乳牛
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夏季の暑熱時、乳牛は暑さの程度に応じて行動、生態、生理機能等に様々な変化が起こります。その結果、生産機能が低下するだけではなく、疾病が発生したり、死に至ることもあります。
これらの暑熱による影響は、直接的には体温の上昇、間接的には採食量、乳量・乳質の低下等として現れます。これがヒートストレスと呼ばれるもので、解決すべき重要な課題になっており、飼料給与面あるいは畜舎環境面の制御から軽減させることができます。
なお、乳牛には温度のほかに放射熱、湿度、風なども影響を及ぼし、暑熱の度合いを大きく左右します。
1.飼料給与面からの制御
DMI(乾物摂取量)の向上策 | 夏季におけるDMIは、日あたり乳量20キログラム程度の泌乳牛でも最高気温が27℃を越えた頃から減少しますが、その程度は、飼料の種類、品質、嗜好性等によって変化します。特に粗飼料については、濃厚飼料よりも反応が早く、より低い気温から乾物摂取量低下のために、乳量の減少が認められます。また、サイレージより乾草の方が低い温度から反応し、消化率の高い飼料の方が乳量は減少しにくくなります。 |
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繊維質飼料の給与法 | 飼料中のNDF(飼料中の総繊維)含量を粗飼料からの繊維が70%以上確保できる場合で、30%前後にビートパルプ等の製造粕や糟糠類等からの繊維を含める場合は、NDF35%前後に維持することが最低限必要です。粗飼料の切断長は10センチメートルと比較して2センチメートルに設定した方が咀嚼時間が短く、DMI、乳量、補正乳量低下を抑制できます。高エネルギー混合飼料(TDN74%、CP17%)の繊維質飼料(8%前後)としては、アルファルファ乾草よりチモシー乾草の方が産乳性に優れています。 |
脂肪の給与方法 | 脂肪酸カルシウム等のバイパス油脂添加の効果は、日あたり乳量30キログラム以上で乳脂肪率3.5%前後、またはそれ以下で効果が現れます。適正な給与量は、1日300から350グラムと判断されています。 |
水の給与 | 高温時においては、新鮮な水の供給が重要です。出来れば飲水の温度を10℃程度に下げることで、DMIが増加し乳量、FCM(4%乳脂肪率補正乳量)を増加させることが可能です。 |
飼料の給与回数 | 分離給与の場合は給与回数を増やすことで、1回当たりの給与量は減少しますが、乳脂率を低下させることなく、エネルギー摂取量を増加させることができます。 しかし、混合給与の場合は給与回数を増やしても効果は認められません。粗飼料給与は採食後の熱量増加を低減させるため、早朝及び夜間に給与し、その他の時間帯に濃厚飼料を多くします。 |
ミネラル等の給与 | 暑熱時におけるミネラル要求量は、適温時に比較して10から20%増加します。また、給与飼料中にはCa(カルシウム)が多量に含まれているのに対し、P(リン)が比較的少ないためにおきるCa:P比の不均衡やトウモロコシのホールクロップサイレージ多給によるミネラル不均衡が生じやすく、特に糞尿が多量還元されたほ場の飼料作物ではK(カリウム)の過剰蓄積やMg(マグネシウム)の利用低下も懸念されます。 高温時の生産性低下、乳熱発生防止のために、適正なイオンバランスが重要です。泌乳牛では陽イオン性の飼料給与(スーダングラス、濃厚飼料)、乾乳牛では乳熱防止のため陰イオン性(チモシー、イネ科牧草の乾草)の飼料が推奨されています。ヒートストレス下の分娩牛に対しては、分娩前にKを多量含有した飼料や重曹など陽イオン性の飼料給与は避け、分娩後に陽イオン性の飼料を高めます。 この他、分娩後の暑熱時には、粗飼料摂取量の低下から咀嚼回数不足による唾液分泌量減少で、第1胃内pHの低下や乳脂肪率低下を生じるため、重曹(炭酸水素ナトリウム)によるpH調節も有効です。 |
2.環境面からの制御
環境面からの暑熱対策の考え方は
1.環境温度を下げる
2.牛体からの放熱散量を高める
3.環境に対応した管理をする
(1)牛体の毛刈り及び削蹄
(2)細霧システム
(3)牛体への散水
(4)夜間外気の利用
(5)送風及び換気
1.環境温度を下げる
2.牛体からの放熱散量を高める
3.環境に対応した管理をする
(1)牛体の毛刈り及び削蹄
(2)細霧システム
(3)牛体への散水
(4)夜間外気の利用
(5)送風及び換気
牛体表面の空気を動かすことにより、(1)体熱の放散量を高めること、(2)牛体から奪った熱を早く牛舎外に出してしまうこと、が重要です。牛体に当たる風速は毎秒1メートル以上必要であり、できるだけ冷たい空気が望ましい。また、牛体の一部のみの送風は効果が少ないので、牛舎全体の空気の流れをつくるようにします。
細霧システム(簡易ミスト)は、園芸用のスプリンクラー、電磁弁、デジタルタイマー等を使い自作することができるので、安価で導入することが出来ます。