2-17 市街化調整区域内の建築制限(法第43条)
(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
法 |
第43条 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第29条第1項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。
一 |
都市計画事業の施行として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設 |
二 |
非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設 |
三 |
仮設建築物の新築 |
四 |
第29条第1項第九号に掲げる開発行為その他の政令で定める開発行為が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設 |
五 |
通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの |
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2 |
前項の規定による許可の基準は、第33条及び第34条に規定する開発許可の基準の例に準じて、政令で定める。 |
3 |
国又は都道府県等が行う第1項本文の建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設(同項各号に掲げるものを除く。)については、当該国の機関又は都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、同項の許可があったものとみなす。 |
(その開発行為が行われた土地の区域内における建築物の新築等が建築等の許可を要しないこととなる開発行為)
令 |
第34条 法第43条第1項第四号の政令で定める開発行為は、次に掲げるものとする。
一 |
法第29条第1項第四号から第九号までに掲げる開発行為 |
二 |
旧住宅地造成事業に関する法律(昭和39年法律第160号)第4条の認可を受けた住宅地造成事業の施行として行う開発行為 |
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(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可を要しない通常の管理行為、軽易な行為その他の行為)
令 |
第35条 法第43条第1項第五号の政令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一 |
既存の建築物の敷地内において行う車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築 |
二 |
建築物の改築又は用途の変更で当該改築又は用途の変更に係る床面積の合計が10m2以内であるもの |
三 |
主として当該建築物の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物で、その延べ面積が、50m2以内のもの(これらの業務の用に供する部分の延べ面積が全体の延べ面積の50%以上のものに限る。)の新築で、当該市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行うもの |
四 |
土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の新設 |
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(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可の基準)
令 |
第36条 都道府県知事(指定都市等の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この項において同じ。)は、次の各号のいずれにも該当すると認めるときでなければ、法第43条第1項の許可をしてはならない。
一 |
当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の敷地が次に定める基準(用途の変更の場合にあつては、ロを除く。)に適合していること。
イ |
排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、敷地内の下水を有効に排出するとともに、その排出によつて当該敷地及びその周辺の地域に出水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。
(1) |
当該地域における降水量 |
(2) |
当該敷地の規模、形状及び地盤の性質 |
(3) |
敷地の周辺の状況及び放流先の状況 |
(4) |
当該建築物又は第一種特定工作物の用途 |
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ロ |
地盤の沈下、崖崩れ、出水その他による災害を防止するため、当該土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられていること。 |
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二 |
地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内においては、当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の用途が当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合していること。 |
三 |
当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物が次のいずれかに該当すること。
イ |
法第34条第一号から第十号までに規定する建築物又は第一種特定工作物 |
ロ |
法第34条第十一号の条例で指定する土地の区域内において新築し、若しくは改築する建築物若しくは新設する第一種特定工作物で同号の条例で定める用途に該当しないもの又は当該区域内において用途を変更する建築物で変更後の用途が同号の条例で定める用途に該当しないもの |
ハ |
建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設として、都道府県の条例で区域、目的又は用途を限り定められたもの。この場合において、当該条例で定める区域には、原則として、第29条の9各号に掲げる区域を含まないものとする。 |
ニ |
法第34条第十三号に規定する者が同号に規定する土地において同号に規定する目的で建築し、又は建設する建築物又は第一種特定工作物(第30条に規定する期間内に建築し、又は建設するものに限る。) |
ホ |
当該建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は著しく不適当と認められる建築物又は第一種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの |
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2 |
第26条、第28条及び第29条の規定は、前項第1号に規定する基準の適用について準用する。 |
〔解説〕
建築物等の許可
市街化調整区域については、スプロール防止の趣旨から開発行為について厳格な制限を課することになっているが、開発行為をともなわない建築行為、例えば、市街化調整区域が決定される前に宅地造成された宅地に住宅をそのまま建築するものにも同様の制限を課し、秩序ある市街地の形成を図る目的の実現のため、完全な規制の効果をあげようとするものである。
開発行為を伴わない制限対象の建築物等は、建築許可を要することとなる。従って、制限対象外の建築物又は第一種特定工作物を建築又は建設する場合を除けば、市街化調整区域内において建築物又は第一種特定工作物を建築又は建設するときは、開発許可か建築許可を受けることとなる。
許可の基準
(1) |
技術基準
本条の市街化調整区域内における建築許可に際しては、既に宅地となっている土地(地目でなく事実上)における行為であるので、次の2つの基準(用途変更の場合にあっては、イを除く)に適合していることを要件とする。
ア |
排水施設が、降水量、敷地の規模、用途、放流先の状況などを勘案して、敷地内の下水を有効に排出するものであること。また、その排出によって周辺の地域に出水等の被害を及ぼさないこと。 |
イ |
地盤改良、擁壁の設置等安全上必要な措置か講ぜられていること。 |
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(2) |
許可の要件
技術基準のほか、次の要件に該当することが必要である。この要件は、法第34条に掲げる開発行為の許可の要件と同じである。
ア |
法第34条第1号から第12号までに規定する建築物又は第一種特定工作物 |
イ |
市街化調整区域に指定された際、自己の居住又は業務の用に供する目的で土地を所有し、又は土地の利用の権利を有していた者が、区域指定から6ヶ月以内にその旨届出、その目的に従って、5年以内にその土地に建築又は建設するもの |
ウ |
市街化を促進する恐れがなく、かつ、市街化区域で建築することが困難又は不適当と認められるもの。なお、この場合には開発審査会の議を経なければならない。 |
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関係通知
令第36条第1項第3号ハに基づく指定区域
令第36条第1項第3号ハに基づく指定区域令第36条第1項第3号ハに基づく指定区域は、平成18年6月30日に公布、施行した都市計画法の規定による開発行為の許可等の基準に関する条例第6条に基づき、市町長からの申し出のあった区域について県知事が指定する(令和6年1月4日現在、東員町に指定区域有り。)。→第3-1章参照
※なお、条例制定権は、県、指定都市、中核市、施行時特例市、事務処理市町村にあり、令和6年1月4日現在、県、四日市市及び鈴鹿市が制定している。
〔参考〕
既存宅地制度の廃止について
平成12年の都市計画法の改正までは「市街化調整区域に関する都市計画が決定され、または都市計画を変更してその区域が拡張された際すでに宅地であった土地であって、その旨の都道府県知事の確認を受けたもの」(以下「既存宅地」という。)における建築行為については許可不要とされていた。これは市街化区域に隣接・近接等する地域についてまで一律に市街化調整区域としての建築等の制限を行うことが実情に合わないとの考えによるものであった。しかしながら、同様の区域における開発行為とのバランスを著しく欠くばかりでなく、周辺の土地利用と不調和な建築物が建築物の連たんに応じて順次拡大していること、建築物の敷地の排水、安全性に関する基準など本来必要な基準が適用されていないこと、線引き以来時間の経過により既存宅地の確認が困難になっていること等の問題が顕著化していた。このため、市街化調整区域における建築・開発行為を計画的に整序すべきとの強い要望があったことを受けて、これまで特例として許可が不要とされてきたものと同様の要件を満たす区域をあらかじめ条例で定め、当該区域においては、建築物の用途が環境保全上支障がある場合を除き許可できることとし、規制の合理化を図ることとした。
これに伴い、施行日(平成13年5月18日)までに既存宅地である旨の確認を受けた土地については、施行日から5年間、施行日までに既存宅地の確認の申請をし、その後確認を受けた土地については確認を受けた日から5年間は、自己の居住又は業務を行うことを目的とする建築行為であれば、許可不要で建築できることとされた。(参考)廃止後の建替え等の扱いについて(→第5-1-29章参照)