今回の講座は、斎宮歴史博物館で第38回三重県埋蔵文化財展を開催中していたため、同館講堂で行いました。内容は、「最古の土偶―松阪市粥見井尻(かゆみいじり)遺跡―」と「最古の庭―伊賀市城之越(じょのこし)遺跡―」の2つで、それぞれ三重県埋蔵文化財センター職員中川明(なかがわあきら)、穂積裕昌(ほづみひろまさ)が講演を行いました。粥見井尻遺跡は1996(平成8)年度、城之越遺跡は1991年度に、当センターが調査した遺跡です。
当日は、さわやかな晴天となり、90人の方にお越しいただきました。
一つ目の講座で取り上げた粥見井尻遺跡は、櫛田川の中流、松阪市飯南町粥見にある遺跡です。講座では、発掘調査で竪穴住居4棟や土坑が確認され、縄文時代草創期の土器や石鏃等の石器が出土したことに触れました。そして、竪穴住居の床面近くから土偶が見つかったことを話しました。
2010年度に滋賀県東近江市の相谷熊原(あいだにくまはら)遺跡で同じ時期の土偶が見つかり、放射性炭素による年代測定でおよそ1万3000年前と分かったこと、粥見井尻遺跡でも放射性炭素による年代測定を行い、それより若干古い数値が出たことにも触れました。
二つ目の城之越遺跡は、伊賀市比土(ひど)に所在する遺跡です。講座では、調査でこれまでに例のない遺構が明らかになっていく様子をスライドを使って再現しました。そして、祭祀用と考えられる遺物が多数出土していること、祭祀に首長層が関与した証拠として大型掘立柱建物が4棟も見つかっていることを話しました。さらに、津市の六大A(ろくだいえー)遺跡等県内外の類似遺跡を紹介し、飛鳥京跡苑池との連続性を指摘して、城之越遺跡は日本庭園の起点となる遺跡だと結論づけました。
講演後、参加者の方々は、埋蔵文化財展の展覧会場に移動され、展示された粥見井尻遺跡や城之越遺跡等の展示品を熱心にご覧になり、講師に疑問点を尋ねておられました。
アンケートでは、多くの方に「非常に有意義・有意義」「良く分かった・分かった」とご回答いただきましたが、改善するべき点もご指摘いただきました。可能なところから改善してまいりたいと思います。ありがとうございました。
なお、粥見井尻遺跡を県史跡、城之越遺跡を国の名勝及び史跡に指定し、現地を保存、整備するとともに、粥見井尻遺跡の土偶を県有形文化財に指定してその保存を図っています。
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