸福の実現につながるものと確信している。
障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくりは、県民一人ひとりの理想であり、果たすべき使命である。
ここに、我々は、このような三重県づくりに向けた「未来への新たな一歩」を踏み出し、共生社会を実現することを決意し、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、全ての県民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)を実現するため、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策並びに障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策(以下「共生社会の実現に向けた施策」という。)に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、共生社会の実現に向けた施策の基本となる事項を定めること等により、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)その他の関係法令(三重県ユニバーサルデザインのまちづくり推進条例(平成十一年三重県条例第二号)その他の障がい者に関する施策に係る条例を含む。第四条第二項及び第九条において同じ。)と相まって、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい及び高次脳機能障がいを含む。)、難病に起因する障がいその他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
三 合理的な配慮 全ての障がい者が障がい者でない者と等しく基本的人権を享有することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものをいう。
四 行政機関等 地方公共団体(県、県の区域内の市町及び県の区域内の特別地方公共団体をいい、地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。次号において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。
五 地方独立行政法人 地方公共団体が設立した地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人(同法第二十一条第三号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。
六 事業者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第二条第七号に規定する事業者をいう。
(基本理念)
第三条 共生社会の実現は、全ての障がい者が、障がい者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、障害者基本法第三条各号に掲げる事項を旨として図られなければならない。
2 社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮は、これが障がいを理由として障がい者でない者と不当な差別的取扱いをすることを回避し、障がい者の基本的人権の享有を確保するために行われるものであるとの考え方にのっとり、行われなければならない。
3 県は、共生社会の実現に向けた施策を講ずるに当たっては、障がい者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならない。
第四条 障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。
一 社会のあらゆる分野における全ての構成員が社会的障壁の除去を実施することにより、障がいを理由とする差別の解消を推進する責務を有するとの認識を踏まえて策定され、及び実施されること。
二 障がいを理由とする差別の多くが障がい者に対する理解(障がい者に対する肯定的認識を含む。以下同じ。)及び社会的障壁の除去の重要性に対する理解が十分でないことに起因することを踏まえ、障がい者に対する理解及び社会的障壁の除去の重要性に対する理解を深める施策と一体的に、策定され、及び実施されること。
三 社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮を的確に行うためには、現に社会的障壁の除去を必要としている障がい者との対話を通じてその意思の確認が行われることが重要であるとの認識を踏まえて策定され、及び実施されること。
四 障がい者が障がいを理由とする差別に加え、性別、年齢その他の障がい以外の要因に基づく差別を受ける状況があることに鑑み、障がい以外の要因に基づく差別の解消を図るための施策との密接な連携の下に、策定され、及び実施されること。
2 障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策は、障害者基本法その他の関係法令に基づく施策と一体のものとして総合的に、策定され、及び実施されなければならない。
(県の責務)
第五条 県は、前二条に定める基本理念にのっとり、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 県は、自ら設置し、又は管理する施設における障がい者の利用の円滑化及び障がい者の移動の円滑化を図るための環境の整備を行うものとする。
(国等との連携協力)
第六条 県は、共生社会の実現に向けた施策の策定及び実施に当たっては、国、市町、関係機関、関係団体、事業者その他の関係者と連携し、及び協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第七条 事業者は、県が実施する共生社会の実現に向けた施策に協力するよう努めるとともに、その事業活動を行うに当たっては、共生社会の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。
(県民の役割)
第八条 県民は、共生社会を実現する上で障がいを理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障がい者に対する理解及び社会的障壁の除去の重要性に対する理解を深めるものとする。
2 県民は、県が実施する共生社会の実現に向けた施策に協力するよう努めるとともに、障がい者の意思を尊重しつつ、障がい者の自立及び社会参加への支援を主体的に行い、共生社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
(障害者計画の策定に関する基本方針)
第九条 県は、障がい者に関する施策の総合的かつ計画的な推進が図られるよう、障害者基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成二十三年法律第七十九号)その他の関係法令の理念を踏まえ、障害者基本法第十一条第二項の規定による障害者計画(第三十二条第一項において「障害者計画」という。)を策定するものとする。
第二章 障がいを理由とする差別を解消するための措置
(行政機関等における障がいを理由とする差別の禁止)
第十条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障がいを理由として障がい者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施を怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮をしなければならない。
(事業者における障がいを理由とする差別の禁止)
第十一条 事業者は、その事業を行うに当たり、障がいを理由として障がい者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施を怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮をするように努めなければならない。
(県等の地方公共団体等職員対応要領)
第十二条 県(地方公営企業法第三章の規定の適用を受ける県の経営する企業を除く。)の機関及び地方独立行政法人(県が設立したものに限る。第十九条第四項において同じ。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第十条第一項に規定する地方公共団体等職員対応要領を定めるものとする。
(不当な差別的取扱い等の事例の具体化)
第十三条 県は、不当な差別的取扱いをすることによる障がい者の権利利益の侵害の防止等及び社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮を的確に行うことに資するため、障害福祉サービスの提供その他の障がい者の日常生活及び社会生活に関する分野ごとに不当な差別的取扱い及び社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮の事例の具体化を図る措置を講ずるものとする。
(社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮に関する環境の整備)
第十四条 行政機関等及び事業者は、障がい者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があるか否かにかかわらず、社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めるものとする。
(事業者への支援)
第十五条 県は、事業者に対し、社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮を的確に行うための情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を実施するよう努めるものとする。
第三章 障がいを理由とする差別を解消するための体制の整備
第一節 相談体制
(相談)
第十六条 県は、障がい者、障がい者の家族、事業者その他の関係者からの第十条及び第十一条に規定する障がいを理由とする差別(以下「差別事案」という。)に関する相談に応じなければならない。
2 県は、差別事案に関する相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 市町その他の関係行政機関と連携して、必要な助言、調査及び関係者間の調整を行うこと。
二 関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと。
3 県は、前項の業務のほか、市町において応じた障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第十四条に規定する障害を理由とする差別に関する相談に係る事案の解決を支援するため、必要な助言を行うものとする。
4 県は、第二項の業務を行うに当たり、差別事案以外の事案に関する相談を受けた場合において、当該事案が障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律第二条第二項に規定する障害者虐待、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第三十五条に規定する不当な差別的取扱いその他の障がい者の権利利益を侵害するもの(次条第四項において「障がい者の権利利益を侵害するもの」という。)であると認められるときは、障がい者の権利利益の保護が適切に行われるよう、関係行政機関への通告、通報その他の必要な対応を図るものとする。
(県における相談員の設置)
第十七条 県に、障がい者、障がい者の家族、事業者その他の関係者からの差別事案に関する相談に応じる者として、相談員を置く。
2 相談員は、障がいを理由とする差別の解消に関する知識経験を有する者のうちから、知事が任命する。
3 相談員は、前条第二項及び第三項の業務を行うものとする。
4 相談員は、前条第二項の業務を行うに当たり、差別事案以外の事案に関する相談を受けた場合において、当該事案が障がい者の権利利益を侵害するものであると認められるときは、障がい者の権利利益の保護が適切に行われるよう、関係行政機関への通告、通報その他の必要な対応を図るものとする。
5 相談員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
6 県は、第三項の業務を円滑かつ効果的に行うために必要な人員を確保するとともに、相談員に対し、同項の業務の遂行に必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
第二節 紛争の解決を図るための体制
(助言及びあっせんの申立て)
第十八条 障がい者、障がい者の家族、事業者その他の関係者は、前二条の規定による相談を経ても差別事案の解決が期待できないと認められるときは、知事に対し、当該差別事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うべき旨の申立てをすることができる。
2 障がい者の家族その他の関係者は、障がい者の意思に反して前項の申立てをすることができない。
3 第一項の申立ては、行為の日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から三年を経過した差別事案に係るものであるときは、することができない。
(助言及びあっせん)
第十九条 知事は、前条第一項の申立てがあったときは、助言又はあっせんを行うものとする。ただし、助言又はあっせんを行うことが適当でないと認められるときは、この限りでない。
2 知事は、前条第一項の申立てがあったときは、当該申立てに係る差別事案の事実関係について調査を行うことができる。この場合において、当該申立てをした者(第二十三条及び第二十四条第六項において「申立人」という。)、相手方その他の関係人は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。
3 知事は、助言又はあっせんを行うに当たり必要があると認めるときは、三重県障がい者差別解消調整委員会の意見を聴くものとする。
4 助言又はあっせんの対象となる差別事案の当事者が県又は地方独立行政法人であるときは、前項の規定にかかわらず、知事は、助言又はあっせんを行うに当たり、三重県障がい者差別解消調整委員会の意見を聴くものとする。
5 知事は、あっせんによっては前条第一項の申立てに係る差別事案の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。
(三重県障がい者差別解消支援協議会に対する報告)
第二十条 知事は、助言又はあっせんを行った結果明らかになった課題があると認めるとき又は次項の規定により三重県障がい者差別解消調整委員会から報告を受けたときは、当該課題又は報告について三重県障がい者差別解消支援協議会に報告するものとする。
2 三重県障がい者差別解消調整委員会は、前条第三項及び第四項の規定に基づく知事の諮問に応じて調査審議を行った結果明らかになった課題があると認めるときは、当該課題について知事に報告するものとする。
(勧告)
第二十一条 知事は、助言又はあっせんを行った場合において、差別事案に該当する行為をしたと認められる者が、正当な理由なく当該助言又はあっせんに従わないときは、当該者に対して、必要な措置をとるよう勧告することができる。
(意見の聴取)
第二十二条 知事は、前条の規定による勧告をする場合には、あらかじめ、期日、場所及び事案の内容を示して、勧告の対象となる者又はその代理人の出頭を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、これらの者が正当な理由なく意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わないで勧告することができる。
(助言及びあっせんの状況の公表)
第二十三条 知事は、差別事案の発生の防止又は差別事案が発生した場合における当該差別事案の解決に資するため、助言又はあっせんを行った場合において、申立人、相手方その他の関係人の秘密を除いて、必要な事項を一般に公表することができる。
(三重県障がい者差別解消調整委員会)
第二十四条 第十九条第三項及び第四項の規定に基づく知事の諮問に応じて調査審議を行わせるため、知事の附属機関として、三重県障がい者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会は、委員十人以内で組織する。
3 委員は、関係行政機関の職員、学識経験のある者、障がい者、障がい者の福祉に関する事業に従事する者、事業者その他知事が必要と認める者のうちから知事が任命する。
4 前項の規定による委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
6 調整委員会は、調査審議を行うために必要があると認めるときは、申立人、相手方その他の関係人に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
7 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第四章 障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策
(障害福祉サービス事業に従事する人材の育成の支援)
第二十五条 県は、障害福祉サービス事業を行う者が障害福祉サービス事業の円滑な実施を図ることに資するため、障害福祉サービス事業に従事する人材の育成のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(教育)
第二十六条 県は、障がいの有無にかかわらず児童及び生徒が共に教育を受けられるようにするために必要な施策を積極的に推進するとともに、障がい者に対する理解及び社会的障壁の除去の重要性に対する理解を深めるための教育を推進するものとする。
2 県は、前項の施策を推進するため、障がい者である児童及び生徒が在籍する学校の設置者及び当該学校、当該児童及び生徒の保護者、地域住民その他の関係者間における連携が図られるよう必要な措置を講ずるものとする。
(就労の支援に係る情報の共有等)
第二十七条 県は、障がい者の就労の機会の確保及び拡大並びに就労の継続を図るため、関係機関、事業主その他の関係者と緊密に連携して障がい者の就労に関する情報の共有及びその適切な活用を図るものとする。
(情報の利用におけるバリアフリー化等)
第二十八条 県は、障がい者が県政に関する情報を円滑に取得し、及び県に対してその意思を表示することができるよう、点字、要約筆記その他の意思疎通のための手段による情報の発信等に努めるものとする。
2 県は、県政に関する情報をインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて提供する場合において、障がい者が当該情報を支障なく利用することができるよう、平易な表現を用いることその他の措置を講ずるものとする。
3 県は、障がい者に対し、点字、要約筆記その他の意思疎通のための手段による情報の提供等が切れ目なく行われるようにするため、障がい者の意思疎通を仲介する者の養成及び派遣等が図られるよう、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
4 手話による情報の発信等及び手話通訳を行う人材の育成等については、三重県手話言語条例(平成二十八年三重県条例第五十号)の定めるところによる。
(災害時等における支援)
第二十九条 県は、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十九条の七第一項に規定する指定避難所(次項において「指定避難所」という。)において、障がい者の円滑な利用の確保、障がい者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の障がい者の良好な生活環境の確保に資する措置が講ぜられるよう、市町に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を実施するよう努めるものとする。
2 県は、災害その他非常の事態の場合に、障がい者に対しその安全を確保するため必要な情報が迅速かつ的確に伝えられ、及び指定避難所、災害対策基本法第四十九条の四第一項に規定する指定緊急避難場所その他適切な避難場所への障がい者の避難が適切に行われるよう、市町に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を実施するよう努めるものとする。
(選挙等における投票の支援)
第三十条 県は、法律又は条例の定めるところにより行われる選挙、国民審査又は投票において、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第四十七条に規定する点字投票その他の選挙人による投票を支援する制度の周知その他の障がい者が円滑に投票できるようにするための取組を推進するため、市町に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を実施するよう努めるものとする。
(啓発活動)
第三十一条 県は、不当な差別的取扱いをすることによる障がい者の権利利益の侵害の防止等及び社会的障壁の除去の実施についての合理的な配慮を的確に行うことに資するための措置に関する広報その他の啓発活動を行うものとする。
2 県は、障がい者が基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することについての理解を深め、その権利を行使するために必要な知識を習得することができるようにするための啓発活動を行うものとする。
3 県は、障がい者に対する理解及び社会的障壁の除去の重要性に対する理解が深められるよう、障がい者への対応の仕方の分かりやすい説明、社会的障壁の除去の重要性に関する意識の啓発その他の啓発活動を行うものとする。
4 県は、県民による障がい者の自立及び社会参加への主体的な支援が円滑になされるよう、当該支援の重要性に関する意識の啓発、障がい者の自立及び社会参加を促進するための取組及び制度の周知その他の啓発活動を行うものとする。
第五章 共生社会の実現に向けた施策の推進
(共生社会の実現に向けた施策に関する計画)
第三十二条 県は、障害者計画において、共生社会の実現に向けた施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 知事は、前項の施策について定めようとするときは、あらかじめ、三重県障害者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。
3 前項の規定は、第一項に規定する施策の変更について準用する。
(三重県障がい者差別解消支援協議会)
第三十三条 障がいを理由とする差別を解消するための取組を推進するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第十七条第一項の規定に基づき、三重県障がい者差別解消支援協議会(以下「協議会」という。)を設置する。
2 委員は、関係行政機関の職員、学識経験のある者、障がい者、障がい者の福祉に関する事業に従事する者、事業者その他知事が必要と認める者のうちから知事が任命する。
3 協議会は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第十八条第一項に規定するもののほか、同項に規定する事項の処理の結果明らかになった課題及び第二十条第一項の規定により知事から報告を受けた課題を解決するための方策について調査研究を行うものとする。
4 協議会は、差別事案に関する相談並びに助言及びあっせんに係る事例を踏まえた障がいを理由とする差別を解消するための取組を推進するため、障がい者その他の関係者及び県民の参加の下に、当該差別事案の処理状況の検証を定期的に行うとともに、その結果について県民に周知するものとする。
5 協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。
第六章 雑則
(財政上の措置)
第三十四条 県は、この条例の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(規則への委任)
第三十五条 この条例に定めるもののほか、条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成三十年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第三十二条及び第六章並びに附則第二項の規定 公布の日
二 第三章(第十六条を除く。)、第四章及び第三十三条並びに附則第三項の規定 平成三十一年四月一日
(準備行為)
2 相談員並びに調整委員会及び協議会の委員の選任のために必要な行為、第二十四条第七項の規則の制定その他の準備行為は、附則第一項第二号に掲げる規定の施行の日前においても行うことができる。
(助言又はあっせんの申立てに関する期間の特例)
3 この条例の公布の日から平成三十一年三月三十一日までの間に、第十八条第三項に規定する期間が経過することとなる差別事案については、同項の規定にかかわらず、平成三十一年四月一日から起算して六月以内に限り、同条第一項の申立てをすることができる。
(検討)
4 この条例の規定については、この条例の施行後おおむね三年ごとに、この条例の施行の状況、障害者基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律その他の関係法律の見直しの状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
提案理由
全ての県民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策並びに障がい者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、共生社会の実現に向けた施策の基本となる事項を定めること等により、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この議案を提出する理由である。
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