農薬を使用する皆様へ
農薬は、食料の安定生産や、緑の管理にとって重要な資材ではありますが、食や生活環境の安全・安心にとって常に高い関心事項の一つとなっています。 このため、農薬の使用や取扱は、農薬取締法や毒物・劇物取締法など、いくつかの法律により規制されており、守っていただくべきことや心がけるべき事は多岐に渡っています。 主立った内容について、次のとおり説明いたしますので、適正な使用や取扱をお願いいたします。 なお、こうした内容は、農業や造園業など業として農薬を使用する方々だけでなく、ガーデニングや市民農園で農薬を使用する方々についても留意する必要があります。 |
農薬使用者の責務
農薬を使用する方々には、農薬の使用に際し、次の責務があります。
- 農作物等に害を及ぼさないようにすること。
- 人畜に危険を及ぼさないようにすること。
- 農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること。
- 農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること。
- 水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとならないようにすること。
- 公共用水域(水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)第2条第1項に規定する公共用水域をいう。)の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水(その汚濁により汚染される水産動植物を含む。)の利用が原因となって人畜に被害が生じないようにすること。
1 販売禁止農薬・無登録農薬の使用禁止
特定農薬(特定防除資材)(農林水産省 農薬コーナー)を除く一般の農薬は、その安全の確保を図るため、農薬取締法に基づき、厳しく規制されています。その中心となっているのが、「登録制度」(農林水産省 農薬コーナー)です。農薬の製造者や輸入者は、農薬の登録を受けるに当たって、その農薬の品質や安全性を確認するための資料として、人への毒性や作物への残留性、病害虫などへの効果、作物への害などに関する様々な試験成績等を整えて、農林水産大臣に申請が必要となっています。新たな農薬の開発には、およそ10年の歳月と数十億円にのぼる経費が必要といわれています。
しかし、このような試験を実施していないにもかかわらず、「農作物の病害虫を防除できる」などといった、効能をつけ販売されているものが、いわゆる無登録農薬です。このような、無登録農薬として、これまで輸入品など、様々なものが確認されています。疑わしい商品を見かけたら農産物安全・流通課(059-224-3154)までご連絡下さい。
また、販売禁止農薬(農林水産省 農薬コーナー)は、安全性の問題から販売が禁止された、21種類の農薬のほか、容器や包装に登録番号などの決められた表示のない農薬が当たります(特定農薬(特定防除資材)(農林水産省 農薬コーナー)は除く。)。
こうした無登録農薬や販売禁止農薬の使用は、農薬取締法により禁止されています。
2 容器包装の表示事項の遵守
農薬の使用は、その容器・包装に表示されていることを守るのが基本ですが、食用農作物又は飼料作物に対して使用する場合は、農薬の残留が基準値以下となることを確実にするため、次の4点が遵守事項とされており、これらの違反は、農薬取締法により禁止されています。
- その農薬に適用がない作物へは使用しないこと
- 定められた使用量又は濃度を超えて使用しないこと
- 定められた使用時期を守ること
- 定められた総使用回数以内で使用すること
3 農薬使用計画書の提出
農薬使用計画書の提出義務は、毒性の強い農薬を使用することが多い倉庫などでのくん蒸を行う者、周辺への影響を配慮すべき航空散布を行う者及びゴルフ場で農薬散布を行う者に対し課せられている遵守事項です。このような方々は、農薬使用計画を農林水産大臣に提出する必要があります(提出せずに使用することは農薬取締法により禁止されています)。
農薬使用計画書の詳細について(農林水産省 農薬コーナー)
4 農薬の選定について
(1)農薬の現地混用について
農薬の現地混用は、散布労力の軽減等のメリットを有しているものの、混合剤として登録されている農薬と異なるため、農薬使用時の安全確保等の徹底が必要ですので、混用に際しては、次の点にご留意下さい。
- 農薬に他の農薬との混用に関する注意事項が表示されている場合は、それを厳守すること。
- 試験研究機関がこれまでに行った試験等により得られた各種の知見を十分把握した上で、現地混用による危害等が発生しないよう注意すること。
- これまでに知見がない農薬の組合せで現地混用を行うことは避けること。
(2)農薬登録のない除草剤について
除草剤の中には、駐車場や道路等で使用するものとして、農薬の登録を取っていないものが流通しています。このような農薬の登録のない除草剤は、果樹園や畦畔の除草など農作物の管理のための使用は、無登録農薬の使用にあたることから、農薬取締法により禁止されています。
見分け方:農薬の登録がある除草剤には、農林水産省の登録番号が記載されています。
5 農薬使用時の飛散防止・流出防止について
農薬の使用に当たっては、マスクや防護めがね、長袖・長ズボンの着用など、自らへの危害防止はもちろんですが、周辺への危害防止の配慮をお願いします。
特に農薬使用時の対象外への飛散は、周辺で生活している人々や自動車の塗装などに被害を与えたり、周辺の農産物で残留農薬の検出を生じさせることがあります。こうしたことがおきないよう農薬を使用する際には、農薬使用についての周知を十分に行ってください。
なお、水田で使用する農薬の一部及び土壌くん蒸剤には、止水期間及び被覆期間の定めがあるものがありますので、こうした期間を守っていただくようお願いします。
6 農薬の使用についての帳簿の記載
農薬を使用した後は、その内容を記録し、3年間は保存するように努めましょう。こうした記録は、農薬の使用状況を後から確認できるほか、次作以降の防除計画を立てる際に大変参考になります。また、農薬を適正に使用していることを説明する貴重な資料にもなります。
(記帳項目例) | 1 | 使用年月日 |
2 | 使用場所 | |
3 | 使用した農作物 | |
4 | 使用農薬の種類又は名称 | |
5 | 使用量または希釈倍数 |
7 農薬の保管管理の徹底について
農薬は必ず計画的に購入し、必要以上の農薬を長期間保管しないようにすることが大切です。保管を行う場合は、盗難や紛失、誤用の防止のため、鍵のかかる保管庫や倉庫に施錠して保管するようお願いします。
なお、毒物あるいは劇物の農薬については、さらに厳重な保管管理をお願いします。
また、農薬の盗難や紛失、不特定又は多数の人々に危害のおそれがあるときは、ただちに警察署、保健所、農林水産(農政、農林)事務所等に連絡し、指示に従ってください。
保管管理のポイント
- 施錠の可能な保管庫(又は倉庫)を設置し、施錠する。
- 計画的に購入し、長期間保存しない。
- 定期的に保管状況を点検すると共に、浸水、転倒、飛散、漏洩、流出及び地下浸透等を防止する。
- 毒物や劇物の農薬の保管がある場合は、農薬保管庫(又は倉庫)に医薬用外毒物、医薬用外劇物の表示を行う。
- 農薬ごとに購入量及び使用量を記帳し、常に在庫数量を管理する。
- 消防法に定める危険物に該当する農薬(塩素酸塩を成分とする除草剤)の保管は消防法を遵守する(詳細については、お近くの消防署にお問い合わせ下さい。)。
- 開封した農薬の容器は確実に密閉する。
- 別容器への移し替えは行わない。
8 農薬の適正処分
農薬には、有効期限が記載されています。有効期限の切れた農薬は、品質が劣化し,農薬としての効果が低下している恐れがあります。こうした農薬は使用しないようお願いします。
使用しなくなった農薬や農薬の空容器は、ビニルハウスの被覆資材などの他の廃棄物と同じく野焼きや埋設は、禁止されています。廃棄物の処理及び清掃に関する法律にもとづく適正な処理が必要となります。こうした廃棄物の処理については、お住まいの市町により対応が異なりますので、廃棄物を担当する部署にお問い合わせ下さい。
一般的に、農業や防除業など業としての使用から生じる廃棄物は、産業廃棄物とされており、ガーデニングや市民農園などから生じる廃棄物は一般廃棄物とされてます。
なお、農薬の散布時には必要量を十分把握して散布液を調製し、散布液が余らないようにするとともに、農薬容器の洗浄液は散布液調製に使用し、散布に使用した器具を洗浄した水は散布むらの調整等に使用するなど、農薬を河川などの水系に流入させない配慮が必要です。
9 農薬の使用で体調がおかしいと感じたら
農薬散布作業中や散布後に異常を感じたら、直ちに医師の手当を受けてください。
なお、その際、原因となったと思われる農薬のラベルを医師に示し診断を受けるようにしましょう。
また、処置法などで不明なことは、医師から、下記に電話してお尋ねください。
中毒110番 | 一般の方用 | 医療機関専用有料電話 (一件につき2,000円) |
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大 阪(365日、24時間 対応) | 072-727-2499 | 072-726-9923 |
つくば(365日、9~21時対応) | 029-852-9999 | 029-851-9999 |
病害虫の防除等については、化学合成農薬だけで行わず、耕種的・生物的・物理的な防除法を組み合わせて行ったり、県が発表する、病害虫発生予察情報(三重県病害虫防除所発表)やほ場での病害虫の発生状況を参考にし、農薬の必要性を判断していただくようお願いします。
また、三重県では農薬販売者やゴルフ場の農薬使用管理責任者、造園業者、営農集団等の農薬使用の指導的立場の方を対象として、農薬の販売・使用等に関する資質の向上をはかるため、農薬に関する専門的な研修を実施し、一定水準以上の知識を有する方々を農薬管理指導士として認定していますので、こうした研修を受講いただき、自らの資質の向上を図っていただきますようお願いします。