不妊治療への保険適用の拡大を求める意見書
公益社団法人日本産婦人科学会のまとめによると、平成30年に不妊治療の一つである体外受精といった生殖補助医療によって生まれた子どもの数は56,979人となり、前年に続いて過去最高を更新した。これは実に16人に1人が生殖補助医療で生まれたということである。また、晩婚化などで妊娠を考える年齢が上がり、不妊に悩む人々が増えていることから、生殖補助医療に係る治療件数も454,893件と過去最高となった。
しかしながら、不妊治療への保険適用の範囲は、不妊の原因調査等一部に限られている。国においては平成16年度に年1回10万円を限度に助成を行う「特定不妊治療助成事業」が創設され、その後も助成額や所得制限などを段階的に拡充してきているが、保険適用外の体外受精や顕微授精は、1回当たり数十万円の費用がかかり何度も繰り返すことが多いため、不妊治療を行う人々にとって過重な経済負担になっている場合が多い。
厚生労働省は、不妊治療の実施件数や費用などの実態調査を令和2年10月から始めているが、不妊治療への保険適用の拡大及び所得制限の撤廃も含めた助成制度の拡充は、早急に解決しなければならない喫緊の課題である。
よって、本県議会は、国において、不妊治療を受ける人々が今後も安心して当該治療に取り組むことができるよう、下記の事項について早急に取り組むことを強く求める。
記
1 不妊治療は一人一人に最適な形で実施することが重要であるため、不妊治療への保険適用の拡大に当たっては、治療を受ける人の選択肢を狭めることがないよう十分配慮すること。具体的には、現在、助成対象となっていない人工授精をはじめ、特定不妊治療助成事業の対象となっている体外受精や顕微授精、さらには男性に対する治療についても、その対象として検討すること。
2 不妊治療への保険適用の拡大が実施されるまでの間については、その整合性も考慮しながら、所得制限の撤廃や回数制限の緩和など既存の助成制度の拡充を行うことにより、幅広い世代を対象とした経済的負担の軽減を図ること。
3 不妊治療と仕事が両立できる環境を更に整備するとともに、不妊治療に関する相談やカウンセリングの体制の拡充を図ること。
4 不育症への保険適用及び助成や、事実婚のカップルの不妊治療への保険適用及び助成についても検討すること。
以上のとおり、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和2年12月21日
三重県議会議長 日沖 正信
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
内閣府特命担当大臣(少子化対策)