養鶏
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1.はじめに
ブロイラー(肉用鶏)経営においては、特に梅雨明けを中心とした暑熱時に熱射病が多発し、斃死(熱射病)や増体・飼料要求率などの生産性の低下による経済的損失が大きくなっています。採卵鶏においては、暑熱時の産卵性の低下(産卵数や卵重の減少等)や卵殻質低下による破卵数の増加による経済的な損失が主なものとなっていますが、適切な暑さ対策を怠ると20%以上もの成鶏が熱射病で死亡してしまうこともあります。
また、上記のような直接的な経済的損失のほか、暑熱ストレスによる免疫機能低下やサルモネラの排菌増加などの衛生的な問題も指摘され、暑熱対策は、非常に重要となっています。
鶏の体温は、41から42℃で、高温時には血流量の増加により体温の上昇を引き起こすため、体内から余分な熱を放出しようとします。鶏には汗腺がないため、呼吸によって熱を放出する熱性多呼吸になります(パンティング)。このため、呼吸数の増加により過剰の二酸化炭素が排出されることにより、体内の重炭酸イオンが減少し(酸・塩基のアンバランス)、呼吸性のアルカローシスに陥り、増体・産卵性・卵殻質等の低下となってしまいます。従って、熱射病を抑制するためには、(1)過度の呼吸をさせないような管理、(2)体内の酸・塩基バランスを保つ、(3)体内の熱産生を抑える、といったことが必要です。
そこで、養鶏場でよく行われている暑熱対策を紹介します。
2.暑熱対策
ビニールカーテンの吊り下げ | 排気口から約1メートルの場所にビニールカーテンを床上80センチメートルまで吊り下げることによって、鶏のいる位置(床付近)の風速を速め、体感温度を下げるようにして下さい。 |
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噴霧・鶏体への散水 | 鶏舎内への噴霧等により、水の気化熱を利用した冷却方法です。吸気口へのクーリングパッドの設置や吸気口付近への散水も同様の原理です。 |
飼料摂取時間の制限・変更 | 8から13時頃までの給餌を停止すること(昼夜逆転照明等でも応用可能)で、飼料摂取による体内発熱増加と舎内温度上昇が重ならないようにします。 |
冷水や重曹・塩化カリウム等の給与 | 高温時は飲水量が増加するので、できるかぎり冷たい水を充分に飲めるようにします。 また、暑熱時の放熱は、熱性多呼吸(パンティング)に大きく依存しています。この徴候がひどい場合には、呼吸性アルカローシスに陥っていますので、重曹や塩化カリウムなどを投与してください(飼料添加・飲水投与:添加割合0.5から0.7%程度)。 |
3.最後に
熱射病を完全に阻止するためには、様々な対策を併用するなどして、最大限の効果が得られるよう、養鶏場に応じて工夫する必要があります。地球温暖化が年々進む中、経営安定のために欠くことのできない対策なので、様々な対策を組み合わせて実行してみてはいかがでしょうか。