議提議案第一号
三重県地域産業振興条例案
右提出する。
平成十七年九月二十七日
提出者
稲垣 昭義
竹上 真人
藤田 泰樹
三谷 哲央
野田 勇喜雄
森本 繁史
西場 信行
三重県地域産業振興条例
三重県は、温暖な気候、風土などの自然条件に恵まれるとともに、京阪神及び中京の大消費地に近接することから、各地域においては地域の特性に応じた農林水産業が営まれてきた。これらの農林水産業は、水源のかん養、県土の保全、良好な景観の形成などの多面的機能を発揮してきた。さらに、北勢地域、伊賀地域などにおいては、石油化学、輸送用機械、電気機械などの産業の集積が進み高い生産性を有している。このような産業資源の蓄積は、先人たちのたゆまぬ努力により築き上げられたものであり、地域経済の発展と県民生活の向上をもたらしてきた。
しかしながら、近年、社会経済活動における国際化の進展や社会的経済的環境の変化などが地域経済に大きく波及し、県民の生活に大きな影響を与えている。
このような事態に対し、県民、産業に携わる者、市町及び県が協働することを通じて三重県の将来を支える産業を力強く振興していくことにより、これからの時代を担う若者が地域の将来について希望を抱くことのできる活力のある地域社会を実現していかなければならない。また、三重県は南北に長く、産業資源の蓄積の状況が地域により異なるため、県内一律の産業振興施策ではなく、地域の特性に応じた産業の振興を計画的に推進していくことが必要である。
ここに、県内の地域経済を支える産業の振興についての基本理念を明らかにしてその方向を示し、地域の特性に応じた産業の振興を効果的かつ計画的に推進し、もって地域経済の健全な発展と県民生活の安定向上に寄与するため、この条例を制定する。
(基本理念)
第一条 地域における産業の振興は、環境と調和のとれた産業の持続的かつ多様な発展により快適で魅力ある地域社会が実現されることを基本とし、産業に携わる者及び産業の担い手となる者の能力が十分に発揮され、自らの創意工夫及び地域の特性を生かした活動が助長されることにより、地域における各々の産業の基盤の強化が図られることを旨として、行われなければならない。
(県の責務)
第二条 県は、前条の基本理念にのっとり、地域における産業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 県は、地域における産業の振興に関する施策を実施するに当たっては、国、他の地方公共団体、産業に携わる者、研究機関、地域住民等との相互の緊密な連携協力に努めなければならない。
(事業者の責務)
第三条 事業者は、第一条の基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めなければならない。
2 事業者は、地域の振興に資するため、地域社会と密接な連携を確保し、地域社会における課題について協調して取り組むよう努めなければならない。
(県民の責務)
第四条 県民は、地域における産業の振興が県民の生活の安定向上に寄与することにかんがみ、県内で生産され、製造され、又は提供される物品等(第七条において「県内物品等」という。)及び産業に携わる者の活動について関心を深め、県が実施する地域における産業の振興に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(基本方針)
第五条 県は、次に掲げる産業の振興に係る基本方針に基づき、地域における産業の振興に関する施策を実施するものとする。
一 環境と調和のとれた産業活動の持続的な発展を促進すること。
二 産業の高付加価値化、経営の革新及び新たな産業の創出を促進すること。
三 地域の多様な資源、特性等を生かした生産活動を促進する事業環境の整備を図ること。
四 産業を担うべき人材の育成及び働く場の確保を図ること。
五 研究開発の推進及びその成果の普及並びに研究開発に係る人材の育成を図ること。
六 安全で安心な農林水産物及び製品等の生産を促進すること。
七 観光及びその関連産業の振興を図ること。
八 地域の自主的な取組による農山漁村、商店街等の活性化を促進すること。
2 農林水産業の振興に係る基本方針は、前項各号に掲げるもののほか、次に掲げるものとする。
一 農林水産業が有する多面的機能が十分に発揮されるよう、環境と調和のとれた持続可能な農林水産業を促進すること。
二 県内で生産される農林水産物を県民が愛着を持って消費し、又は利用することを通じて、その需要の増進を図るとともに、地域が培ってきた生活文化への県民の理解を深めること。
3 農林水産業を除く産業の振興に係る基本方針は、第一項各号に掲げるもののほか、次に掲げるものとする。
一 自然的経済的社会的条件からみて一体である地域において、同種の事業又はこれと関連性の高い事業を行う事業者の有機的な連携を促進し、産業の集積を図ること。
二 地域の振興に寄与し、又は地域の雇用の場の確保若しくは雇用機会の創出に資することが見込まれる企業の県内への立地を促進すること。
三 中小企業の経営基盤の強化に必要な経営資源の確保に努めること。
(地域の特性に応じた産業の振興)
第六条 県は、前条の基本方針を勘案し、県内の各地域の特性に応じた産業の振興を、地域別に、効果的かつ計画的に推進するよう努めなければならない。この場合において、県は、地域の住民、市町、産業に携わる者等との協働に努めるものとする。
(広報活動)
第七条 県は、地域における産業の振興に資するため、県内物品等及び産業に携わる者の活動についての県民の関心を深めるために必要な広報活動を行うものとする。
(財政上の措置)
第八条 県は、地域における産業の振興に関する施策を実施するため必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
1 この条例は、平成十八年四月一日から施行する。
2 この条例の規定については、この条例の施行後五年を目途として、この条例の施行の状況を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。