おさかな雑録
No.67 マンボウ 2012年5月2日
珍しくはないけど、姿はあまり見ない魚
マンボウ (奥)全長143cm、(手前)全長81cm 南伊勢町贄浦 平成24年4月26日撮影
このところ、姿のままのマンボウをちょくちょく見ます。マンボウは主に定置網で漁獲され、決して珍しい魚ではありませんが、可食部だけの肉塊になって水揚げされることが多いためにその姿はあまり見かけません。肉塊となっては測定はもちろん、ヤリマンボウと区別することもできず、どの種がどれくらい獲れているのかすらわからない、研究者泣かせの魚だったりもします。
マンボウ 全長143cm 南伊勢町贄浦 平成24年4月26日撮影
で、機会があればできるだけ測定を心がけています。この個体は特に大きいとはいえないものの、まずまずの大きさといえそうです。写真を撮って、いったん横にどけた小さいマンボウを戻そうとして驚きました。
マンボウ 背鰭の付け根 全長143cm 南伊勢町贄浦 平成24年4月26日撮影
なんと、背鰭の付け根におびただしい寄生性のカイアシ類が食い込んでいます。形態からpennella属であると思われますが、分類や生態はよくわかっていないようです。以下、簡単のためにpennella属の総称としてペンネラを用います。筆者はこれまで、トラフグやブリ、マンボウなどでペンネラの付着を見たことはありましたが、これほど大規模なものは初めて見ました。巨体を誇るマンボウですから、一つや二つ、ぽつんと着いている分にはどうということもないのでしょうが、さすがにこれだけ着いていたら多少なりとも不具合が生じるのではと思ってしまいました。
ペンネラ マンボウに寄生 南伊勢町贄浦産 平成24年4月25日撮影
こちらは少し前、4月20日に水槽で生きていたマンボウに付着していたペンネラです。右端の色がやや薄い部分はマンボウの体内に食い込み、先端は大きくふくらんで錨の役割を果たします。ペンネラを抜こうとすると、結構な力が必要です。
ペンネラとはどのような生き物なのか、興味は尽きませんが、捕ろうと思って捕れるものではありません。これまで通り、まめに市場に通うしか遭遇する手はないようです。
(2012年5月2日掲載 資源開発管理研究課)