旬のおさかな情報
No.36 カタクチイワシ 2017年4月26日
カタクチイワシ
ブリの水揚げはまだまだ盛んで、味わいも旬と言って差し支えない状態ですが、少し趣向の違う魚も紹介させていただきます。大きくなっても15㎝程度で棘や毒もなく、食べやすくて美味しくて、まるで餌として生きているような魚、カタクチイワシです。ヒトだけでなく、ブリにとっても美味しい魚といえるかもしれません。
カタクチイワシ 南伊勢町贄浦 平成29年3月10日
カタクチイワシはほとんど年中卵を産み、稚魚のうちはチリメンジャコの原料として、幼魚は煮干し、成魚は鮮魚や丸干しと、私たち人間がいつでもどこでも大変お世話になっている魚です。今回のおすすめは定置網やまき網で漁獲されている、10㎝以上の比較的大きなもので、成熟しているものが多く、脂も良くのっていて、どうやって食べても美味しい状態になっています。
カタクチイワシ 南伊勢町奈屋浦産 平成29年4月10日
こちらはまき網のマイワシに混じっていたカタクチイワシです。上は15㎝程度、下が12㎝程度で、定置網では下の方でも大きい方ですから、上は超特大です。この大きなカタクチイワシはよほど美味しいとみえて、まき網漁獲物の選別をしていた乗組員たちが、自分たちのおかず用に取り置いていたほどです。煮付けにするとのことでしたが、この大きさならカタクチイワシとは思えないほどのボリュームを味わうことができるでしょう。なお、カタクチイワシの大きさについては好みが様々で、「骨ごと食べたとき、小さい方が骨が当たらなくて好き」という人もいます。お好みや食べ方に応じて、魚の大きさを選んでいただければと思います。
カタクチイワシはマイワシと比べると体も小さく、脂ののり方も控えめですが、熊野灘に面した三重県中部以南では好んで食べられており、丸干しなどの加工品も人気です。魚屋さんに聞いた話では、常連客は丸干しを南蛮漬けにするのがお気に入りとのことです。丸干しの醍醐味は、新鮮なまま、頭から内臓からすべてを保存食にしているところで、味わいも独特です。一方、南蛮漬けも頭からまるごと味わう料理で、原料は新鮮なものを使うのが肝心といえます。丸干しを使った南蛮漬けは、いつでも手軽に良い原料が入手できる、とても理にかなった利用法だと感心いたしました。
マイワシ 南伊勢町贄浦 平成29年4月10日
さて、マイワシに混じっていると書きましたが、実際に混じっていた漁獲物をご覧に入れましょう。
上の写真、見る限りではカタクチイワシはひとつも混じっていませんが、測定すると100尾中数匹のカタクチイワシが混じっていました。このような状態なので、あの大きなカタクチイワシはほとんど幻の魚といえます。もし店頭で見かけたら、大変ラッキーだといえるでしょう。