第2回
前回は簿記の種類と必要性について説明しました。では、さっそく「記帳を始めましょう!」といきたいところですが、もう少し簿記の基礎知識につき合ってください。 簿記の目的を違う視点から整理すると
(1)日常の営農活動に伴う財産の増減を一定のルールに従って帳簿に記録すること
(2)農業経営の財政状態を明らかにすること
(3)農業経営の経営成績を明らかにすること
の三つになります。これらの目的を達成するために、記録の仕方、財政状態や経営成績の表し方にルールがあります。このルールを覚えるこことが簿記を覚えることになります。
ここでは、最も基本的なルールを少し説明します。
日常の営農活動に伴う財産の増減を一定のルールに従って帳簿に記録すること
営農活動では、肥料や資材、農産物を「売ったり」「買ったり」することによってお金が「出ていったり」「入ってきたり」します。このような、農業経営に関わる財産の増減を伴う出来事を簿記では「取引」といい、これを記録します。
簿記では、「取引」をその内容によって「勘定科目」という項目に分けて、左側(借方)と右側(貸方)に分けて記録します。
具体例
「6月14日に1000円の肥料を現金で購入した」という「取引」を
「肥料費」という「費用」が発生し、「現金」という「資産」が減った
と捉えて
借方(左側) | 貸方(右側) | |
---|---|---|
6月14日 | 肥料費 1000円 | 現金 1000円 |
というように記録します。「肥料費」「現金」というのが勘定科目です。
普段の会話でも「取引」という言葉は使っていますが、「簿記上の取引」つまり簿記で記録しなければならない取引は農業経営に係わる「資産・負債・資本・費用・収益」のどれかが変化した場合です。一般的な取引とは微妙に違ってきますが、詳しくは後で説明しますので、ここでは、「左右に分けて記録していくんだ。」と言う程度で十分です。
農業経営の財政状態を明らかにすること 貸借対照表
簿記では農業経営の財政状態を貸借対照表で表します。貸借対照表はバランスシートといい、B/Sとも表されます。
ルールとして、貸借対照表の左側にプラスの財産である「資産」がどんな状態でどれだけあるかを表現します。右側の上に、マイナスの財産である「負債」がどれだけあるかを表し、右側の下(負債に続いて)に資本を表します。
貸借対照表を見ることによって、経営が「どれだけの財産(資産)を持っていて」「どれだけの借金(負債)があって」「どれだけの元手(資本)を経営に投資しているか」が分かります。ちなみに簿記では負債を他人資本、資本を自己資本といいます。
貸借対照表
農業経営の経営成績を明らかにすること 損益計算書
経営成績は損益計算書で表します。ルールとして、左側に「費用」の内容を表し、右側に「収益」の内容を表します。簿記では、収益と費用の差額を「損益」といい、左側に表します。
損益計算書によって、ある期間に「売上(収益)がどれだけあって」その収益を上げるために「どれだけの費用がかかって」その結果「いくら利益(損失)があったか」が分かります。損益計算書は英語の頭文字からP/Lとも表され、貸借対照表が一定時点の財政状態を表すのに対し、一定期間(通常1年)の損益を表します。
損益計算書
これらはルールです。まず、「そう決まっているんだ。」と割り切って覚えましょう。
慣れる(簿記を覚えるに)に従って、その意味は自然と分かってきます。
簿記一巡の流れ
基礎知識の最後に簿記一巡の流れを簡単に説明します。
経営は継続的に行われるもので、いつからいつまでと期間が決まっているわけではありませんが、経営成績を出したり、税務上の関係から、通常一年単位で区切って記録していきます。この区切りの期間を「会計期間」、会計期間の始まりの日を「期首」、終わりの日を「期末」といいます。 流れを簡単に表すと
(1)期首の財産の状態を調べて「貸借対照表」を作り、
(2)会計期間中の「簿記上の取引」を「勘定科目」の単位毎に記録し
(3)勘定科目毎に集計し
(4)期末にまた財産の状態を調べて、貸借対照表と損益計算書を作る
ということになります。(1)(4)は期首と期末に行うことですので、普段は(2)(3)の繰り返しということになります。
少し、くどい説明になったかも知れませんが、次回からいよいよ実際の記帳を始めます。