おさかな雑録
No.49アラハダカ 2011年6月23日
裸になりにくい「はだかいわし」
前回に引き続き、ハダカイワシ科魚類の紹介です。
アラハダカ 69mm雄(上)、70mm雄(下) 南伊勢町奈屋浦産 平成23年5月30日撮影
アラハダカの特徴は、目の白目の部分に三日月状の組織がないこと、体の背縁に発光器がないこと、尾びれの直前に並ぶ発光器の数が2個であること、肛門上発光器列が少し折れ曲がること、鰓蓋上端は丸く滑らかであることです。
アラハダカ 雄(左列)、雌(右列) 南伊勢町奈屋浦産 平成23年5月30日撮影
ご覧のように、前回紹介したナガハダカと比べると、アラハダカは同じように水揚げされても、生きて海を泳いでいるときの姿が比較的よく残っています。鱗もよく残っていますが、写真だと鱗が光るために種の特徴となる発光器がわかりにくいかもしれません。アラハダカは「丸裸」になっている個体をあまり見かけず、ハダカイワシ科魚類の中では比較的表皮や鱗が強固な種だと考えられます。
アラハダカ 背面 雄(左列)、雌(右列) 南伊勢町奈屋浦産 平成23年5月30日撮影
アラハダカ 腹面 雄(左列)、雌(右列) 平成23年5月30日撮影
アラハダカも、ナガハダカと同様、雌雄が尾柄部背腹面の発光器で区別できます。これら2種は比較的多数の標本を入手できたために、発光器による雌雄差に気がつきましたが、市場調査の際にはこれら以外のハダカイワシ科魚類も数多く出現しており、これまで雌雄については全く考慮していませんでした。今後ハダカイワシ科魚類を見るときには、雌雄差についても注目していきたいと思います。
アラハダカ 雄(左列)、雌(右列) 南伊勢町奈屋浦産 平成23年5月30日撮影
ところで、アラハダカもナガハダカと全く同様に、卵巣は明らかに発達しているのに精巣(と考えられる生殖腺)はきわめて貧弱な状態でした。これらの精巣が生殖可能な状態なのかどうか、肉眼でははっきりわかりませんが、カタクチイワシやゴマサバなどでは雄と雌の生殖腺はほぼ同時に発達し、それぞれ肉眼でもはっきりと成熟が確認できます。アラハダカやナガハダカの生殖様式がいったいどのようになっているのか、興味は尽きません。
(2011年6月23日掲載 資源開発管理研究課)