三重県農業研究所報告 第33号要旨 PDFファイル:1,898KB
三重県で栽培されるコムギ品種の赤かび病抵抗性
黒田克利・鈴木啓史 PDFファイル:35KB
三重県で栽培されるコムギ品種の「あやひかり」7),「タマイズミ」3),「ニシノカオリ」6),「農林61号」5) について,赤かび病の抵抗性程度を評価するため,2003~2005年の3カ年において,農業研究所内の圃場検定および温室内検定,さらに一般圃場の発病程度調査を実施した.その結果,これら4品種はいずれも品種特性の赤かび病抵抗性が同じ中程度とされているが,「あやひかり」,「タマイズミ」は,「ニシノカオリ」,「農林61号」に比べ抵抗性が弱く,コムギ粒のデオキシニバレノール(以下DONと略す)汚染の危険性が高い品種であることが明らかとなった.
キーワード:コムギ,品種,赤かび病,抵抗性
三重県東紀州地域におけるアテモヤの栽培適応性
第3報 アテモヤ品種‘ピンクス・マンモス’および‘ヒラリー・ホワイト’の開花時期ならびに
人工受粉の時間帯が結実に及ぼす影響
須崎徳高・市ノ木山浩道・鈴木賢 PDFファイル:539KB)
ハウス内で3月上旬にせん定,摘葉して生育を開始させたアテモヤの開花時期は,‘ピンクス・マンモス’および‘ヒラリー・ホワイト’ともに5月下旬~7月上旬となった.1日のうちで開花のピークとなる時間帯は,‘ピンクス・マンモス’では16時以降に,‘ヒラリー・ホワイト’では開花した時期によりばらつきはあるが15時以降であった.開葯する時刻は両品種とも大きな差はなく,開花から約1日後の15時頃から始まり19時にはほぼ完了した.最も開花が多くなる夕方(18~21時),開花翌日の朝(9~11時),開花翌日の昼間(13~15時)の3つの時間帯に人工受粉を行い結実率を比較したところ,いずれの開花時期においても夕方受粉で結実率が高くなることが明らかとなった.
キーワード:アテモヤ,‘ピンクス・マンモス’,‘ヒラリー・ホワイト’,開花時間,受粉時刻,結実率
無加温促成栽培イチゴにおけるバンカー法を用いた天敵寄生蜂コレマンアブラバチ利用技術の検証
西野 実,北上 達 PDFファイル:90KB
無加温の促成栽培イチゴにおいて,バンカー法を用いたコレマンアブラバチ放飼によるワタアブラムシ防除効果を検証するとともに,コレマンアブラバチへの高次寄生の回避方法についても検討した.コレマンアブラバチ放飼の効果が発揮される温度範囲よりも低い温度条件で試験を実施したが,バンカー上でコレマンアブラバチは維持,増殖でき,ワタアブラムシに対し高い防除効果が認められた.その効果は,コレマンアブラバチを7日間隔3回放飼した時の防除効果と同等であり,バンカー法を用いることにより,放飼回数を減らし,コスト低減が可能と考えられた.また,コレマンアブラバチへの高次寄生の回避方法として,バンカーを設置する高さや,設置する時期を検討したが,いずれの方法でも,高次寄生を回避することはできなかった.
キーワード:バンカー法;コレマンアブラバチ;ワタアブラムシ
石油代替エネルギー・燃料電池のイチゴ栽培への利用技術の開発
薮田信次・田中一久・小西信幸・人見周二・石丸文也 PDFファイル:854KB)
メタノール型燃料電池を用いて,装置から得られる電気,熱,炭酸ガスのイチゴ栽培への利用による生産システムの開発と経済性を含めた実用性の総合的評価を行った.
燃料電池からでる温風の風量が少ないことから,送風配管方法(親ダクト)を二重配管とすることで加温を効率的に行えることを明らかにした.また,温風には水分を多く含むことから親ダクトに水抜き装置を設置することで円滑な送風が可能となった.ハウス内の炭酸ガス濃度は,1800ppm程度となり,施用効果があるとされる濃度に達した.株元局所加温によってマルチ内の夜間温度は,2℃以上上昇させられることを明らかにした.また,これによりイチゴの収量は無加温に比べて高くなる傾向を示した.
電気の利用について,3時間連続電照及び1時間に15分照明を7時間行う間欠電照を行っても安定的に燃料電池が稼働することを確認した.イチゴ栽培における燃料電池稼働にかかる経費は,1ヶ月42,120円で温風暖房機の経費の約50%となることを明らかにした.本研究で使用した直接メタノール型燃料電池は,石油代替エネルギーとして期待されるものであるが,現時点では量産されていないことから,装置の価格が高いという問題がある.しかし,近い将来,この燃料電池が普及し,量産効果によって価格が下がれば,農業分野への利用も大いに期待できると考えられた.
キーワード: 燃料電池,イチゴ栽培,局所加温,電気利用,炭酸ガス利用
加温ハウス栽培ニホンナシ‘幸水’の省エネルギー管理技術
西川 豊・大野秀一・田口裕美・三井友宏・前川哲男 PDFファイル:205KB)
加温ハウス栽培‘幸水’の促成と燃料消費量の抑制を両立する管理法について検討した.加温開始を発育指数(DVI) 1.6以降にすると,加温開始から満開までの期間が短縮され,かつ開花率が高くなった.また,加温中は最低気温を15℃で一定に管理するより,満開時から満開40日後までの期間を15℃,それ以外の期間を10℃にする変温管理が燃料消費量を少なくし,成熟期を遅らさず有効であった.休眠打破のためのシアナミド液剤の処理は,DVI 1.0時点の散布で開花期と収穫期を2~3日程度早める効果が認められ,露地およびハウス栽培ともに早熟化技術として利用できることが確認された.
キーワード:DVI,休眠,燃料,温度管理,シアナミド,収穫期
伊勢平坦地域における全量基肥肥料の窒素溶出パターンがコシヒカリの品質に及ぼす影響
出岡裕哉・田中千晴・中山幸則 PDFファイル:58KB
近年,白未熟粒の多発による県産コシヒカリの1等米比率の低下が問題となっている.本稿では,県内で広く利用されている全量基肥肥料の窒素溶出パターンの改善により県産コシヒカリの品質向上を図るため,異なる窒素溶出パターンを示す被覆尿素肥料を配合して,水稲の生育・収量及び玄米品質への影響を検討した.その結果,精玄米重への被覆尿素溶出時期の影響は小さかった.玄米品質への影響については,出穂前18日から成熟期に肥料から供給される窒素量を,出穂前18日までに肥料から供給される窒素量で除して算出した施肥窒素供給量比が高まるほど,整粒歩合は高まり,基部未熟粒率は低下した.
キーワード: コシヒカリ,全量基肥,玄米品質,被覆尿素,整粒歩