おさかな雑録
小さくてもヨシエビの特徴
ヨシエビ 2010年11月3日採集(冷凍保存)
まだまだ小さいけれど『ヨシエビ』です。更に小さい3cm程度でも,名前や雌雄は分かります。
ここ最近,稚エビの分類と計測に四苦八苦していました。天然の稚ヨシエビの生息場所を探しており,かき集めたエビの名前を調べる必要があったからです。
エビの分類は形態の特徴,特に額角や生殖器の形が重要です。 今回は稚エビなので,顕微鏡が頼りになります。冷凍サンプルを解凍するとドロドロになってしまい,観察ができません。エタノールで解凍・固定して,丁寧に検鏡します。
ヨシエビの頭部 2010年11月3日採集(冷凍保存後,エタノール保存)
同じヨシエビ属の『シバエビ』との違いを見出す点,まずは額角です。
ヨシエビ:眼柄(がんぺい:眼のついている柄状の部分)基部の直上から,後部にある額角上縁歯(がっかくじょうえんし:額角の上に並ぶ棘)が1つ,胃上棘は除く。(シバエビは2つ)
*額角(がっかく):眼と眼の間にある角
これで『シバエビ』と『ヨシエビ』の違いの,アタリを付けておきます。
ヨシエビの雄性生殖器 2010年11月9日採集(冷凍保存後,エタノール保存)
次に生殖器。オスは腹肢の内側にくっつき(尻尾の前のほうにあるイメージ),メスは左右の歩脚の間(胴体の後ろのほうにあるイメージ)にあります。『シバエビ』のオス・メスとも全く形が違うので,これが決め手になり,結論づけます。これでも疑いがある場合,オスに限っては『シバエビ』ならでは特徴があります。
ヨシエビの雌性生殖器 2010年11月3日採集(冷凍保存後,エタノール保存)
分類を始めた頃は図鑑を見ながらでも,種類はもちろん,雌雄の区別も自信がありません。近隣の研究者に教えを請いつつ,作業していると,突然“分かる”時が来ます。今まで見えていなかったものが見える瞬間です。
ヨシエビは人気があり,各地で放流されています。”放流後に成長した群”か”天然発生群”なのかを,容易に識別する方法はまだありません。あったら教えて欲しいなぁ。
(2011年2月28日掲載 鈴鹿水産研究室)