おさかな雑録
正解!やっぱりシバエビでした
シバエビ 鈴鹿市白子産 平成22年9月30日撮影
少し前の話ですみません。9月30日に船曳網の混獲物として,鈴鹿市漁協に水揚げされたシバエビです。 本当にそうなのか? 似た種類を「シバエビ」としているのではないか?
鈴鹿水産研究室ではヨシエビ(地方名:ガンサエビ,ガンサ)を調査しており,担当者は似ているエビがとても気になります。というのも,ヨシエビとシバエビは共にヨシエビ属で,とても近い種類なんです。
左:①尾節,右:②オスの第3歩脚基部の棘 平成22年9月30日撮影
小さなエビの名前を調べるのは,とても苦労します。疑わしいのものは最終的に,体の構造の違いで分類するため,顕微鏡が必須です。このエビも顕微鏡を使ってチェックしました。
結論は漁師さんのいうこのシバエビは,分類上でも,きちんと「シバエビ」でした。
それはなぜか? 図鑑に示された以下の項目が決め手になりました。
①尾節に可動棘が無い。 ⇒ あればトサエビの可能性
②オスの第3歩脚基部の棘が強大。
③オスの生殖器の先端の形。 ⇒ トサエビ・ヨシエビ・モエビとも違います。
④眼柄(がんぺい:眼のついている柄状の部分)基部の直上から,後部にある額角上縁歯 (がっかくじょうえんし:額角の上に並ぶ棘)が2つ。
*額角(がっかく):眼と眼の間にある角
*胃上棘は計数しない。
左:③オスの生殖器の先端,右:④額角上縁歯の計数 平成22年9月30日撮影
このサイズのエビで顕微鏡を使わずに分かるのは,②と④程度です。漁師さんの分類の決め手は,体色・質感です。顕微鏡での確認より慣れればウンと簡単です。
漁師さんはエビに限らず,セリの前にホイホイとすばやく分類していきます。その目は驚くほど確かです。先輩漁師からたたきこまれた“分類できる目“を持っています(種類や量,あるいはとても難しい種によっては,2種以上が混ざってセリにだされることもありますが・・・)。
大都市に面する伊勢湾では馴染みあるクルマエビ・ヨシエビだけでなく,クマエビ,シバエビ,サルエビなど多くの種類が漁獲されます。津が発祥とされる天むすの具材の多くはアカシャエビ(サルエビの地方名)のようです。内湾のエビでは近年漁獲量が減っている種類もあり,その生態や伊勢湾の環境を再チェックする時期にきています。
(2010年11月15日掲載 鈴鹿水産研究室)