煎茶及びかぶせ茶用晩生新品種 'みえ緑萌1号'
戻る | HOME | 研究内容 | 技術短報 | MATe |
[要約]
チャの新品種 'みえ緑萌1号' は 'やぶきた' と比較して摘採期で5日程度遅い晩生種である。樹勢は強く、株張りの良好な多収性品種である。荒茶品質は特に色沢、香気に優れている。作期の拡大を図るための品種組合せ栽培に適している。
[背景・ねらい]
チャ品種の中で 'やぶきた' の占める割合が著しく高い。そのため栽培作業や製茶時期の集中、あるいは病害虫の多発や晩霜害の危険性など幾多の問題が指摘されている。また今後の経営規模の拡大やそれに伴う効率の高い機械が導入されることになってくると、さらに作期を分散することが重要になってくる。そこで、現状では晩生優良系統が少ないため、新たな晩生品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 'みえ緑萌1号'は1960年に三重県農業試験場茶業分場で 'やぶきた' の自然交雑による実生から選抜育成した。
- 形態特性:樹姿は中間型で、株張りがよく樹勢が強い。初期生育も良好である。 'やぶきた' と比較して、成葉は良く似た長楕円形で、葉色も同程度の緑であるが葉の大きさはやや小さく、光沢もやや少ない。新芽は芽数が少なく、葉数はやや多く、百芽重もやや大きい。葉色はやや緑が濃い(表1、写真1)。
- 栽培特性: 'やぶきた' と比較して、亀山では萌芽期、摘採期とも5日、四日市では萌芽期が7日、摘採期は6日程度遅い晩性種である。(表2)また 'やぶきた' と比較して、耐寒性は同程度で、炭そ病、輪斑病には強い。
- 収量:株張りが良好なため、幼木期から収量性が高く、成木園では 'やぶきた' より多収である(表3)。
- 品質:一番茶、二番茶の荒茶では総合点で 'やぶきた' より優れ、特に色沢、香気が良好である(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 煎茶用だけでなく、かぶせ茶用としての栽培適性も高いので、かぶせ茶栽培の多い三重県下には特に適する。
- 'やぶきた' より一番茶新芽の硬化は緩慢であるが、晩生の摘採の時期には気温も上昇するので摘採遅れにならないように注意する。
- 平成8年3月18日種苗法による品種登録。