(財)三重県水産振興事業団の出納その他の事務の執行について
第1 外部監査の概要
第2 監査の結果
第3 監査結果に添えて出す意見
第1 外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第252条の37第1項及び第4項の規定に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件(テーマ)
(1)外部監査の対象
財団法人三重県水産振興事業団(以下、水産振興事業団という。)の出納その他事務の執行について
(2)監査対象期間
平成13年4月1日から平成14年3月31日まで
(但し、必要に応じて過年度に遡り、また平成14年度予算額も参考とする。)
3.特定の事件(テーマ)を選定した理由
三重県は、伊勢湾を中心に全国でも有数の漁場としての地位を確立しているもの、近年の海洋汚染に伴う漁場環境の悪化及び漁業従事者の減少により、漁業衰退が懸念される。このような状況下、三重県における水産業の維持発展に当団体の事業は重要な役割を担っている。そのため、三重県は当団体に毎年出捐を行い、平成13年度末現在の出捐額合計は1,540百万円と多額となっている。
以上の状況を鑑み、財団法人三重県水産振興事業団の財務に関する事務が関係諸法規に準拠し、合規に執行され、かつ、運営事務が合目的かつ効率的に遂行されているかについて検討することは有用であると判断し、当該事件を選定した。
4.実施した主な監査手続
監査対象とした水産振興事業団に対して、出納その他の事務の執行状況について、全般的把握のためヒアリングを実施した。また、事業報告書を閲覧し、「公益法人会計基準」等関連諸法令に準拠して作成されているかを吟味した。さらに、財務内容の分析、各種帳簿書類との照合及び統計資料を閲覧し、重要な取引について契約書等証憑書類との照合及び関連諸規程の準拠性について吟味した。
ただし、具体的な監査の実施にあたっては、外部監査の効率性の観点から対象書類や調査方法を限定する試査によっている。
5.外部監査の実施期間
平成14年8月5日から平成15年1月31日まで
第2 監査の結果
監査の結果に記載した事項の内、主要なものの要旨は以下の通りである。
項目 | 監査要点 | ページ | 監査結果等の要約 |
---|---|---|---|
ア | 三重県からの出捐金が、効率的かつ安全に運用され、現在もその価値が保全されているか。 | 3-10 ~3-15 |
平成13年度末現在、基本財産等の総額の83%にも上る資金(4,567百万円)を三重県信用漁業共同組合連合会の定期預金に集中させていたことは、ペイオフに対するリスク管理が不充分であったと言える。但し、平成14年度には「基本財産等運用方針」に基づき運用資産の分散化が図られている。今後、ペイオフ対策計画表に従い、適切な資産運用を進めていくことが望まれる。【意見】 |
イ | 各諸団体からの負担金収入について、有効な収納管理がなされているか。 | 3-17 ~3-18 |
1. 負担額と実際入金額との間に差額が発生している原因は負担先各市町村の予算処置に応じての徴収によるものであるが、放流事業の公共性といった観点からは公正性の確保及び収支の改善といった意識をもつべきである。【指摘】 2. 負担金の収納について納期限を定めていない。短期借入金によって運転資金を賄っている現状からは、納期限を定めかつ収納管理を実施することで資金計画、経営計画の策定に役立てることが必要である。【指摘】 |
ウ | 三重県からの補助金は、有効かつ効率的に使用されているか。 | 3-21 ~3-23 |
1. 補助金変更申請書には、現在、変更事由を明確に記載する箇所がないが、変更の合理性を検証できるような書式に改め、所管部署においても検討の結果を残すことが必要である。【意見】 2. 消耗品の予算超過に対し、需用費内の他の科目予算からの流用がなされていた。当該予算の流用に関し、実質的な責任者である専務理事の承認はあるものの理事長の承認が見当たらなかった。規定上からも理事長承認は必要であり、現行実務を改めるべきである。【指摘】 上記予算の流用が補助金交付対象団体の決済のみで行われる場合は不要な予算流用がおこる可能性もある。事前に所管部署でのチェックが必要である。【指摘】 |
3-23 ~3-24 |
3.現行の補助事業等実績報告書は、積算資料等との対比ができず、所管部署の事後調査に役立っていない。実績報告書としての有用性をたかめるためにも記載様式を改善すべきである。【指摘】 4.所管部署の事後調査に補助金の有効性といった観点からの検討を取り入れるべきである。また、調査結果の次年度への活用も考えるべきである。【指摘】 |
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エ | 寄付行為の目的を達成する為、経済的かつ効率的な事業運営が行われているか。 | 3-25 ~3-27 |
1.栽培漁業センターの納品書に納品月日が、また検収月日欄に検収月日が記載されていないものがある。上記月日は購入時点確定のためにも必ず記入すべきである。【指摘】 2.平成9年度から13年度の業務委託費につき、一部の業者への支払額が突出していた。業務の専門性から特定の業者との随意契約が結ばれたことによるものだが、金額の妥当性についての検証システムを構築し、コストの削減といった観点からの価格交渉も必要である。【意見】 3.餌料購入に際し、業者選定の理由を示す資料が整理されていない。選定理由を明確にするためにも、合い見積もり等業者選定の合理性を示す資料を保管しておくべきである。【意見】 4.種苗の成長に合わせ、餌料を購入することから、現在はその都度ごとに購入決裁を受けているが、手続きの簡素化、購入単価の値下げ交渉といった点からも購入頻度を少なくする工夫も必要である。【意見】 5.三重県が推進する栽培漁業のブランドを高めるためにも、餌料の安全性、品質の開示が必要である。【意見】 |
3-27 | 6.水産事業団の事業所は浜島町及び尾鷲市にあり、書類の受け渡し等のための移動に時間等を費やしている。例えば、社内メール等の整備を考えてもよいのではないか。【意見】 7.就業規則に育児休業規程、介護休暇規程等が欠落している。これらの規程整備が必要である。【指摘】 |
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オ | 資産の管理は適切になされているか。 | 3-28 ~3-31 |
1. 現金保有の機会は殆どないが、皆無ではないことか ら、現金出納帳に代わる管理簿の作成は必要である。 【意見】 2.受取手形は期日入金時に会計処理をしている。これは、事業団の会計処理規程に定める「金銭に準じて扱う」との条項に反しており改善が必要である。また、事業の拡大に伴い、信用供与が多くなることが考えられる。与信管理の手法も採用することを考えておく必要がある。【指摘】 |
3-32 | 三重県からの無償借用資産に対し損害保険が未加入の状態である。火災等のリスクに備えるために、保険加入が不可欠である。【指摘】 | ||
3-33 ~3-38 |
1. 県有財産賃貸借契約書には、修繕費負担の特約条項が謳われていない。このことから、三重県が負担した修繕工事の一部に本来は水産振興事業団が負担すべきものがあった。従来からの実務慣行にとらわれることなく、適正な処理を採るようにしていくことが重要である。【指摘】 2. 有形固定資産の計上基準が会計単位ごとで異なっている。会計処理規程に従い、統一した処理が必要である。また、経費処理した資産につき、両センターではラベルを添付し現物管理をしているが、本部ではそれがなされていない。本部での管理体制を改善すべきである。【指摘】 3.漁業振興基金で279千円の、また栽培漁業振興基金で1,052千円の有形固定資産の除却処理につき、会計処理規程による承認手続きがなされていなかった。【指摘】 |
第3 監査結果に添えて出す意見
監査の結果に添えて出す意見に記載した事項の内、主要なものの要旨は以下の通りである。
項目 | 監査要点 | ページ | 監査意見の要約 |
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1 | 水産振興事業団におけるたな卸資産の認識並びに財務諸表への開示 | 3-39 ~3-42 |
各センターでの魚介類の種苗生産事業や中間育成事業で翌年度へ繰越すことなる未消費の原材料等については、たな卸資産として認識、測定、評価する必要がある。 例えば、平成13年度末現在でたな卸資産として残っていたであろうアワビについて金額評価すると、約23百万円~48百万円と計算される。 評価方法、たな卸数量の把握、財務諸表への表示等、検討すべき点も多いが、事業収入と事業費用の合理的対応、一層の原価意識高揚のためにもたな卸資産の認識が必要である。 |
2 | 栽培漁業に関しての受益者負担 | 3-42 ~3-44 |
減少する予算規模の中で、水産振興事業団の目指す「つくり育てる漁業」への期待は増大している。栽培漁業の直接の受益者より応分の負担を求める方法が水産庁の中間とりまとめの中で謳われている。 水産振興事業団の中期経営計画の中にも適正な受益者負担のあり方が示されており、具体的な各種施策の施行段階に入ってきている。計画を実行可能とするための事前準備とそれに向けての体制の整備及び効果を測定するため、計数把握の仕組みを早期に確立することが必要である。 |