沿岸資源増殖研究課
イセエビ・アワビ等沿岸資源の増殖
イセエビやアワビなど、沿岸資源の持続的利用に向け、資源評価を行っています。
また、イセエビ等の水産重要種の種苗生産技術の開発や、伝統的な漁法である海女漁業を振興するため,アワビ等の磯根資源の増殖に関する研究を行っています。
イセエビは移動が少なく,また高価であることから、種苗(稚エビ)を人工的に生産し,海に放流して成長させた後に漁獲するという栽培漁業の有望な対象種として期待されています。
イセエビは卵からふ化した後の約1年間はフィロソーマ幼生と呼ばれるプランクトンとして海を漂い,その後プエルルス幼生をへて稚エビとなり沿岸の岩礁域に棲むようになると考えられています。
ふ化直後のフィロソーマ幼生 体長約1.5mm |
ふ化後約1年のフィロソーマ幼生 体長約30mm |
水産研究所では,このフィロソーマ幼生期のイセエビを飼育し,稚エビを生産する研究を長年行ってきました。そして,昭和63年に世界で始めて,たった1尾でしたが稚エビの生産に成功しました。
その後も飼育方法の改良を積み重ね,これまでに日令240日前後の後期幼生に到達するまでは生残率が90%の高率で飼育ができるようになりました。
しかしながら後期幼生の飼育技術の開発が課題となっており,稚エビを大量に生産するための飼育技術は未だに確立されていません。大量に飼育するためには大型の飼育容器,容易に入手できてフィロソーマの成長の良い餌などを新たに開発しなくてはならないのです。最適な飼育密度やその他の飼育条件も解明していく必要もあります。
抱卵中の親エビ |
プエルルス幼生 体長約20mm |
このように克服しなければならない課題は多くありますが,イセエビの栽培漁業を実現するため,現在も稚エビ大量飼育技術の確立を目指した研究を続けています。
- イセエビ幼生の完全飼育(PDF)へ
- イセエビに関する研究の歴史
- フィロソーマ幼生からプエルルス幼生への変態シーン(ビデオ)1,144KB
- イセエビの雌雄の見分け方
- イセエビの分類学上の位置と近縁種との見分け方
藻場造成に関すること ・・・人工礁におけるヒジキ造成
- 県内の磯には、磯焼けといわれる藻場が失われた場所がみられており、このような海域では漁業の対象となる水産生物が生息できず、生産性が低くなっています。
- 本研究は、磯焼けした海域にヒジキ資源を創出させるために整備されたヒジキ人工藻礁で、ヒジキの増殖や効果的な藻礁の造成につながる知見を得ることで、ヒジキ資源の増大にかかる効果的な手法を検討します。
-
ヒジキが生育する人工礁
海藻の増産・安定供給に関すること・・・ヒジキ・イトノリ類
- 伝統食材でもある海藻は、健康食および日本食ブームを受けて注目されてます。また海藻の増養殖は、環境の浄化能力や持続可能な漁業においても重要です。
- 本事業では、かつてのヒジキ漁場を取り戻すために、生産者自ら取り組める技術を開発します。また、青さのり(ヒトエグサ)養殖の経営安定化のため、イトノリ類の年内生産を目指した試験を進めています。
-
養殖試験中のイトノリ
海女漁業に関すること ・・・アワビ類の増殖
- アワビ類の漁獲量は、昭和61年の457tから平成29年の72tへと大きく減少しています。このことは、アワビを漁獲する海女漁業の収益性を厳しくしており、アワビ資源の回復が喫緊の課題となっています。
- アワビ資源の回復には、資源動向に影響する一因と考えられる稚貝期の生残りについて理解を深め、成育適地の保全や造成を行うことが必要と考えられます。水産研究所では、稚貝の生残りや成長に優れた成育場の条件について調査を実施し、アワビ資源の回復につなげていくこととしています。
- また、漁獲量の増大のために実施されている人工種苗の放流効果をさらに高めていくことも重要です。水産研究所では、放流されたアワビ種苗の追跡調査やアワビ種苗の水揚げ状況の市場調査を実施しています。
-
アワビ稚貝を放流する海女さん
天然のクロアワビ(左)と
放流されて再捕されたクロアワビ(右)