大量調理施設の衛生管理(詳細)
1 大量調理施設衛生管理マニュアル、学校給食衛生管理の基準
大量調理施設や学校給食では、ひとたび食中毒などが起きると多人数に健康被害を及ぼすなど、規模の大きな事故に結びつくのが一般的です。とくにO157が多数発生した平成9年を機に大量調理施設での衛生管理がいっそう求められるようになりました。大量調理施設での衛生管理の一つの指針として、厚生労働省から示されているのが「大量調理施設衛生管理マニュアル」で、また、学校給食に関しては文部科学省から「学校給食衛生管理の基準」が示されています。
- 大量調理施設衛生管理マニュアル (厚生労働省ホームページへリンク)
- 学校給食衛生管理の基準 (文部科学省ホームページへリンク)
2 構造設備上のポイント
基本的には、1で述べたマニュアル及び基準に対応できる施設が理想となりますが、主なポイントを示すと次のようになります。
- 汚染作業区域と非汚染作業区域が明確に区分されていますか。
- 各区域に応じた手洗い設備がありますか。
- 人や物の動線で、相互汚染や二次汚染のおそれはありませんか。
- 移動の困難な機械、器具はその作業に応じた場所(区域)に設置されていますか。
- 熱源となるボイラーなどは調理室外に設置することが望まれます。
- ドライシステム又はドライ運用できる構造となっていますか。
- 調理室の温度・湿度を適切に管理する手段(空調設備など)はありますか。
- シンク数は必要量を確保できていますか(特に下処理用シンク)。
- 調理食数に応じた器具類を保管可能な保管庫は確保できていますか。
注1)日常の監視のなかでとくに指摘が多い事項をあげました。これがすべてではないのでご注意ください。
注2)新築、改修時には、図面案の段階で、最寄りの保健所にご相談いただくようお願いします。
3 衛生管理のポイント
食中毒の防止は、日々の衛生管理の積み重ねです。とくに構造上(ハード面)で制約を受けている場合は、ソフト面で補う努力が必要です。ポイントを以下に示しましたが、詳細等については、各マニュアル、基準を参考としてください。
- 汚染区域、非汚染区域の区別(意識)はなされていますか(シンク、作業台の使い分けや前掛け・履き物の区別を含む)。
- 調理室から下処理室への不用意な出入りはありませんか。
- ドライ運用を行っていますか(調理作業中に片づけの洗浄等を行っていませんか)。
- 調理器具の使い分けを適切に行っていますか(調理過程ごと:下処理用、調理用、加熱調理済食品用など、食品種類ごと:食肉類、魚介類、野菜類、果実類など)。
- 食材の冷蔵庫保管方法は蓋付き専用容器を用いるなど適切ですか。
- 中心温度計の校正及びその記録を残していますか。
- 紫外線殺菌灯の管理は適切に行っていますか。
- 調理終了から喫食までの時間が最短になるように計画的に調理していますか。
- 前日調理はしていませんか。
注1)日常の監視のなかでとくに指摘が多い事項をあげましたが、各施設の実情に応じた対応も必要です。これがすべてではないのでご注意ください。
4 細菌性食中毒予防の基礎知識
5 あなたの施設は大丈夫?
ふだんあたり前のように扱っている器具機械や、日常いつも触っている取っ手類は意外にも汚れているものです。あなたの施設もそうかもしれません。
6 正しい消毒
器具、手指などが食中毒菌に汚染されていては、食中毒の予防はできません。食中毒菌を死滅させ、細菌性食中毒の発生を未然に防止するため、先に述べた「食中毒予防の三原則」を守るとともに器具、手指などの消毒を徹底することが必要です。
消毒方法
対象 | 方法 | 備考 | |
---|---|---|---|
食器具 金属、合成樹脂、陶磁器、耐熱ガラスなどの食器具、合成樹脂製まな板 |
煮沸 | 煮沸消毒器または大型なべなどにより煮沸する。沸騰してから5分間以上100℃ 30秒間90℃以上 5分間以上 75℃以上 15分間以上 蒸気消毒器で100℃ 5分間 湿熱式食器消毒保管庫で80℃20分間以上 |
消毒終了後はふきんを使用しないで、余熱で乾燥させる。 |
加熱が不適当な食器具 漆器、普通ガラス製品、塩化ビニール製品 |
逆性石けん液 | 200~500倍希釈液 5分間以上浸漬し、水洗する。 | 消毒終了後は清潔なふきんを使用するか、自然乾燥させる。 |
次亜塩素酸ナトリウム | 50~100ppm溶液 3分間以上浸漬し水洗する。 | 消毒終了後は清潔なふきんを使用するか、自然乾燥させる。 | |
合成樹脂製まな板 | 次亜塩素酸ナトリウム | 50~100ppm溶液を表面に塗布し、3分間以上放置したのち、水洗し、乾燥する。 | 包丁キズの多くなったときは、表面を削って平滑にすることが必要である。 |
ふきん | 日光 | 洗浄後、直射日光で乾燥する。 | |
煮沸・日光 | 洗剤とともに煮沸し、水洗後直射日光で乾燥する。 | 汚れの多い場合 | |
次亜塩素酸ナトリウム | 洗浄後、50~100ppm溶液に5分間以上浸漬したのち、水洗し、直射日光で乾燥する。 | 汚れに応じて10~30分間浸漬すると漂白することもできる。 | |
作業衣、作業帽、前掛 | 日光 | 洗たくしたのち、直射日光で乾燥し、アイロンをかけて仕上げる。 | |
客用タオル(おしぼり) | 蒸気 | 洗浄後、蒸気消毒器で100℃ 10分間以上 | |
手指 | 逆性石けん液 | 石けんでよく汚れを落とし、よく水洗してから、市販の液を5~6滴たらし30秒以上もみ洗いしてから水洗し、清潔なペーパータオル等でふくか温風機で乾かす。 | 石けん分を十分洗い落としてから使用すること。 |
アルコール | 75~80%アルコールを脱脂綿に含ませたもので手指をふく。 | ||
包丁 | 紫外線 | 紫外線殺菌灯のついた保管箱に入れる。 | |
アルコール | 75~80%アルコールを脱脂綿に含ませふく。 75~80%アルコールをスプレーでふきつける。 |
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野菜 | 次亜塩素酸ナトリウム | 次亜塩素酸ナトリウムの200ppm溶液に5分間(100ppm溶液の場合は10分間)浸漬したのち、十分に水洗する。 |
なお、細菌は一般に乾燥に弱いので、消毒後に乾燥すれば、より一層効果が上がります。