四日市市大矢知・平津事案
1.事案の概要
四日市市大矢知町及び平津町地内の産業廃棄物最終処分場で、平成6年度までに許可面積・容量を大幅に超える処分及び許可品目以外の廃棄物の処分が行われたものです。処分場の設置者に対し、2度にわたって改善命令を行いましたが、改善は実施されず、同年10月に許可期限切れとなりました。
2.安全性確認調査結果の概要
平成16~18年度に、現場の測量調査、地質調査及び廃棄物・土壌・水質等の調査を実施したところ、その概要は次のとおりでした。
(1) 廃棄物の種類、投棄面積及び容量
廃プラスチック、陶磁器くず、鉱さい(鋳物砂)、木くず等が確認され、面積は約95,000m2、容量は約2,620,000m3(処分者が未確定なものを含む)と推定されました。また、この他に、隣接区域の約16,000m2に約240,000m3の廃棄物の埋立が確認されました(処分者、処分時期不明)。
(2) 地質及び地下水の概況
現場の地層は、砂・礫層、シルト・粘土層、火山灰層が幾重にも積み重なって分布しており、砂・礫層に3層の帯水層が確認されています。このうち、処分場の直下面に分布する第2帯水層が周辺への影響を考える上で重要な帯水層となっています。
(3) 廃棄物・土壌・水質等試験結果
廃棄物投棄地内では、砒素、ベンゼン等が検出されました。また、周辺地域でも、環境基準を超える砒素、ほう素等が検出されました。
3.生活環境保全上の支障の状況
学識経験者(「三重県生活環境の保全に関する条例」の専門委員)6名で構成する「安全性確認調査専門会議」を3回開催し、次のとおり意見をいただきました。
- 土壌、地下水等の調査結果については、直ちに人体への影響など生活環境保全上の重大な支障のおそれはありませんが、必要があれば適切な対応をするために、継続的な水質検査を今後とも実施していく必要があります。
- 周囲へ飛散、流出した廃棄物の回収、埋立区域内で露出している廃棄物への覆土、地下水汚染の拡大を抑制するための覆土・雨水排水対策、法面保護と土砂流出防止等のための覆土・雨水排水対策が必要です。
4.措置命令の発出、行政代執行
平成19年1月31日に、原因者に対し、廃棄物の飛散・流出防止対策、雨水浸透抑制のための覆土、雨水排除のための排水路整備の措置を講じるよう命じ、履行指導を行ってきましたが、原因者により措置命令が履行される見込みがないものと判断されたことから、平成24年9月11日に行政代執行として現地測量を開始しました。
5.モニタリング調査
平成18年4月より継続して処分場内外の地下水等のモニタリング調査を実施しています。
6.地元協議の経過
平成19年度からの地元要望の掘削調査を経て、周辺生活環境の保全を図り、地元住民の安全・安心を確保することを目的として、平成20年10月から地元・学識経験者・行政による三者協議を開始し、リスクコミュニケーションを継続的に実施しています。なお、第10回からは四日市市が正式に参画し、四者協議として令和6年3月までに26回の協議を重ねています。
- 平成21年度からは周辺環境への影響等を把握するための補完的調査等を実施するとともに処分場区域及びその周辺区域のリスクについての共通認識を深めるため、四者協議において、「リスク評価表」を作成し、これに基づき協議を実施してきました。
- 平成22年12月24日には、地元代表者と知事との間で廃棄物の飛散流出防止対策や覆土及び雨水排水対策等を中心とする「対策工法の骨子案」に係る基本合意書を締結、平成23年11月23日には知事が現地を視察するとともに、地元代表者と知事との間で「具体的な対策工法」に係る実施協定書を締結しました。
- 平成24年7月12日の第14回四者協議において、「具体的な対策工法」の詳細な内容や、「リスク評価表」から移行する形で、対策前、対策中、対策後のリスク管理の考え方等をまとめた「リスク管理表」について地元合意を得ました。
- 令和4年12月23日の第25回四者協議において、対策工事の完了及び行政代執行終了の見込みについて報告するとともに、令和5年度以降のモニタリング等について協議し、「リスク管理表」から移行する形で、対策後のモニタリング結果をまとめた「モニタリングレポート」について地元合意を得ました。
7.産廃特措法に基づく実施計画にかかる環境大臣の同意
産廃特措法は、平成10年6月16日以前に行われた不法投棄等による支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、都道府県等が行う特定支障除去等事業に対し国が支援措置を講ずるものであり、同法では、事業費の90%が起債対象となり、起債額の50%が特別交付税にて措置されます。
当該事案においては、産廃特措法に基づく実施計画に対し、平成25年4月9日に環境大臣の同意を得ました。
【実施計画の概要】
①事業内容
覆土・雨水排水工等を実施し、処分場周辺への廃棄物の飛散・流出防止、雨水浸透抑制を図るとともに、染み出し抑止工を実施し、浸出水拡散防止を図ります。
②事業費 約34億円
③期 間 平成25~34年度
実施計画(表紙、目次、第Ⅰ章)
実施計画(第Ⅱ章~第Ⅵ章)
8.アーカイブの作成
当該事案においては、地元住民と行政が長期にわたり協議を行ってきた経緯があることから、今後の同種事案の未然防止のための取組方針策定の一助となるよう、事案の経緯及びリスクコミュニケーションを中心とする地元住民と行政の協議を通じた事案の解決に向けた取組について、記録として取りまとめました。
第1編 地元住民と行政の協議を通じた取組
第2編 四日市市大矢知・平津事案の概要及び対策
第1章 事案の概要
第2章 安全性確認調査等 前半 後半
第3章 県の対応状況の調査と不適正処分の再発防止策
第4章 特定産業廃棄物に起因する支障除去等の内容に関する事項
第3編 リスクコミュニケーション概説
全編
9.行政代執行の終了及び終了後の対応
(1)行政代執行の終了
支障除去等対策の実施結果及び学識経験者の意見等を踏まえ、令和5年3月31日に行政代執行を終了しました。
(2)行政代執行終了後の対応
行政代執行終了後も、県は生活環境保全上の支障等が除去された状態が維持されていることを確認するためのモニタリング等を実施するとともに、四者協議を継続し、地元・学識経験者・市・県によるリスクコミュニケーションを継続していきます。(ア)モニタリングの実施
事案地周辺等の表流水及び地下水のモニリングを実施します。
(イ)工作物目視点検及びパトロールの実施
支障除去等対策で設置した工作物の目視点検や定期的なパトロールを行い、事案地の状況に変化がないことを確認します。
(ウ)四者協議
モニタリング結果を記録した「モニタリングレポート」を用いて地元・学識経験者・市・県によるリスクコミュニケーションを行い、協議結果を次年度のモニタリグに反映させていきます。