事業者である株式会社シーテック(代表取締役社長 社長執行役員 松山 彰)から送付のあった環境影響評価方法書について、知事が環境保全の見地から意見を述べるにあたり三重県環境影響評価委員会へ諮問していました。同評価委員会からは、平成30年3月12日に審議結果の答申がありましたので、平成30年3月13日付けで、下記のとおり環境影響評価方法書に対する知事意見を経済産業大臣に送付しました。
なお、経済産業大臣は、知事意見を勘案の上、事業者に対して、環境保全についての適正な配慮を確保するために必要な勧告を行うことになります。
また、知事意見については、平成30年3月19日から平成30年5月2日まで、環境生活部、三重県立図書館、情報公開・個人情報保護総合窓口、鈴鹿地域防災総合事務所、津地域防災総合事務所及び伊賀地域防災総合事務所において閲覧に供します。
(事業概要)
・対象事業の名称:(仮称)ウインドパーク布引北風力発電事業
・事業者の名称:株式会社シーテック
代表取締役社長 社長執行役員 松山 彰
・対象事業の種類:風力発電所設置事業
・対象事業実施区域の位置:津市、亀山市及び伊賀市
・対象事業の規模:最大120,000kW(2,000kW級~4,000kW級×最大40基)
※環境影響法の対象事業
※環境影響評価方法書について
環境アセスメントにおいて、どのような項目について、どのような方法で調査・予測・評価をしていくのかという計画を示した書類です。
以下、知事意見を掲載します。
(総括的事項)
1 対象事業の目的として掲げられている再生可能エネルギーの積極的な導入については、国や県等で推進しているところであるが、その一方で、国や県等では生物多様性の保全に関しても取り組みを進めているため、多面的な視点により環境影響を整理し、事業内容を検討するよう努めること。
2 事業を進めるにあたっては、計画段階から地域住民に情報を提供し、住環境、自然環境、景観等に配慮するとともに、地域住民等の理解が得られるよう、丁寧に対応していくこと。
3 関係市長からは水源のかん養及び土砂災害の防止の観点から「本事業区域の設定を再度検討すること」との意見が提出されているため、風力発電設備及び取付道路等の附帯設備(以下「風力発電設備等」という。)の構造・配置又は位置・規模(以下「配置等」という。)については、関係市と情報共有を図るとともに、十分な協議を行い、理解を得るよう努めること。
4 本事業の対象事業実施区域及びその周辺では、他事業者においても風力発電事業の環境影響評価手続を実施中であることから、風力発電設備等の配置等について事業者間での協議・調整を更に進め、実現可能な事業計画を準備書に記載すること。
なお、他事業者が計画している風力発電設備等のうち、本事業との累積的な環境影響が懸念されるものについて、環境影響評価図書等の公開情報の収集や他事業者との情報交換等に努め、累積的な環境影響について適切な予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等の配置等について検討すること。
5 準備書の作成までに環境影響評価の項目及び手法の選定等に係る事項に新たな事情が生じた場合には、必要に応じて、項目及び手法を見直し、追加調査を実施すること。
6 調査、予測及び評価を行うにあたっては、既存の文献、類似事例等を参考にしたうえで、環境影響について可能な限り定量的な把握に努めるとともに、知見が不十分で予測、評価に不確実性を伴う場合には、事後調査を計画すること。
7 環境保全措置の検討にあたっては、同様の事業で公開されている事後調査結果等を参考として、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
(個別的事項)
1 大気質、騒音及び超低周波音、振動
(1) 伐採した樹木を現地で破砕する場合には、粉じん、騒音、振動等に関する予測及び評価の実施について検討すること。
(2) 工事用資材等の搬出入車両の走行及び建設機械の稼働による影響が考えられることから、窒素酸化物とともに浮遊粒子状物質(SPM)について、環境影響評価項目として選定することを検討すること。
2 騒音及び超低周波音
(1) 騒音の項目について、採用する可能性のある4,000kW級の風力発電設備を設置した場合を含めて予測及び評価を実施すること。
(2) 風力発電設備の選定にあたっては、純音性成分を含まない機種を選定するよう努めること。
(3) 施設の稼働に伴う超低周波音について、地域住民から健康面等、様々な影響を不安視する意見が寄せられていることから、環境影響評価項目として選定のうえ、事後調査の実施について検討すること。
3 水質
造成時の水の濁りについて、土砂の流出量は各流域の流量によるため、降水時の流量が適切に把握できるよう調査を実施すること。
また、予測及び評価にあたっては、傾斜、透水性、花崗岩類の風化の状況等の地域特性を最大限反映すること。
4 水質、動物
取付道路等の整備に伴う谷幅の縮小により、下流における土砂流出状況が変化し、オオサンショウウオ等の水生生物に影響を与える可能性があるため、設計にあたっては慎重に検討すること。
5 地形及び地質
風力発電設備等の配置等の検討にあたっては、対象事業実施区域が概ね花崗岩類で占められており、風化の進行度合い及び施工方法によっては崩壊が発生する恐れがあることに十分留意すること。
6 風車の影
シャドーフリッカー(発電所の運転に伴い、回転する風力発電設備のブレードの影により地上に明暗が生じる現象)について、季節による変動に留意のうえ、適正に調査、予測及び評価を実施するとともに、影響があると判断される場合には、その影響を回避・低減できるよう風力発電設備の配置を再度検討すること。
7 動物
(1) 鳥類及びコウモリの渡りの経路は年や個体によって変動があり、また、方法書に示された鳥類の渡り経路の図に用いられた個体数も少ないため、専門家及び関係諸団体の意見を聴いたうえで、十分な調査を実施すること。
(2) コウモリについての調査、予測及び評価にあたっては、専門家の意見を十分に反映させること。
(3) バードストライク及びバットストライクを回避するため、風車の彩色、警報音の発信、カットイン風速(発電を開始する風速)の値を上げること及び低風速時のフェザリング(風力発電設備のブレードを風に対して並行にすること)の実施等の措置を十分に検討すること。
(4) 調査並びに専門家及び関係諸団体から得られた鳥類及びコウモリの渡りの時期の情報を活用し、バードストライク及びバットストライクが発生する可能性が高い時期において、一時的に風車を停止させる措置について検討すること。
(5) 「7 動物(3)及び(4)」の措置の検討にあたっては、既設風力発電所へのリアルタイムのモニタリングシステム導入等により、発生状況の適切な把握に努めたうえで、これらの措置を実行し、その効果を検証するよう努めること。
(6) ヤマネについて、対象事業実施区域ではこれまで調査が実施されていないこと、当該区域から10km程度の距離にある環境が類似した場所において、ヤマネと思われる痕跡が確認されていることから、専門家の意見を聴いたうえで、調査の実施について検討すること。
8 動物、植物、生態系
既設の風力発電所(ウインドパーク笠取風力発電事業)の環境調査において、対象事業実施区域である上阿波地区及び隣接する桂畑地区においてクマタカの営巣等が確認されているとの情報があることから、動物や植物、生態系の調査、予測及び評価にあたっては、既設の風力発電所に関する環境影響評価書及び事後調査報告書の情報を十分に参考とすること。
9 生態系
生態系の典型性の注目種について、ヤマガラだけでなく、アカシデ-イヌシデ群落等の現存量の多い植生についても対象とすること。また、予測及び評価にあたっては、注目種及び群集への影響についてだけでなく、注目種及び群集で代表される生態系全体に対する影響についても検討すること。