補助金等に関する事務執行状況について
第2 外部監査の結果
第1 外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第252条の37第1項及び第2項に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件(テーマ)
(1)外部監査の対象
補助金等(補助金、負担金、交付金、助成金)に関する事務執行状況について
(2)外部監査対象期間
平成13年4月1日から平成14年3月31日まで
(但し、必要に応じて過年度に遡り、また平成14年度予算額も参考とする。)
3.特定の事件(テーマ)を選定した理由
今日、地方自治体は財政危機に直面しており、歳出について適正かつ効率的な執行が期待されているところである。
地方自治法第232条の2によると「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄付又は補助することができる。」とされており、三重県も補助事業を実施している。補助金等は公益性がある場合において認められるものであり、近年、この補助金等は、種類や形態が広範囲に及び交付額は非常に多額となってきていることから補助金等の適正な執行に関心が高くなっている。そこで、補助金等(補助金、負担金、交付金、助成金)の交付事務についての手続、補助基準及び補助効果について監査を実施し、今後の事務の適正な執行に資することとしたものである。
4.実施した主な監査手続
1 今回の監査では、県独自の管理可能コストという観点から、多数ある補助金等のうち、県単独事業への支出となるもので、かつ交付額10,000千円以上の金額的重要性の高い補助事業を抽出した。
2 この抽出された補助金等について、県への提出資料を査閲し、チェックリストを使用して検討した。
3 2の結果をうけ、特に問題とされるものを個別に選定し、それについて再度、県への提出資料を精査するとともに、担当者にヒアリングを実施した。また、必要に応じ過年度の資料も査閲した。
5.外部監査の実施期間
平成14年9月10日から平成15年1月31日まで
第2 外部監査の結果
1.補助事業項目別問題事項チェックの実施結果
今回監査の対象とした県単独事業でかつ交付額10,000千円以上の76の補助事業につき、補助金等の交付事務において特に問題点としてあげられるものをチェック項目として検証した結果、以下の事項が発見された。
1 補助金等関係資料が未整備な補助金等
補助金等関連資料を依頼したところ、提出された実績報告書に不備があり、県が交付先に再度の提出を求めたが提出がなされていないものがあった。実績報告書は補助金等の成果を示す重要書類であり問題である。
2 補助金等交付申請書・実績報告書の提出が期限を越えて提出された補助金等
補助金等交付申請書及び実績報告書を査閲したところ、個別の補助金等交付要綱に定める提出期限(例:事業終了後○日以内)を超えるものが散見された。交付要綱に定める期限は業務上適当とされる期限で定められているものであり遵守する必要がある。
3 実績報告書の内容が不明確な補助金等
補助事業等実績報告書を査閲したところ、「○○事業 ××円」といったように大項目の金額の記載にとどまり、実際に何に使用されたのか詳細な支出内容がわからないものが散見された。県は有効な審査が実施できるよう補助事業者に詳細な記載を義務付ける必要がある。
4 補助金等交付額より繰越金・剰余金が多い補助金等
補助事業者からの補助事業等実績報告書に添付される決算書を査閲したところ、補助金等交付額よりも次年度繰越金が多いものが散見された。補助金等はあくまでも、公益性のある事業について、その遂行のために必要最低限の費用を補助すべきであり、補助金等交付額の見直しが必要である。
5 定額・長期の補助金等
毎期定額交付されている補助事業が散見され、その多くは長期にわたってなされている。いわば既得権益化しているため、実情を踏まえた上で必要額を交付すべきである。
2.個別項目検討結果
上記1.の項目別問題事項チェックを実施した結果、何らかのチェック項目に該当した補助事業37事業について再度詳細に調査を実施した。
先に記載した指摘事項の他に以下の事項が発見された。
6 支出の効果が乏しい補助金等
7 補助対象事業者の経営の建て直しが必要な補助金等
8 次年度経費の支出がなされていた補助金等
9 実質的に2重の補助になっている補助金等
調査の結果、37事業のうち、13事業については指摘事項または意見を述べる必要があると判断された。その要約は次のとおりである。
事務事業名 | 補助金額 (千円) |
担当部局課名 | 問題点 | 監査の過程で気が ついた事項の要約 |
|
---|---|---|---|---|---|
1 | 関係団体補助金(企画調整費) | 20,320 | 生活部人権担当(現 人権・同和チーム) | 4 | a.経費に対する補助金であるが、三重県人権問題研究所は支出額に公益法人化のための「積立金繰入」が含まれており、経費補助の必要性に関して疑念がある。公益法人化が必要であれば、経費補助とは別のものとして予算化し、目的を明確にすべきである。【意見】 |
2 | 私立学校研修等事業費補助金 | 20,600 | 生活部私学振興担当(現 私学振興チーム) | 4 5 |
a.三重県私立幼稚園協会の交付申請が平成14年3月26日とほとんど年度末になっており、その時点で計画書が提出されている。補助金確保を狙った駆け込み申請と捉えられかねない。支出面でも補助金交付額(1,000千円)を上回る積立金の繰入(8,600千円)があり、県費による補助がなくとも十分運営は可能と判断される。【意見】 b.三重県専修学校協会、三重県各種学校総連合会の研修費については法人負担がほとんどなく、すべて県費で補助する必要があるのかと思われる。【意見】 |
3 | 団体指導助成費 | 42,000 | 生活部同和担当(現 人権・同和チーム) | 5 1 |
a.各同和団体への助成費については定額でよしとするのではなく、関係団体補助金と統合し、各団体が自主的積極的に行う人権問題解決のため事業への補助に切り替える必要がある。【意見】 b.全国自由同和会三重県連合会の実績報告書に不備があり、県として監査及び経理指導が必要である。【指摘】 |
4 | 福祉医療事業協力交付金 | 66,389 | 健康福祉部医療政策課(現 生活保障チーム) | 3 6 |
a.実績報告書に詳細な記載がなされていないため、支出内容の十分な審査がなされない。実績報告書の詳細な記載が求められる。【指摘】 b.交付対象事業があいまいなため、交付先によって使途が異なる。交付要綱等で使途を限定すべきである。【意見】 c.歯科医師会に会議費用として715千円交付している。通常の活動において会議費用は発生するものであり、改めて補助金を交付すべきではない。【意見】 d.歯科医師会は会員一人あたり10千円、薬剤師会は会員一人あたり600円を補助金の中から再分配している。このような少額支給により補助の効果があるのか疑問である。【意見】 |
5 | 国民健康保険診療報酬審査支払補助金 | 36,000 | 健康福祉部医療政策課(現 生活保障チーム) | 6 4 |
a.収入に占める補助金の割合(2.7%)が低く、補助金の交付による効果が限定的であるため、補助金の見直しが必要である。【意見】 b.補助金(36百万円)を超える余剰金(単年度91百万円)が発生している。補助金の必要性について検討を要する。【意見】 |
6 | 福祉活動指導員設置費補助金 | 60,219 | 健康福祉部健康福祉政策課(現 地域福祉チーム) | 4 | a.現在、大部分の人件費を県からの補助金で賄っているが、県社会福祉協議会の独立性・財政状況を勘案し、補助割合の引き下げ等の見直しを図り、県社会福祉協議会の財政的独立性を高める必要がある。【意見】 |
7 | 民生委員児童委員組織活動費補助金 | 30,076 | 健康福祉部健康福祉政策課(現 地域福祉チーム) | 3 | a.実績報告書の中には事業費の各項目の下4桁がいずれも「0」となっており、正確に記載されているとは考えられないものがあった。交付先に記載方法の指導を行うとともに、実地調査も実施すべきである。【指摘】 |
8 | MIE・みんなで創る環境フェア事業費負担金 | 37,343 | 環境部環境政策課(現 環境創造チーム) | 8 | a.当年度の支出の中に次年度開催分の企画広報費が含まれており、次年度開催のための費用が前もって計上された形となっている。当該負担金は平成13年度開催分の負担金であり、次年度費用分は一度返還した上で、あらためて平成14年度に費用計上されるべきであった。【指摘】 |
9 | 離島航路整備事業補助金 | 50,825 | 地域振興部市町村課(現 市町村行政チーム) | 7 | a.島の人口の減少による利用者の減少と、人件費の高騰により航路事業の経営が厳しいため年々補助金交付額は増加傾向にある。ダイヤ改定や人件費の削減により経営の建て直しが急務である。【意見】 |
10 | 職員互助会助成金 | 152,848 | 総務局職員課(現 職員支援チーム) | 9 | a.地方職員共済組合が経営する温泉旅館「神湯館」を互助会員が利用する際に、互助会から一泊につき4,000円の助成がなされており、一泊二食付で4,000円程度で利用できる。更に、地方職員共済組合には別途県から負担金が支給されており、職員互助会を通じた利用助成金と間接的に二重の補助になっているため、4,000円の助成制度の見直しが必要である。また「神湯館」の利用促進は地方職員共済組合で実施すべきである。【意見】 |
11 | 稚あゆ放流事業費補助金 | 19,500 | 農林水産商工部漁政課(現 水産物供給チーム) | 5 6 |
a.琵琶湖産の稚アユは再生産による効果がほとんどないことがわかってきており、補助金の効果の面で問題がある。河川環境の保全、稚アユ放流の効果の面から見直しをかけるべきである。【意見】 |
12 | 食肉処理施設経営改善対策事業費補助金 | 50,000 | 農林水産商工部農芸畜産振興課(現地産地消流通 対策チーム) | 7 | a. (株)松阪食肉公社、(株)四日市畜産公社とも赤字経営が続いており、一刻も早く施設の一元化、適正規模への再編を行い、稼働率を上げる必要がある。【意見】 b.食肉処理施設の再編に合わせて、と畜料金、奨励金、補助金のあり方を再検討する必要がある。【意見】 |
13 | 市場機能強化対策事業費補助金 | 50,156 |
第3 まとめ
以上、補助金等の事務執行状況を実施した結果を総括すると次のようにまとめることができる。
(1)補助金等はその性格上、ともすると長期的な補助となり、結果としてそれが既得権益となって、効率性が失われることになってしまう。今回の監査においても長期間定額で支出されており、既得権益となっているのではないかと思われる補助金等が多く発見されている。三重県が先進的に推進している政策評価システムでの評価結果等を有効に活用し、補助金等の適正化への行動につなげていくことが望まれる。
(2)全ての補助金等に対して、原則として、サンセット方式(各事業の終期を設定し、終期の到来時に事業の評価を実施し、廃止か継続を判断する仕組み)を確立し、補助金等の適正化を図るべきである。
(3)財政的に厳しい現状において、真に必要な補助が行われているかどうかをさまざまな面からチェックする体制を構築することが必要である。特に補助金交付額を大幅に上回る繰越金・剰余金を有する事業者に対する補助金は、その交付が本当に必要か再度検討することが望まれる。
(4)監査及びチェックの結果が補助金等の廃止、削減、統合等の次の行動に結びつくよう、あらゆる機会に出てきた補助金等の問題について横断的かつ迅速に対応できるような体制を構築してもらいたい。