スギ、ヒノキの植栽苗木をシカの食害から守るために必要なことは?
シカ食害によりスギ、ヒノキ苗木の成長が阻害され、成林しない事例が増加しています。林業研究所では、三重県内で使用されているシカ侵入防止柵の構造を調査するとともに、苗木の食害状況を調査しました。
1.新植地における食害状況
三重県で広く使用されているシカ侵入防止柵は、①金網柵(亀甲タイプ、格子タイプ) ②ダイニーマ入りポリエチレンネット柵 ③ステンレス入りポリエチレンネット柵です。これらの柵を設置している新植地において、苗木の食害状況を調査しました。
シカに繰り返し食害されたヒノキ苗木は、写真のように葉がわずかに残るだけとなり、今後の成長回復が見込めません。
シカに侵入された新植地の本数食害率はほぼ100%でした。シカに侵入された原因は、柵の構造が不適切な事例や、管理不足によるものでした。
調査した3種類のうち、もっとも効果的な柵は金網柵でした。調査結果をもとに、効果的な柵の基本構造を示します。なお、これは最も望ましい構造であり、最低限の構造を示すものではありません。
金網フェンス: 高さ1.8m以上を確保、網目5cm程度、2段張りでも可
支柱: L型鋼材を2.5m間隔で設置
固定アンカー: 鋼材を0.5m間隔で設置
張りロープ、押さえロープ:鉄線
スカートネット:後付けタイプ、網目15cm以下のポリエチレンネット
これを基本構造とし、現地の状況に応じてアレンジしましょう。シカ密度が高くない場所では、金網ではなくポリエチレンネット(ダイニーマ入り、ステンレス入り)でも対応可能です。また、L型鋼材の変わりに間伐材を使用することで経費を下げることもできます。
注) 造林事業の補助金を申請する場合は、補助金の採択要件を満たす必要があります。必ず、事前にお近くの農林(水産)事務所森林・林業室にご相談ください。
2.シカの侵入を防止する様々な工夫
シカの侵入を防止する様々な工夫を紹介します。
①スカートネットの上に林地残材を置くことで、シカによる潜り込みを防ぐことができます。
②柵の高さが低い場合、上部に柵を継ぎ足すことでシカの飛び越えを防ぐことができます。
③柵の外側に転石や切株があり、飛び越えやすい場所には、飛び越え防止のためのネットを設置します。
④中仕切り柵を設置することで、シカ侵入による食害リスクを分散させることができます。
3.シカ侵入防止柵の設置方法
ここでは、シカ侵入防止柵の設置方法について紹介します。望ましい構造の柵を正しく設置することで、シカの侵入を防ぐことができます。
①斜面から平坦地へと地形が変化する場所での設置方法
②斜面における柵設置の是非の検討
③起伏のある地形における設置方法