構造設備上のポイント
1 汚染作業区域と非汚染作業区域が明確に区分されていますか。
構造設備を考える上で基本中の基本にあたる部分です。ここでミスをすると日常の衛生管理がしづらくなるとともに大きな事故に結びつく可能性があるので注意し、十分検討しましょう。学校給食衛生管理の基準では「汚染作業区域と非汚染作業区域の区別の基準」は、以下のように規定されています。
汚染作業区域と非汚染作業区域の区別の基準
作業区域 | |
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汚染作業区域 | 検収室・・・原材料の鮮度等の確認及び根菜類等の処理を行う場所 食品の保管室・・・食品の保管場所 下処理室・・・食品の選別、剥皮、洗浄等を行う場所 食品・食缶の搬出場 洗浄室(機械、器具類の洗浄・消毒前) |
非汚染作業区域 | 調理室 ・・・食品の切断等を行う場所 ・・・煮る、揚げる、焼く等の加熱調理を行う場所 ・・・加熱調理した食品の冷却等を行う場所 ・・・食品を食缶に配食する場所 洗浄室(機械、機具類の洗浄・消毒後) |
その他 | 更衣、休憩室、便所、事務室等 |
※大量調理施設衛生管理マニュアルでは「非汚染作業区域」をさらに「準清潔作業区域(調理場)」と「清潔作業区域(放冷・調理場、製品の保管場所)」に区別しています。
(2) 各区域に応じた手洗い設備がありますか。
汚染作業区域と非汚染作業区域を明確に区別するためにも、手洗いは各区域に対して設置されていなければなりません。調理室にしか手洗いがない場合は、汚染作業区域の下処理室で下処理を行った汚い手を非汚染区域の調理室で洗浄することになり、相互汚染・二次汚染を引き起こす可能性があります。
(3) 人や物の動線で、相互汚染や二次汚染のおそれはありませんか。
この点も構造設備を考えるうえで非常に重要な項目です。理想は、人、物の動線が一方通行で非汚染区域のものと汚染区域のものが交差しないことです。この点を考慮して、各作業場所の配置や設備器具の配置を決定します。とくに新規・改修時には実作業の流れを十分検討するようにしてください。
(4) 移動の困難な機械・器具はその作業に応じた場所(区域)に設置されていますか。
過去の事例では、下処理室に牛乳用冷蔵庫が設置されていたり、調理室内に芋洗い機が設置されていたことがあります。これら移動の困難な機械・器具は一度設置すると簡単には移動できないので新規・改修時には注意が必要です。また、既設で日常の衛生管理に支障がある場合は直ちに移動の検討が必要です。
(5) 熱源となるボイラーなどは調理室外に設置することが望まれます。
調理室内のボイラーなどの熱源については、調理室内温度上昇の一因となるので、可能であれば調理室外へ移すのが望まれます。このことに関連して、熱湯消毒のため常に釜にお湯を沸かしているというのも考えものです。熱湯消毒にかわる消毒方法があるのであれば、そちらの方法をとるようにし、室内温度上昇を抑えましょう。
(6) ドライシステム又はドライ運用できる構造となっていますか。
以前は、調理場というと水を大量に使って従事者は長靴で水の溜まった床を歩いていましたが、現在は、不用意に床面を水で濡らすことは、細菌増殖の助長する一因となり好ましいとは言えません。そこで、構造設備上システム的にドライ化を図ったり、運用面でドライ運用をすることが求められています。具体的には、調理作業中での洗浄を行わないことや、切り水を床に落とさないように水受けで受ける、長靴からコックシューズ、ゴム前掛けから布前掛けへの切り替えなどがあげられます。
(7) 調理室の温度・湿度を適切に管理する手段(空調設備など)はありますか。
ただでさえ火を使う調理場ですから、なにも対応しなければ夏場などでは30℃以上になることはかなりあると思います。そこで空調設備等の設置を図り積極的な温度・湿度管理が求められます。学校給食衛生管理の基準では湿度は80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましいとされています。
(8) シンク数は必要量を確保できていますか(特に下処理用シンク)。
用途別に相互汚染しないように設置することが必要です。学校給食衛生管理の基準では「特に加熱調理用食品、非加熱調理用食品、器具の洗浄等に用いるシンクは必ず別々に設置し、三槽式構造とすること。」とあります。
(9) 調理食数に応じた器具類を保管可能な保管庫は確保できていますか。
調理器具の不足は効率が悪いばかりでなく、器具の使い分けの徹底できないこととなり相互汚染、二次汚染の原因となります。また、十分な器具があってもその衛生的に保管できる場所がないと保管中に汚染を受ける可能性があります。オープンラックでの保管も好ましくありませんが、万一使用する場合は床面から60センチメ-トル以上の場所を使用することや、器具使用前の洗浄、消毒の徹底が必要です。