ニホンジカによる森林・林業被害とその対策方法
近年、三重県においてニホンジカ(以下、シカ)による農林業被害が増加しており、社会的な問題となっています。シカによる農林業被害や自然植生への影響を軽減するためには、①生息数の管理 ②生息地の管理 ③被害の管理を現地の状況に応じてバランスよく実施することが必要です。
林業研究所では、森林・林業被害の実態を把握するとともに、被害を軽減するための手法について調査研究を実施しています。
1.シカによる農林業被害の状況と推定生息数および捕獲数の推移
まず、シカによる被害金額や捕獲数の推移をみてみましょう。農林水産部獣害対策課のとりまとめによると、農林業被害金額は2011年までは増加傾向でしたが、2012年以降は減少しています。捕獲数は年々増加傾向にあり、2012年以降は1万7千頭を上回っています。
しかし、獣害対策課が統計学的手法を用いて生息数を推定したところ、生息数は高い水準で一定となっています。シカは都市部を除き、県内全域で生息が確認されており、現在は、捕獲により個体数の増加や分布の拡大を抑制している状況といえるでしょう。
注)目撃効率(SPUE)とは、出猟者1人あたり1日あたりのシカ目撃数を表し、数値が大きいほどシカ密度が高いことを示します。
2.林業研究所における獣害研究の取組について
林業研究所では、森林・林業被害の実態やその対策方法に関する調査研究に取り組んでいます。その内容について、わかりやすく説明します。
・スギ、ヒノキ林の樹皮剥ぎ被害は増えている? それとも減っている?(モニタリング調査)
・スギ、ヒノキ人工林ではシカはどのように動くの?(GPSテレメトリー調査)
・スギ、ヒノキの植栽苗木をシカの食害から守るために必要なことは?(新植地における効果的な柵設置方法)
・スギ、ヒノキの樹皮剥ぎ被害を減らす方法は?(樹皮剥ぎ被害を軽減する資材の検討)
・シカの採食が自然植生へ及ぼす影響は?(落葉広葉樹林における下層植生衰退度調査)