「消防力の基準」に関する消防審議会の答申について
消防課
平成11年3月18日、消防審議会は、消防庁長官に対して「消防力の基準」について答申しました。同審議会では、平成10年10月19日に消防庁長官から諮問を受け、「消防力の基準に関する小委員会」を設置し、4回にわたって活発かつ慎重な審議を重ね、このたび開催された消防審議会において報告を行い、答申をとりまとめました。以下、答申の全文(資料を除く)を掲載します。
消防力の基準に関する答申
平成10年10月19日付け諮問のあった「消防力の基準」に関し、別紙のとおり答申する。
平成11年3月18日
消防審議会会長
上原陽一
消防庁長官
谷合靖夫殿
1 基本的な考え方
(1) 「消防力の基準」の見直しにあたって
消防は、住民の生命、身体、財産を災害から守るという最も基本的な行政責任を果たすものであり、必要な一定程度の水準は常に保持されていなければならない。市町村消防というわが国の消防体制において、国が、全国的に適用される共通の基準を示すことは、一定程度の水準の維持に加え、市町村消防の原則のもとに住民に対して直接責任を持つ市町村を支援するという点からも、必要なものであると考えられる。
ところで、この「必要な一定程度の水準」すなわち消防体制、消防活動のあるべき水準を考えるに際しては、消防の機械力や技術の水準、通常想定される被害の程度、住民のニーズ、所要のコストなど様々な視点がある。消防力の基準の見直しにあたって、本審議会では、広く国民に受け入れられるであろう水準を想定すること、そしてそのために必要な消防力を国民に分かりやすい形で示すことを念頭において検討した。
まず消火活動の水準についてみれば、今日の消防は消防力の基準が創設された昭和36年当時と比べて、施設、装備、人員とも格段に整備され、通常の火災に対応する消防活動はおおむね社会の期待に応える程度に至っていると思われる。すなわち、建物火災の大半を占める一般住宅火災については、出火した建物はある程度焼失することはやむを得ないとしながらも、相当程度密集度が高い地域であっても、隣接する建物への延焼を防ぎ、同時に、出火建物に取り残され助けを求める人々を救出するための活動が行われている。このような現在の活動の水準は、今後とも全国的に確保されるべきものであると考える。
また、救急活動の水準については、搬送件数は増大の一途をたどっており、平成9年には約350万件にのぼり、昭和50年と比較して2倍以上になっているところである。これは9,1秒に1回、国民の38人に1人が救急搬送されたことになる。現状の救急活動は、おおむね社会の要請に応えていると考えられ、今後も救急需要に対応した活動水準を維持するとともに、救急救命士の配置や高度な装備の整備など、質的側面の向上が重要である。
さらに、災害による被害を最小限に軽減していくためには、これら消防力の整備と相まって関連する施策が一層促進されることが不可欠といわなければならない。例えば、住宅火災における高齢者の焼死を防ぐためには、消火器や防炎品といった住宅用の防災機器等の普及促進など、予防面の施策が必要であるし、救急において救命率を高めるためには、住民への応急手当の普及が重要な鍵となる。このように、消防力の整備と並行する各般の施策の推進により住民生活の安全の確保に努めていく必要がある。なお、こうした災害によるリスクを軽減する上では、費用対効果の観点からコスト面についての考慮も必要とされよう。
(2) 現行「消防力の基準」の基本的な課題(資料1参照)
現行の「消防力の基準」は、制定当時、全国各地で大火が頻発していたという時代背景を受け、国として可及的速やかに市町村の消防力の増強を推進するために制定されたものである。
今日、市街地大火と呼べる大規模な火災は、先の阪神・淡路大震災のように大規模地震災害に伴い発生するような特殊な条件下で見られるだけになったが、これは、市町村が着実に消防力の充実強化に努めてきたことなどの結果であり、現在の市町村の消防力は、通常考えられる災害に対しておおむね最小限度必要な水準にまで整備されたものと考えられる。現行基準は、こうした過程において大きな成果を上げてきたといえる。
しかしながら、昭和36年の制定以来40年近くが経過し、昭和50年の改正からも20数年が経過した現在、現行基準に、消防を取りまく様々な環境の変化に十分対応しえなくなった点が目立つようになったことも事実である。現行基準が想定する市街地が、普通木造平屋建ての建物だけで構成されていると想定している点、消防団常備部の存在を想定している点、救急需要を低いレベルに想定している点など、時代の変化の中で既にその合理性を失ったと考えられる部分が多い。
このような現行基準に対し、市町村においては弾力条項の適用によって整合性を保っているのが実態であり、救急自動車について、現行基準に基づき算定される数を、弾力条項を使って2倍にまで引き上げていることは、よくこのことを表している。
したがって「消防力の基準」は、まず現在の消防を取りまく環境を十分に反映するとともに、地域における消防力の標準的なあるべき姿を、実態に即して出来るかぎり客観的合理的に示すことができるよう見直すべきである。現行基準における弾力条項の市町村における実際の適用についても、その理由が必ずしも明確なものとはなっていない場合が見受けられるが、基準を、現状に即した合理的なものに改めることにより、このような事態が改善されることが期待される。
さらに、現行基準に定められていない事項であっても、その一般的な必要性が認められるものにあっては、具体的な数値等の設定は市町村に委ねることとしながらも、できる限り基準上に位置付けていくことが望ましい。
また現行基準の運用にあたって、地域における実際の基準数値の設定は、弾力条項の適用により実質的に市町村が決定しているものであるが、基準本来の性格からして、それぞれの地域の具体的な基準数値は、「基準」をもとに地域の実情を加味して市町村が決定するものであるという方向で、現在の「基準」と「弾力条項」の関係を整理していくべきである。
(3) 市街地における消防力配置について(資料2参照)
現行の「消防力の基準」は普通木造建築物が市街地街区を構成すると想定しているが、近年の都市構造を見れば、専用住宅においても防火構造が一般的になるとともに耐火建築物が増加するなど、基準制定時の想定する市街地の姿とは相当に変化してきていることは明らかである。また、より早い出場体制と的確な部隊運用を可能にする情報システムを構築したり、より早い放水活動を可能にする消防戦術が広く取り入れられつつあり、こうした現状についても的確に評価していく必要がある。
さらに、火災に対する消防機関の行う消防活動についても、現行基準が想定するものとは大きく異なってきている。すなわち、現行基準は、出火建物を包囲し周辺建物への延焼を防止することが消防活動の全部であると想定しているが、近年の消防活動は、なによりも人命の救出という人的損失の防止を最優先とする一方で、火災を包囲するという戦術から、炎上建物への内部進入も含み、燃焼実体に直接注水するという積極的なものへと移行している。また、こうした活動にあたっては、多くの資機材が使用され、さらに、特に耐火建物の火災にあっては、消火水による損害を低減しようとする活動も行われている。このため、人命の検索救助活動、指揮統制活動、資機材搬送活動、水損防止活動、さらには火災原因調査に必要な情報収集活動等の、放水活動以外の活動の消防活動全体に占める割合がたいへん大きくなってきている。
こうしたことを背景に、消防活動の実態及び現在の市街地の状況に関する全国調査を実施し、これを基礎に消防力の基本となる消防署所の基準数及び消防ポンプ自動車の基準数について算定しなおしたところ、消防署所数については現行基準の水準が妥当であるという結論を得るとともに、消防ポンプ自動車数については、やや現行基準の水準が高過ぎる部分があると考えられる。
次に、消防職員数については、その基準数は保有消防車両数を基礎に算定されるものであり、現在、消防職員数は基準数の7割強に止まっている。職員数に関しては、十分な人員を確保することは、効果的な消防活動の実施に加え、隊員の安全確保という点からも極めて重要である。しかし一方で、限られた人員を有効に活用し効率的な消防行政の推進を図ることも大きな課題である。
ところで通常時における消防体制は、24時間体制を維持するという消防職員の勤務形態の特殊性から、勤務にあたる一部の職員をもって構築されているものであり、多くの消防本部で、大規模な延焼のおそれのある火災が発生したり台風等の自然災害時においては、非勤務職員の動員を行い消防力を一時的に増強して災害対応にあたっているという実態がある。このような非常時における一時的な消防力の増強に対応するための消防車両の保有が、実際には多く見うけられるところであるが、これらが基礎となる消防車両数に含まれてしまうと、人員の基準数を必要以上に引き上げる結果となる。消防車両について、こうした非常時に運用する車両と日常的に運用する車両との合理的な整理を行う必要がある。
また、消防ポンプ自動車と水槽付き消防ポンプ自動車の活用により効果的な消防活動を可能にする消防戦術の導入など、限られた人員を有効に活用できる方策を講じている場合の他、はしご自動車や化学消防車など特殊車両の災害形態に合わせた活用についても、実情を踏まえた適切な配慮を基準上も講じる必要があると考えられる。
(4) 救急自動車の配置について(資料3参照)
現行の「消防力の基準」は、市町村に配置する救急自動車の数を、人口15万以下の市町村にあってはおおむね人口5万ごとに1台、人口15万をこえる市町村にあっては3台に人口15万をこえる人口についておおむね人口7万ごとに1台を加算した台数としている。
消防機関の実施する救急業務は、昭和38年に法制化されて以来、年々その体制が整備され、現在では、3,150の市町村で救急業務を実施しており、ほぼ全国民をカバーするに至っている。
また、社会構造の変化等に伴い、救急業務に対する国民の期待は年々大きくなっており、救急出動件数は毎年増加している。昭和50年には約153万8千件であった救急出動件数は、平成9年には約347万7千件と2倍以上に増加しており、これらの救急需要について、5,197台(平成10年4月1日現在)の救急自動車で対応している状況である。
その一方、救急自動車に関する配置基準は、昭和50年に消防力の基準に初めて規定されて以来、現在に至るまで改正されていない。
このため、5千台を超える救急自動車台数のうち、現行の消防力の基準に定める人口に基づく基準台数は2,500台程度(平成8年調査による)と約半分であり、残りは地域の実情に応じて配置するという規定(いわゆる弾力条項)に基づき、各消防機関において人口基準を大幅に上回って配置している状況であり、消防力の基準と救急自動車の配置の実態との間に大きな乖離が生じている。
このように、救急業務を取り巻く状況が昭和50年当時から大きく変化していることを踏まえると、現行の消防力の基準における人口基準を大幅に改正し、救急自動車の配置基準台数を増加させる必要があると考えられる。
改正にあたっては、人口の少ない地域等においても住民が充実した救急サービスが得られるようにすることとし、さらに、消防本部の実情等を考慮して、現在の基準(人口15万以下は5万ごとに1台、人口15万超は7万ごとに1台)を変更することとすべきである。
また、現行の消防力の基準では、人口基準にかかわらず「地域の実情に応じ救急自動車を配置するものとする」とされており、救急自動車台数の増減を行う判断基準が何ら示されてはいないが、増減を行う際の基本的な判断基準については明示することが適当と考えられ、具体的な指標としては「救急出動件数」や「救急現場到着所要時間」等を規定することを検討するべきである。
なお、救急自動車の配置という基準上の問題のほかに、救命率の向上を図るために、応急手当の普及啓発活動の一層の推進や救急救命士制度の充実強化を図るとともに、救急出動件数の急激な増加に鑑み、引き続き救急自動車の適正利用を促すことなどが必要であると考えられる。
(5) 市街地以外の地域への対応について(資料4参照)
現在の基準は、市街地以外の地域については消防団の消防力をもって対応することとし、部分的に消防団常備部の設置も規定しているところである。しかしながら、消防団常備部が社会的な変化のなかで既に見られなくなったことに加え、地域住民の多様な行政需要に応えるため、多くの市町村で、市街地以外の地域にも消防署所を設置している。
また、救急需要の著しい増加は、高齢化の進展等が大きく影響しているものと考えられるが、その傾向が農山村漁村部で特に著しいことも、こうした地域への消防署所設置の背景にあると考えられる。
現行の「消防力の基準」は、市街地大火を防止するという観点から市街地への消防署所配置について定めているところであるが、救急業務を確実に実施していくことが消防行政の重要な任務であることは明らかであり、前述した社会経済構造の変化が今後も続くと考えられる今日、市街地以外への消防署所、あるいは救急分遣所等これに準じる施設の設置についても、基準上明確に位置付けていくことが必要であると考えられる。
しかしながら、市街地以外の消防需要については、地域によってその実情が様々であり、全国的に適用できる一定の水準を設定することが困難である。したがって、人員の配置数等を含めた具体的な事項については、市町村判断に委ねるべきであると考えられる。
(6) 予防業務の推進について(資料5参照)
消防力の基準上、予防要員については、昭和50年に、防火対象物の増加及び予防査察業務の重要性の増大等に対処し円滑な予防業務の執行を確保する必要性から増強が図られて以来、変更されていない。
この間、防火対象物数は著しく増加するとともに、その利用形態においても土地の高度利用を図るため、建築物は大規模化・複雑化するなど、消防職員の立入検査に係る業務執行量は年々増加する傾向にある。
また、防火対象物の増加は、これに設置される消防用設備等の増加につながるものであり、新たな技術の開発等に伴う高度化・複雑化と相まって、消防用設備等の設置時検査等に係る業務量の増加も顕著なものとなっていると考えられる。
さらに、火災発生の原因をつぶさに調査し、以後の施策に的確に反映することは、火災予防業務のいわば基礎となるものであるにもかかわらず、建築物や使用される電化製品等の多様化に伴い火災の態様が複雑多岐にわたり、火災原因の究明に困難を来すケースが増加する傾向にあることから、火災原因調査体制の整備を図っていく必要がある。
また、近年の建物火災による死者は、大半が住宅火災により生じており、その過半が高齢者であること、今後高齢化が一層進展することを考えれば、住宅火災を予防するための防火指導等が重要である。
危険物施設についても、昭和50年と比較すると、その数が増加するとともに、新しい形態のものが設置されるなど、危険物業務に従事する要員についても引き続き確保していくことが必要である。
このように予防業務に対する需要は増大しているところであるが、一方で、現下の社会経済情勢に鑑みれば、予防業務においても、例えば立入検査業務の効率的・重点的実施による検査頻度、所要日数等の見直し、実際の消火活動等への効果を考慮した警防職員の活用等その効率的な業務執行への工夫が必要不可欠である。
なお、予防業務に従事する要員については、基本的には人口と正比例関係にあると考えられるが、このうち危険物の業務に従事する要員については、同程度の人口を有する市町村においても設置されている危険物施設の数に数十倍以上の開きがある実態に鑑みれば、危険物施設の数に応じて算定することが適当であると考えられる。
また、同程度の人口、危険物施設数を有する市町村であっても、管轄面積、防火対象物数、消防同意件数、消防用設備等の設置届出件数、危険物施設の種類、規模、少量危険物施設の実態、石油コンビナート等特別防災区域の所在の有無等の条件はそれぞれ異なり、必要な人数についても、これらの条件に対応して決定すべきものと考えられることから、補正係数により一律の数値を定めるよりも、市町村の実情に応じた人数の増減を可能とすることが適当であると考えられる。
(7) 消防団の消防力について(資料6参照)
消防団の持つ消防力は、常備消防が充実した現在においてもなお極めて重要である。現行基準は、この基本的な点についての対応が必ずしも十分ではない部分があると考えられる。
まず市街地における火災防ぎょ活動においては、原則として常備消防が対応すべき範囲が設定できるところであるが、市街地人口規模が小さく、常備消防の整備水準が最少限度にとどまる地域にあっては、相当の活動を消防団が担うことになる。また、比較的常備消防の充実した市街地においても、消防団は延焼防止活動などにおいて一定の消防力を担っており、こうした実態についても基準上的確に反映させていく必要がある。
市街地における消防団の消防力は、以上のことを踏まえて、その水準を設定していくべきであると考えられるが、こうした考え方に立って消防団の消防力を算定し直すと、現行の基準にはやや不足している部分があると考えられる。
次に、署所が設置されない市街地以外の地域における消防団の消防力であるが、市街地とそれ以外の地域との区分は、火災の発生頻度等から、行政の経済効率性を考慮して一線を引いたものであり、市街地以外の地域における消防力の水準は、基本的には市街地と同じ考え方に立ちながら、ある程度人口規模に応じた段階的な算定を行う必要があると考えられる。こうした考え方に立って算定し直すと、一部を除いて概ね現行の基準は妥当であると考えられる。
なお、現行基準は人口規模が数百人の集落にまで必要な消防力を規定しているところであるが、これは制定当時の、道路交通状況が悪く集落間の移動に相当の時間を要する時代背景があったためと考えられる。今日では、山間部に至るまで道路整備が進み、いわゆる隔絶された集落は相当少なくなったと考えられる。このため、例えば主要道路上に集落が点在するような地域においては、近隣の市街地やこれに準じるような地域の消防力の活用を勘案する必要がある。一方、離島などでは、他地域の消防力がほとんど期待できない場合が多いと考えられ、このため、離島等における現状は、既に相当程度の消防力を保有しているところである。
これらのことから、人口規模が千人に満たないような地域の消防力については、一律に人口規模に応じた消防力を設定することはかえって実態と離れる可能性があり、実情に応じた市町村の判断に委ねることが適当であると考えられる。
また、消防団においては、林野火災、風水害等多数の動員が必要な災害に備えて、消防ポンプ自動車や小型動力ポンプ付積載車等を整備しているという実態がある。さらに、近年は大規模地震災害を想定して小型動力ポンプの整備に努める消防団も見られるところである。これらの車両や小型動力ポンプについて、市町村が実情に応じて適切にその整備を図るよう、常備消防に関して「非常災害用車両」の位置づけを行うのと同様に、基準上も明確にする必要がある。
あわせて、こうした非常災害時においては、消防車両等機械力以上に全体としての動員力が重要になる。市町村が消防団員の総数を決定するにあたっては、このことについても十分勘案していく必要がある。
なお、消防団に関連して、自主防災組織や自衛消防組織についてもふれておきたい。地震等の大規模災害時において同時多発する火災や人命救助に対しては、消防団を中心に自主防災組織、自衛消防組織等が互いに協力、連携して取り組むことが期待されている。このことは阪神・淡路大震災に際しても見受けられたところであり、その必要性は広く認識されつつある。消防力の基準は、消防機関に関して定められるものであるが、審議会としては、自主防災組織や自衛消防組織の育成強化、並びに消防団との連携が推進されることを期待したい。
2 消防力の基準の改正について
消防力の基準については、以下のとおり改正することが必要である。
(1) 基準の性格(現行基準第1条関係)
基準の持つ本来の性格から、現行の「最小限度の基準」という表現を改め、市町村が適正な規模の消防力を整備するにあたっての指針となる基準として位置付ける。
(2) 用語の定義(第2条関係)
「密集地」という表現について、一般的に誤解を生じやすいと考えられるため、これを「準市街地」という表現に改める。また、その定義を人口千以上1万未満に改める。
(3) 市街地に配置する署所及び消防ポンプ自動車等の基準数(第3条、第4条、第5条、第6条、第7条関係)
ア 別添資料2により、署所の管理する消防ポンプ自動車の基準数を改正する。
イ 基準数をもとに、市町村が地域の特性を加味して「市町村の基準数」を決定することとする(救急自動車等についても同じとする)。これに伴い、現行の弾力規定は廃止する。合わせて、人 口30万を超える市街地の算定方法(第5条)及び大都市の特例(第6条)についても、所要の 改正を行う。
ウ 別添資料6により、市街地に設置する消防団の管理する動力消防ポンプの基準数を改正する。
(4) 準市街地等への署所設置(第8条関係、第21条)
署所を配置した市街地から著しく離隔した地域等における消防需要に応えるため、他に有効な対応がとり得ない場合にあっては、当該地域に分署、出張所又はこれに準じる施設(救急業務だけを行うための施設を含む)を設置することができることとする。また、こうした署所の消防業務の推進に必要となる人員数等は、実情に応じ市町村が定めることとする。
(5) 非常災害用車両(第11条、第12条の7関係)
現行基準の予備車について、「か働中の車両が故障したときに使用する」という概念に、自然災害時等において、災害対応のため参集した非勤務職員が運用する車両としての位置づけを付加し、これを非常災害用車両とし、地域防災計画等との整合性を図りながら市町村が判断した必要数を整備することとする。
(6) 準市街地等における消防団の消防力
別添資料6により、準市街地における消防団の管理する動力消防ポンプの基準数を改める。なお、(4)により署所が設置された場合、署所の管理する動力消防ポンプの数はこれに含まれるものとする。
また、人口千未満の地域及び人家が点在するようなその他の地域における基準数については、近隣地域に展開する消防力の状況等を考慮した市町村の判断に委ねることとする。
(7) はしご消防車の設置基準(第12条関係)(資料7参照)
建築構造や消防用設備等により、一定以上の避難性や消防隊の活動性が確保される結果、はしご消防車の使用を想定してない建築物が増加してきていること、一般的な高層建築物についても、相当程度の避難性が確保されはしご消防車による救助活動にある程度の時間的余裕が得られること等から、はしご消防車の設置基準を消防署単位とするなど現状に即して改める。
(8) 化学消防車の設置基準(第12条の2、第12条の3関係)
危険物施設における火災の実態等から、給油取扱所の数を化学消防車の設置の算定基準から除くこととし、あわせて、小規模の危険物施設に対しては、化学消防車に替えて消防ポンプ自動車に泡を放射することができる装置を備えているものを設置することができることに改める。
(9) 救急自動車の設置基準(第12条の7関係)
救急需要の急激な増加に対応するため、救急自動車の設置基準を、人口15万以下の市町村にあってはおおむね人口3万ごとに1台とし、人口15万をこえる市町村にあっては5台に人口15万をこえる人口についておおむね人口6万ごとに1台を加えた数に改める。
(10) 予防要員の配置基準(第23条関係)
予防業務の確実な執行のため、危険物に関する業務を除く予防業務に従事する要員については人口10万人あたり12名を確保することとし、危険物に関する予防業務に従事する要員については、危険物施設150施設に1名を確保することに改める。
また、この基準数をもとに、市町村が、管轄面積、防火対象物数、消防同意件数、消防用設備等の設置届件数、危険物施設の種類、規模、少量危険物施設の実態、石油コンビナート等特別防災区域の所在の有無、予防業務への警防職員の活用等の業務執行体制等を勘案して「市町村の基準数」を定めることとするよう改める。
(11) 消防車両の運用に必要な人員(第16条、第21条関係)
消防ポンプ自動車を運用する隊員については、1隊5名を原則とするが、消防ポンプ自動車と水槽付消防ポンプ自動車との連携等により、別添資料2にある消防活動に必要な消防力を維持できる場合に限り、これを減じることができることに改める。
また、はしご消防車等特殊な用途に用いる車両については、必要な技術を有する消防ポンプ自動車を運用する隊員等が、災害の種別や状況に応じてこうした特殊車両に乗り換えて運用することができることとする。
(12) 消防本部の人員
消防本部の人員の総数は、消防車両(非常災害用車両を除く。)を運用するために必要な人員、指令通信に要する人員、災害現場活動における統括的な指揮にあたる要員、予防要員、その他庶務等に従事する要員を算定するものとするが、交代制勤務につく消防職員にあっては、その勤務体制の特殊性から、休暇取得や研修機会の付与に必要な人員を確保する必要がある。
なお、庶務等に従事する消防職員については、基準の性格上一定の水準を示すことは適当ではないので市町村が判断することとする。
(13) 消防団員数の基準(第20条、第24条関係)
消防団の実態を踏まえ、分団長等の基準数に、現行基準の考え方に基づいて副分団長及び班長を加えるものとする。
また、市町村が消防団員の総数を決定するにあたっては、現行基準の「火災の予防に従事する消防団員」等に加え、地震等自然災害が発生した場合において必要な消防力を確保するという観点を明確に位置付けるよう改める。
(14) その他
その他、「1基本的な考え方」に基づき所要の改正を行う。
3 結び
「消防力の基準」が以上の方向で改正されれば、実態に即したより合理的なものになると考えられ、「基準」をもとに地域の実情に応じた消防力の整備の推進に資することになろう。本審議会としては、市町村が今後とも適切に消防力の整備に努められることを期待したい。
なお、我が国においては、都市機能が高度に集積した大都市を中心に、災害の態様が大規模化、複雑化するおそれがある。このような災害への対応については、一定の災害態様を想定することが困難であるため、基準上は抽象的な表現にとどまらざるを得ないが、こうした地域においては、消防力の整備を図る上で配慮していく必要がある。
終わりに、本答申が有効に活用され、21世紀に向かって我が国の消防が住民の期待と信頼に応えていくことを期待するものである。