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平成26年04月21日

おさかな雑録

No.93 マハタ 2014年4月21日

間違いなくマハタ

 奈屋浦の活魚水槽でマハタが泳いでいました。マハタはハタ科に属し、大型になる魚ですが、成長すると深場へ移動するため、通常目にするのはその年生まれの小型魚ばかりです。この個体は5.6キログラムあり、成魚とまでは言えないかもしれませんが、沿岸では珍しいサイズと思われます。# 

マハタ 全長約65㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成26年4月17日撮影

 それで、筆者はもちろん、仲買人たちも熱い視線を送っていました。しかし、彼らの眼中には、珍しいが半分で、「本当にマハタか?」という疑惑も半分含まれているようでした。これまでもイヤゴハタスジアラの記事で紹介しているように、ハタ科の魚は水揚げが比較的珍しく、しかも種数も多く、特徴に乏しいため、魚のプロである仲買人でも判断に迷うことがあります。

 マハタの体は暗い褐色の地に暗色横帯が6~7本あり、目の周辺には模様がありません。また、尾鰭の後縁は白いという特徴があります。しかし、上の画像でお分かりのように、体の模様は薄く、消えかかっているようです。このように、ハタ科の魚は大型になると、頼みの綱である体の模様があてにならなくなってしまうので大変悩ましいのです。

 模様が消えたマハタは、同じく模様の消えたクエと区別が難しくなります。普通、クエはマハタよりも体が細長いので、もし同じ大きさの魚が同時に泳いでいれば見分けるのは難しくはないでしょう。しかし、そんなケースはまず起こり難く、しかもハタ科の魚は短躯(たんく)という、脊椎骨に異常があるが正常に育つ個体がしばしば見られます。このマハタも、「クエ、あるいはほかのハタ類の変形か?」という見方もできるわけです。

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マハタ 全長約65㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成26年4月17日撮影

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 クエ 南伊勢町奈屋浦 平成22年11月18日撮影

 こちらは疑惑をかけられた方の魚、クエです。クエは成長しても沿岸にとどまる魚で、何十キロもある大物を含め、成魚を見かける機会が比較的多い種です。クエの特徴は、頭から体にかけて6~7本の暗色横帯があり、前方のものほど傾斜することです。幼魚であれば目を通る模様が明瞭で、マハタとの区別は容易ですが、この画像でお分かりのように、大きくなると模様は消えてしまいます。画像を並べてみれば、体の地色はマハタの方が黒っぽく、クエの方が明るいのですが、どちらか片方だけ見せられるとやはり判断は難しいと思われます。一方、目と口の後縁の位置関係を見ると、マハタではほぼ一致するのに対し、クエでは明らかに口の後縁が後ろになります。顔つき、特に目と口に着目すればこれら2種を見分けることができるかもしれません。

 さらに確実に、体の模様が消えてしまってもこれら2種を見分けるためには、背鰭軟条部~尾鰭~臀鰭軟条部、つまり、体の後半にある鰭の縁に着目します。マハタはこれらが白く縁どられ、白い部分の幅は比較的広く、境界は不明瞭なのに対し、クエでは縁取りが極めて狭く、境界は明瞭です。パッと見た印象では、鰭の輪郭はマハタでぼやっとしており、クエではシャープです。一方、先に述べた「尾鰭の後縁が白い」というマハタの特徴は、「あるかないか」という見方ではクエとの区別はできません。

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背鰭軟条部の白い縁取り  左 マハタ 右 クエ

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クエ 南伊勢町奈屋浦 平成22年11月18日撮影

 残念ながら、今回のマハタは尾鰭の画像がありませんが、後縁の白い縁取りは背鰭軟条部と同様、ぼんやりとして幅が広くなっていました。マハタとクエにおけるこの縁取りの違いは、20㎝足らずの幼魚から10キログラム程度までは使えそうですが、まだそれほど多くの個体で確認しているわけではありません。また、標本や、箱詰めされているような状態のものも確認しておりませんので、必ずそうだとは言い切りにくいところですが、ご参考までにお知らせいたします。

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マハタ 標準体長35.5cm 南伊勢町奈屋浦 平成26年5月7日撮影

 少し小型の個体ですが、後日画像を入手しましたので追加します。背鰭および臀鰭の軟条部と、尾鰭の縁取りは、擦り切れたようにぼやけているのがお分かりいただけると思います。

(2014年4月21日掲載 5月22日追加 企画・資源利用研究課)

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