おさかな雑録
No.80 メバチ 2013年3月5日
珍しいなあ立派だなあ
まき網の水揚げを見に行ってみると、大きな魚を入れた水槽が目に留まりました。一見したところクロマグロのようにも見えましたが、どうも体が太短いようで、メバチかもしれないと思いました。しかし、ほとんど氷に埋まっている状態のため確認ができません。とりあえず写真を撮っていると「これはマグロ(クロマグロのこと)かな?」と後ろから声をかけられました。振り返ると産地仲買人の方々。「そうかもしれないが、氷に埋まっていてなんとも言えません。」と答えると「氷をどけたらいいがな」と言われました。
メバチ 尾叉長 168cm 南伊勢町奈屋浦 平成25年2月4日撮影
渡りに舟とばかりに氷をどけると、体側には胸鰭を納める溝が長く刻まれていました。胸鰭自体は短くなっていましたが、この溝は本来の胸鰭の長さを示していると考えられます。「これは胸鰭が長い。メバチですね。」
メバチ 赤矢印は胸鰭を納める溝 尾叉長 168cm 南伊勢町奈屋浦 平成25年2月4日撮影
メバチはその名の通り目が大きいことが特徴とされますが、胸鰭が長いことも重要なポイントです。一番長いビンナガには及びませんが、第2背びれの伸長部を越える程度の長さになり、胸鰭の一番短いクロマグロはもちろん、キハダと区別する際にも使えます。
メバチ 尾叉長 168cm 南伊勢町奈屋浦 平成25年2月4日撮影
メバチはマグロ類の中でも高級といえますが、クロマグロと比べると名前の格は一段下になります。尾柄の断面による品質の評価はまずまずであるものの、やはりクロマグロと比べると価格は低くなるようです。
メバチ 尾柄の断面 尾叉長 168cm 南伊勢町奈屋浦 平成25年2月4日撮影
平成25年2月5日付の関東・東海海況速報 赤丸は漁場の位置
メバチはこの時期黒潮周辺域では漁獲されるようですが、沿岸に近寄ってくることはほとんどないようで、定置網でしばしば漁獲されるクロマグロとは対照的に沖合に分布するマグロといえます。なのでマイワシを主体としていたまき網に混じるのも珍しいと感じたのですが、当時熊野灘中部には黒潮からの暖水波及が見られ、ちょうどまき網の漁場はその前線付近にありました。メバチはこの暖水とともに熊野灘に流入したものと考えられます。
(2013年3月5日掲載 資源開発管理研究課)
クロマグロの記事(2010年3月29日)