スギ・ヒノキ人工林でシカはどのように動くの?
シカによる森林被害対策(防除、捕獲)を効率的に実施するためには、シカが①いつ、どこにいるのか ②どのような環境を好むのかを明らかにすることが必要です。そこで、林業研究所ではメスジカ2頭(推定齢4~5歳)にGPS受信機付き首輪を装着して、行動圏、土地利用について調査しました。
1.シカの行動圏と移動経路
スギ、ヒノキ人工林地帯における2頭のメスジカの3月~9月にかけての行動圏は、62.1haと128.5haでした。2頭のメスジカは大きな尾根を越えて移動することは少なく、集落周辺からその背後にある森林の尾根までの範囲を移動していました。
シカAについては、一定期間15分毎に位置を定位しました。そのため、詳細な土地利用パターンや移動経路を明らかにすることができました。
シカAは、5月、8月ともに昼間は森林内を、夜間は人工林伐採跡地周辺や道路周辺を利用していることが明らかとなりました。また、集落と森林の境界部分に設置した侵入防止柵(写真のピンク線)を越えて集落内に侵入していないことも判明しました。
それでは、次に一日のシカの動きをみてみましょう。
2013年5月11日のシカAの動きです。夜間(青色)は道路周辺に滞在していましたが、朝(黄色)になると森林内へと移動していきます。夕方(緑色)には伐採跡地周辺に出没し、夜間(青色)は森林内の作業道周辺に滞在しているのが分かります。
次に、2013年8月28日のシカAの動きをみてみましょう。夜間(青色)は森林内に滞在していましたが、朝(黄色)になると移動を開始し、昼間も森林内に滞在しています。夕方(緑色)には道路周辺に出没し、夜間(青色)も道路周辺で滞在しています。
このように、シカは夜間に道路周辺や伐採跡地など開けた場所に出没することから、囲い罠、箱罠、くくり罠で捕獲する場合はこのような場所に罠を設置するのが良いでしょう。
注) 写真地図は、三重県市町総合事務組合管理者の承認を得て、同組合所管の「2011三重県共有デジタル地図(写真地図データ)地上解像度20cm」を使用し調整したものです。