(注)この条例案は、3月17日の一部修正を含んでおります。
議提議案第一号
子どもを虐待から守る条例案
右提出する。
平成十六年三月十一日
提出者
石原 正敬
末松 則子
舘 直人
前野 和美
中嶋 年規
竹上 真人
青木 謙順
中森 博文
水谷 隆
野田 勇喜雄
岡部 栄樹
岩田 隆嘉
津田 健児
貝増 吉郎
木田 久主一
山本 勝
森本 繁史
吉川 実
藤田 正美
溝口 昭三
島本 暢夫
橋川 犂也
山本 教和
西場 信行
岩名 秀樹
永田 正巳
杉之内 昭二
子どもを虐待から守る条例
目次
第一章 総則(第一条―第九条)
第二章 未然防止(第十条・第十一条)
第三章 早期発見及び早期対応(第十二条―第十四条)
第四章 保護及び支援(第十五条―第十七条)
第五章 子どもを虐待から守るための体制の整備(第十八条―第二十二条)
第六章 その他の施策(第二十三条―第二十六条)
第七章 雑則(第二十七条―第二十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、子どもを虐待から守ることについて、基本的な考え方、県の責務、地域社会の役割、指針の策定、通告に係る対応等を定めることにより、県民全体で子どもを虐待から守り、もって次代の社会を担う子どもの心身の健全な発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 子ども 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号。以下この条において「法」という。)第二条に規定する児童をいう。
二 保護者 法第二条に規定する保護者をいう。
三 虐待 法第二条に規定する児童虐待をいう。
(基本的な考え方)
第三条 虐待は、子どもの人権を著しく侵害する行為であり、虐待を決して行ってはならない。
2 子どもを虐待から守るための施策は、子どもの利益に最大限配慮したものでなければならない。
3 県民全体として、次代の社会を担う子どもが健やかに育つ社会の形成に向けて取り組まなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、虐待を受けた子どもの安全を確保し、生命を守ることを最優先としなければならない。
2 県は、子どもを虐待から守るため、必要な施策を講ずるとともに、必要な体制を整備しなければならない。
3 県は、子どもを虐待から守るため、市町村の施策又は事業、関係機関、関係団体又は子どもを虐待から守ることに関連する活動を行う者その他の関係者(以下「関係機関等」という。)の事業又は活動及び地域社会の取組を積極的に支援しなければならない。
(県民の責務)
第五条 県民は、虐待を許してはならない。
2 県民は、子どもを虐待から守るための施策、事業、活動等に協力するよう努めるものとする。
(保護者の責務)
第六条 保護者は、虐待を決して行ってはならず、その子どものしつけに際して人権に配慮し、その子どもの心身の健全な発達に努めなければならない。
2 保護者は、子どもを虐待から守ることについて理解を深め、必要な支援が得られるよう努めるものとする。
(市町村との協働)
第七条 県は、市町村が実施する子どもを虐待から守るための施策又は事業について必要な協力を行うものとする。
2 県は、市町村に対し、保健、医療、福祉、教育等の各分野における連携を強化し子どもを虐待から守るための役割を積極的に果たすよう協力を求めるものとする。
(関係機関等との協働)
第八条 県は、市町村と連携し、関係機関等が実施する子どもを虐待から守るための事業又は活動について必要な協力を行うものとする。
2 県は、関係機関等に対し、県が実施する子どもを虐待から守るための施策又は事業について協力を求めるものとする。
(地域社会の役割)
第九条 地域社会においては、子どもを虐待から守るため、その地域で生活し、又は活動する者が相互に助け合い、子育てに関する情報の提供その他の取組を実施する重要な役割を果たすものとする。
第二章 未然防止
(子育てに関する情報の提供等)
第十条 県は、虐待を未然に防止するため、市町村が家庭その他に対して行う子育てに関する情報の提供又は相談に係る業務について、専門的な知識及び技術の提供その他の必要な協力を行わなければならない。関係機関等が行う子育てに関する情報の提供又は相談に係る業務についても、同様とする。
2 県は、虐待を未然に防止するため、家庭その他に対して子育てに関する情報の提供又は相談に係る業務を行う場合には、子育て経験者、保育又は看護の従事経験者等との連携に努めるとともに、保護者又は妊産婦と接する時期その他の適当な時期の利用に努めるものとする。
(子育て支援指針)
第十一条 知事は、子育てに関する支援が特に必要となる家庭を把握し子育てに関して特別に必要な支援を行うための指針(以下この条において「子育て支援指針」という。)を策定しなければならない。
2 県は、子育て支援指針に基づき、前項の家庭に対し、市町村及び関係機関等との連携及び協力による総合的な支援を行うよう努めなければならない。
3 知事は、市町村及び関係機関等に対し、市町村又は関係機関等が行う子育てに関する支援に資するため、子育て支援指針を示すものとする。
4 知事は、子育て支援指針の策定に当たっては、あらかじめ子育てに関して専門的な知識を有する者の意見を聴かなければならない。この場合において必要があると認めるときは、知事は、市町村又は関係機関等の意見を聴くことができる。
5 前二項の規定は、子育て支援指針の変更について準用する。
第三章 早期発見及び早期対応
(通告等に係る対応)
第十二条 児童相談所長は、虐待を受けた子ども(虐待を受けたおそれのある子どもを含む。以下この章において同じ。)を発見した者からの通告があった場合には、直ちに、当該虐待に係る調査を行い、必要があると認めるときは当該子どもとの面会、面談等の方法により当該子どもの安全を確認しなければならない。家庭その他から虐待を受けた子どもに係る相談があった場合についても、同様とする。
2 前項の虐待を受けた子どもの保護者は、同項の規定による安全の確認に協力しなければならない。
(通告等に係る体制の整備等)
第十三条 県は、市町村及び関係機関等との連携及び協力を図り、虐待を受けた子どもを発見した者からの通告を常時受け、及び虐待を受けた子どもに係る家庭その他からの相談に常時応ずることができる体制の整備に努めなければならない。
2 県は、前項の通告を行った者又は相談を行った者に不利益が生じないよう必要な措置を講ずるとともに、通告しやすく、かつ、相談しやすい環境づくりに努めなければならない。
(早期発見対応指針)
第十四条 知事は、県、市町村又は関係機関等が虐待を受けた子どもを早期に発見し、迅速かつ的確に対応するための指針(以下この条において「早期発見対応指針」という。)を策定しなければならない。
2 知事は、市町村及び関係機関等に対し、市町村又は関係機関等が行う虐待を受けた子どもの早期発見及び早期対応に資するため、早期発見対応指針を示すものとする。
3 知事は、早期発見対応指針の策定に当たっては、あらかじめ虐待を受けた子どもの心身の状況等に関して専門的な知識を有する者の意見を聴かなければならない。この場合において必要があると認めるときは、知事は、市町村又は関係機関等の意見を聴くことができる。
4 前二項の規定は、早期発見対応指針の変更について準用する。
第四章 保護及び支援
(保護支援指針)
第十五条 知事は、虐待を受けた子ども及び虐待を行った保護者の状況に応じて適切な保護及び支援を行うための指針(以下この章において「保護支援指針」という。)を策定しなければならない。
2 知事は、市町村及び関係機関等に対し、市町村又は関係機関等が行う適切な保護及び支援に資するため、保護支援指針を示すものとする。
3 知事は、保護支援指針の策定に当たっては、あらかじめ虐待に係る保護及び支援に関して専門的な知識を有する者の意見を聴かなければならない。この場合において必要があると認めるときは、知事は、市町村又は関係機関等の意見を聴くことができる。
4 前二項の規定は、保護支援指針の変更について準用する。
(虐待を受けた子どもに対する保護及び支援)
第十六条 県は、市町村又は関係機関等と連携し、保護支援指針に基づき、虐待を受けた子どもに対し、当該子どもの心身の健全な発達を促進するためのケアプランの作成その他の方法により適切な保護及び支援を行うよう努めなければならない。
(虐待を行った保護者への指導等)
第十七条 県は、市町村又は関係機関等と連携し、保護支援指針に基づき、虐待を行った保護者に対し、その虐待を受けた子どもとの良好な関係を再構築するための指導の徹底等に努めなければならない。
第五章 子どもを虐待から守るための体制の整備
(連携・協力体制の整備)
第十八条 県は、子どもを虐待から守るため、県、市町村又は関係機関等の各々が保有する虐待に関する情報を共有化するとともに、綿密な連携及び協力を図るための体制の整備を行わなければならない。
2 県は、前項の体制が効果的に機能するため、市町村に対し、同項に準ずる体制の整備を行うよう要請し、必要に応じて支援を行うものとする。
(専門家による援助体制の整備)
第十九条 県は、子どもを虐待から守るため、医師、弁護士等専門的な知識を有する者と協力し、県が常に必要な助言又は援助を受けることができる体制の整備に努めなければならない。
(在宅における支援体制の整備)
第二十条 県は、虐待を受けた子どもが当該虐待を行った保護者と同居する場合における虐待の再発を防止するため、その家庭が属する地域社会との連携を図り、その家庭への支援を継続的に行うことができる体制の整備に努めなければならない。
(子どもを虐待から守る家)
第二十一条 知事は、地域における子どもを虐待から守るための取組を促進するため、住宅街、商店街等に居住する者であって次に掲げる事業について協力が得られるもの(以下この条において「協力者」という。)の居宅を「子どもを虐待から守る家」として指定することができる。
一 子どもからの相談に応ずること。
二 子どもに一時的な避難場所を提供すること。
2 協力者は、前項の規定により指定された居宅に「子どもを虐待から守る家」の表示を行わなければならない。
3 前項の「子どもを虐待から守る家」の表示は、子どもにとって分かりやすいものでなければならない。
4 知事は、第二項の「子どもを虐待から守る家」の表示が行われた居宅の場所について、子どもが容易に認識できる方法により周知するよう努めなければならない。
5 知事は、協力者の安全の確保に十分に配慮しなければならない。
(乳幼児を保護するための拠点施設)
第二十二条 知事は、医療、福祉等の分野における関係機関等の協力のもとに、その管理し、又は運営する施設を乳幼児を保護するための拠点施設として指定することができる。
2 知事は、前項の規定により指定した施設を管理し、又は運営する関係機関等に対し、乳幼児を保護するために必要な支援を行うことができる。
第六章 その他の施策
(子ども虐待防止啓発月間)
第二十三条 県民の間に広く子どもを虐待から守ることについての関心と理解を深めるとともに、次代を担う子どもの心身の健全な発達に寄与するため、子ども虐待防止啓発月間を設ける。
2 子ども虐待防止啓発月間は、毎年十一月とする。
3 県は、子ども虐待防止啓発月間において、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるとともに、市町村又は関係機関等がその趣旨にふさわしい行事を実施するよう要請するものとする。
(子ども自身による安全確保への支援)
第二十四条 県は、子どもが虐待から自らの心身の安全を確保できるようにするため、市町村又は関係機関等と連携し、子どもに対し、情報の提供その他の必要な事業を実施するよう努めるものとする。
(人材の養成等)
第二十五条 県は、県、市町村又は関係機関等による子どもを虐待から守るための事業又は活動が調和よく融合され、効果的に実施されるよう人材の養成に努めなければならない。
2 県は、子どもを虐待から守ることに関して職務上関係のある職員の資質の向上のための研修等を実施するよう努めなければならない。
(調査研究等)
第二十六条 県は、子どもを虐待から守るための調査及び研究に努めるとともに、必要な広報その他の啓発活動に努めなければならない。
第七章 雑則
(秘密の保持)
第二十七条 県は、関係機関等と連携し、又は協力し、子どもを虐待から守るための施策又は事業を実施する場合には、個人情報について慎重に取り扱い、必要に応じて当該関係機関等と協定を締結する等により、秘密の保持に十分に配慮しなければならない。
2 関係機関等は、虐待に係る個人情報について慎重に取り扱い、秘密の保持に配慮しなければならない。
(年次報告)
第二十八条 知事は、毎年、虐待の発生状況、虐待に係る通告等の状況、県の施策の実施状況その他の県内における虐待に係る状況につき年次報告として取りまとめ、議会に報告し、その概要を県民に公表しなければならない。
(委任)
第二十九条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
1 この条例は、平成十六年四月一日から施行する。ただし、第十条、第十二条、第十三条及び第二十一条から第二十四条までの規定は平成十六年七月一日から、第十一条、第十四条及び第四章の規定は平成十六年十月一日から施行する。
2 この条例の施行後三年を経過した場合において、この条例の施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。