明日のためのイカナゴ資源管理
資源管理の効果について知る
「終漁日の設定」の目的は新仔発生量を高いレベルで安定させることにありますが、特に近年は、暖冬など異常気象の影響を受け、期待どおりの成果が得られていないのが現状です。
しかし、近年の漁況を振り返ると、新仔発生量の大きな変動幅に比べて、水揚げ金額の変動幅は小さくなりました。このことは、異常気象等の影響を最小限にくい止めながら、資源をより有効に利用できていることを意味しています。また、資源の発生状況が悪い年があっても翌年には回復するなど、昭和53~57年に経験したような長期的な不漁はみられなくなりました。このように、現在実践している資源管理の効果が、少しずつながら現れ始めています。
伊勢湾産イカナゴの親仔関係には、一定の量的な関係(図4の実線)が見出せます。
しかし、この親仔の量的な関係式には、様々な誤差が含まれています。また、親仔関係を取り巻く外部環境(水温や餌料など)も複雑に影響しており、「これだけ親魚を残したのだから、翌年は必ずこれだけの発生が見込める」という単純なものとはなっていません。
しかし、統計的にみた場合、図4の実線に適合する確率の方が、実線から大きく外れる確率よりも高いことは間違いありません。つまり、長期的な視野でみれば、翌年の新仔発生を安定させるため、漁期中に一定量の親魚を取り残す方法は有効な手段と言えます。どうしても私達は目先の効果のみに囚われがちです。資源管理では、長期的な視点で、その効果を見極めることが重要だと言えます。
また、大切に資源管理した漁獲物で、より効果的な収入増につながるようなこと(兵庫県でのくぎ煮の普及による消費拡大など、資源管理を活かす取り組み)にも積極的に取り組んでいく必要があります。
明日のためのイカナゴ資源管理
平成14年3月 編集・発行
三重県津地方県民局農水商工部水産室
三重県科学技術振興センター水産研究部鈴鹿水産研究室