保環研(旧、環科センター)研究報告 第18号(1998)
三重県環境科学センター研究報告 第18号(1998)を発行しましたのでその概要をご紹介します。
各研究報告、ノートの全文(PDF形式)をご希望の方は、こちら からダウンロードできます。
研究報告
・9801 微生物の機能を利用した水質浄化(第2報)
一固定化低窒素同化細菌による窒素除去一 (約720KB)
中谷純夫、松岡行利、山川雅弘、柏 雅美*、木村俊夫**、菅原 庸***
* 三重大学生物資源学部水産微生物学研究室
** 農学博士 三重大学生物資源学部助手
*** 農学博士 三重大学生物資源学部数授
脱窒能を有する低窒素同化最近をバイオリアクターとして利用するため、低窒素同化細菌 Sc51株細胞の固定化を試みた。 ポリビニルアルコールを担体として使用したとき、固定化担体内への硝酸イオンの透過性 は他の固定化材とほぽ同程度であった.調整した固定化 Sc51 株細胞ゲルを、30℃にて24 持間活性化処理することにより担体細胞数は増加し、ゲル1gあたり10E9cfu(コロ二一形 成単位)のレベルとなった。 固定化 Sc51 株細胞による脱窒活性は、30℃付近にて最大であり、50℃においても最大 値の60%程度の活性を示した。また、固定化 Sc51 株細胞は20~30℃て安定であったが、 温度増加に伴い失活し、50℃ではぽぽ50%程度の活性が残存するにすぎなかった。 固定化 Sc51 株細胞による脱窒活性は、pH7~8付近で最大であり、pH6あるいは9に おいて最大値 85%程度の活性が認められた。固定化細胞の脱窒活性はpH7で最も安定で あったが、酸性域で不安定で pH5 では 40% 程度の活性が残存するにすぎず、pHの増加と ともに安定性が低下した。 調整したモデル廃水を用いて、固定化 Sc51 株細胞による窒素除去を試みた。この系では 硝酸塩の減少に伴い若干量1の亜硝酸塩が蓄積するものの、窒素ガスが生成された。反応は6 時間以内に遠やかに進行し,硝酸塩は12時間て完全に消失したが、硝酸塩の減少により脱窒 速度も減退し、調整廃水中の硝酸・亜硝酸態合計量は24時間後にほぽ完金に消減した。 算出された窒素除去速度 90.8μmol/L/hr てあった。 つぎに、終末処理廃水を用いて、固定化 Sc51 株細胞による窒素除去を試みた。終未処理 廃水にはなお 780μmol/L 程度の硝酸塩、COD値として 3.38mg/L程度の有機物が残存して いたが、固定化 Sc51 株細胞により廃水中の硝酸塩が速やかに減少し、脱窒が 12 時間まで直 線的に進行した。廃水中の硝酸・亜硝酸態窒素合計量は 24 時間後にほぼ完全に消減した。算 出された窒素除去速度は 55 μmol/L/hrであった。・9802 バイオアッセイを用いた毒性評価について(第3報)
-工場排水の評価について- (約500KB)
山川雅弘、水谷博和、前田雅也、早川修二、伊東友夫、高桑三明、中谷純夫
工場排水7業種24資料を対象に、マイクロトックス毒性試段、Ames 試験、umu 試験及 び金属類の成分分析を行い、評価を試みた。 その結果、マイクロトックス毒性試験では金属加工業4試料でEC50が求められた。この 4試料の成分分析では、鉄、亜鉛及びニッケルが標準物質の EC50 よりも高濃度で検出され、 これらの物賞が試験に影響を及ぼしているものと推察された。 工場廃水を固相カートリヅジで濃縮した試料を用いて Ames 試験及び umu 試験を行った ところ、Ames 試験 TA98 (-S9Mix)において2試料が陽性又は擬陽性を示した。また、 umu 試験において Ames 試験で生育阻害が見られた1試料で陽性(-S9Mix及び+S9Mix)を 示した。・9803 未規制物質等実態調査 (約1220KB)
前田雅也、水谷博和、山川雅弘、中谷純夫、伊東友夫、高桑三明、松岡行利
、 白井宣一郎、鳥居成幸、奥田哲也,高橋康三、地主昭博、早川修二
三重県下29施設の一般廃棄物処分場を対象に、未規制物質の実態調査、パイオアッ セイによる生体影響調査及ぴ処分場周辺大気中のアスペスト調査を行った。また、同時に 規制対象金属についても分析を実施した。 今回調査した未規制物質では、処分場の排出水からニッケル、コバルト、フタル酸ジ-2- エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ブチル及びリン酸トリ-n-ブチルが検出されたが、バイオ アツセイによる毒性試験では、処分場が原困と考えられるような結果は認められなかった。 また、アスベスト調査の結果においても、周辺大気に対する一般廃棄物最終処分場からの 影響はないものと考えられた。・9804 大理石板の大気暴露調査結果について(第1報)
-暴露による大理石の光沢度、重量変化- (約580KB)
鳥居成幸、永楽通宝*、奥田哲也、高橋康三、橋倉清和
* 三童県環境安全部大気水質課
三重県内の2地点(上野市および四日市市)において、酸性雨調査の一環として大理石の 暴露試験を行った。大理石の変化を観察すろ手法として、重量変化および光沢度の変化を用 いた。重量変化と光沢度変化との相関関係は良好であり、暴露初期における光沢度の変化量 は重量変化量よりも大きいことから、短期間での、酸性雨による大理石への影響を評価する 手法として有効であると考えられた。 暴露は屋外および屋内で行ったが、屋内で暴露した試験板にも光沢度の減少がみられ、大 理石は湿性沈着以外にも乾性沈着により浸食されることが券えられた。 また、四日市市と上野市で暴露した試験板の間には、浸食量の差が認められた。
ノート
・9805 においセンサーを用いた事業所周辺悪臭調査について (約170KB)早川 修二、奥田 哲也、白井 宣一郎
金属酸化物熱線型半導体式においセンサーを用いて21事業所周辺の悪臭調査を行った。 その結果、個々の事業所についてはヒトの感じる臭気の強弱とセンサー測定値の変化はよく 一致した。しかし、事業所問の臭気の強弱とセンサー測定値との相関はあまり見られなかっ た。また、嗅覚測定との比較も行ったがセンサー測定値との関係は、はっきりとは得られな かった。・9806 三重県内における露水の性状について(第1報) (約290KB)
鳥居成幸、臭田哲也、高橋康三、橋倉清和
三重県内における露水の性状を明らかにするため、採取法・分析法の検討を行った。三 重県亀山市内において露水を採取し分析した結果、pHの平均値は雨水よりも高かった。し かしながら露水中の成分濃度は,雨水と比較して高濃度であった。また、雨水ては通常少 量しか含まれない成分(亜硝酸、ギ酸、酢酸)が比較的高濃度て確認された。・9807 有害大気汚染物質モニタリングにおける前処理法の検討
-圧力容署法によるニッケル、ヒ素などの迅速前処理- (約500KB)
奥田哲也、鳥居成幸、高橋康三、橋倉清和
大気汚染防上法の改正による、有害大気汚染物質モニタリングの開始に伴い、ニッケ ル、ヒ素などを対象とした迅速前処理法の検討を行つた。ステンレスジャケットを用い た圧カ容器法は、ニッケルなどに用いられるふっ化水素酸・硝酸・過塩素酸分解法、ヒ素 に用いられる硝酸・硫酸分解法と比べて時間と操作が短離でき、ほぼ同等の回取率が得ら れた。この方法を用いて環境科学センターで調査を実施したところ、大気中の平均濃度 は二ツケルが8.6ng/m3、 ヒ素が8.5ng/m3 であった。・9808 内湾水質環境保全に関する調査(第3報)
-的矢湾主要流入河川こおける富栄養化起因物質の挙動について- (約330KB)
地主昭博、山本和久、岩崎誠二、松岡行利、高橋正昭
的矢湾に流入する磯部川、その支川及ぴ日出川で、窒素、りん等の実態調査を行った。 これらの河川の窒素及ぴりんの濃度は、年平均値でそれぞれ 0.32~0.90 mg/L、0.02 ~ 0.24 mg/Lであり、窒素及びりんの大部分は溶存態であった。また、一部の地点を除いて窒素 及びりん濃度の時間変動は小さかった。 調査河川全体での窒素及ぴりんの負荷量はそれぞれ 36.4kg/日、2.98kg/日であった。・9809 各種焼却灰からのりん、金属等資源回収技術開発研究
-下水汚泥焼却灰からのりん回収について- (約300KB)
高橋正昭、山本和久、岩崎誠二、地主昭博、松岡行利
ごみや下水汚泥などの各種焼却灰の有効利用と廃棄物処理問題の解決を図るため、これら 焼却灰中のりん、アルミニウムその他重金属などの資源化技術開発を行なっている。 基礎研究として、下水汚泥焼却灰に酸を加えてりんを溶出し、これに水酸化ナトリウム、 炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなど各種のアルカリを加えていくこ とにより、りんの回収試験を行なった。 硫酸を加えてpH2 以下とすることにより、焼却灰中のりんのほとんどが溶出し、これに アルカリを加えてpH4 とし、りん合有物を沈殿させることにより、約90%を回収するこ とができた。・9810 中華人民共和国河南省環境保全技術研修報告 (約540KB)
海外派遣職員レポート
伊東友夫、内藤良三*、宮尻英男*
* 三重県環境安全部大気水質課