三重県教育委員会では、三重県の教育改革に関する重要事項について審議し、今後の施策に生かしていくため、令和元年度第2回三重県教育改革推進会議を開催しました。会議の概要は以下のとおりでした。
1 日時 令和元年8月8日 木曜日 13時30分から15時30分まで
2 場所 三重県農協会館 5階 大会議室
3 出席者 三重県教育改革推進会議委員12名
4 要旨 次期三重県教育ビジョン骨子案について審議を行いました。
5 概要
【主な意見】
・特別支援教育の推進の指標「特別支援学校高等部の一般企業就職希望者の就職率」は、客観的で他の基本施策の指標と比べると違和感がある。また、パーソナルカルテは、カルテという単語が病気の印象を想起させるので、戸惑う保護者がいる。ノート等に名称変更できないか。次に、施策「知識を活用して新たな価値を創り出す力の育成」のめざす姿に「社会に大きな変革をもたらす力」とあるが、現場目線で見ると、少し壮大すぎないか。
・指標については、主観で回答するアンケートの場合、調査するタイミングや心の状態などで回答が異なり信頼性が低いので、客観的なものの方が適切だと思う。
・基本施策に指標を設定することはいいと思う。指標は客観的なものの方がいいので、基本施策に主観的なものを設定するのであれば、各施策には客観的なものを多く設定し、全体のバランスを考える必要がある。また、指標は景気など外部要因で変動するのではなく、施策に取り組んだ結果が成果目標に繋がっていくものなので、因果関係を確認しておくべきである。
・施策「知識を活用して新たな価値を創り出す力の育成」でプログラミング教育は、論理的思考力を身につけるとあるが、あくまで手段として文房具のように使いこなすようなことを記載したらどうか。また、学校における働き方改革では、教員がICTを活用して効率的な働き方ができる工夫が必要である。
家庭の教育力の向上のところでは、父親の育児参画についての記述がある。シングルマザーをはじめ家庭の形態も多様化してきているので、そのことをふまえた取組を記述していけるとよいが、デリケートな部分があることにも留意すべきである。
・各施策の名称に「推進」が多い。キャリア教育は充実となっていることにならって、グローカル教育を「充実」や「育成」、働き方改革は「促進」の方がいいのではないか。各施策のタイトルの見直しをしてはどうか。
・ビジョンが県民に示すものであるのなら、グローカルや合理的配慮など、わかりにくい言葉があるので、現行のビジョンのように注釈をつけるべきである。また、骨子案に掲載されているデータは平成28年度など古いものもあるので、可能な限り最新のものを反映すべきである。
・地域とともにある学校づくりでは、「コミュニティ・スクール」という表現があるが、「学校運営協議会」を設置している学校のことをコミュニティ・スクールと呼んでいるので、「学校運営協議会」という言葉を使うほうがよい。また、地域学校協働本部が何であるのかわかりにくいので、もう少し説明が必要である。
社会教育と地域の教育力のところで、放課後児童クラブと放課後子ども教室の記載があるが、違いを説明する必要がある。今待機児童が問題になっているので、指標にしてもいいのではないか。
・外国人児童生徒教育の推進について、例えば、遠足の際には弁当の用意が必要であるといった日本の学校文化への理解を図るなど、家庭に日本の文化や制度が理解され、協力を得られるようにする取組の記述があるとよい。
防災教育・防災対策に関わって、県外のスクールカウンセラーから支援の依頼があった際の窓口を明記するなど災害発生時における三重県としての支援の受入れ方針を示してほしい。
・幼児教育について、教職員の資質向上には、指導内容や指導方法についての相互理解のほか、小学校への円滑な接続に向け、保・幼・小の教職員による子どもの姿の共通理解がポイントとなるので、記述してほしい。また、規則正しい生活習慣が子どもの今後の成長にとって重要であることを保護者が分かるよう周知してほしい。次に、スマートフォンについては、青少年だけではなく、乳幼児も含めて、使用ルールを決めておく必要があるので、啓発してほしい。それから、男性が育児参加する頃は、仕事が忙しくなる年齢でもあることから、個人の努力だけでなく企業や地域にも父親を支える働きかけが大切であること、父親の育児参画が子どもの心身の発達や配偶者との良好な関係づくりにもメリットがあることを盛り込んでほしい。
・スマートフォンやSNSの使用については、学校だけでなく家庭と連携して啓発していくことが大切であることを示してほしい。また、健康教育に関わって、骨子案では「性の問題行動」、「薬物乱用」と「アレルギー疾患」とが並列になって課題として記述されていることに違和感がある。
・骨子案全体に関わることとして、「子ども」「生徒」「高校生」等表記の不統一を解消する必要がある。読書活動については、読書時間は増えてきているが、子どもの能動的な読書に課題があることを盛り込んでほしい。次に、特別支援教育に関する表記の中に、交流及び共同学習を通じて学ぶことが、「ともに助け合い、支え合って生きていくこと」になっているが、共に学び、お互いのよさに気づくことではないか。また、ビジョンは基本的には学校教育における施策とは思うが、青少年の健全育成等内容によっては、生涯学習の視点も必要だと思う。キャリア教育については、市町でも盛んに取り組んでいるところであることから、県の指標は高校生に限定しないようなものにしてほしい。さらに、学力の育成に関わる個に応じた指導について、各市町が検討している小学校における教科担任制の導入を含め、多様な指導方法を示してほしい。
・プログラミング教育等ICTを活用した教育を進めるためには機器の整備が必要であり、そのことをビジョンに記載してほしい。また、今後の児童生徒数の減少を見据えて、1学級40人に限定せず柔軟に考えた学校規模と配置ができる旨書き込んでほしい。働き方改革に関連して、時間外労働時間の上限を超えた勤務はコンプライアンス違反となるということを、法令で決まったことなので明記する必要があると思う。
・骨子案全体を通じて、「三重県らしさ」が弱いように感じる。例えば、三重県は、外国人児童生徒教育で全国のトップランナーなのだから、その取組内容を三重県の強みとして示すなどしてはどうか。
・地域の文化財の魅力を子どもたちに伝えていくことが、地域の担い手を育てることにつながると改めて感じた。文化財の保存・継承について、力強く書いてほしい。
・幼児教育と小学校教育の接続について、特に、私立保育園と小学校の教員との間にはつながりが希薄であることから、例えば合同の研修会を催すなど人脈づくりから取り組んではどうか。
グローカル教育については、外国人児童生徒が多いことを強みとして生かせる取組を盛り込んでほしい。
放課後児童クラブについては、学校の空き教室を施設として利用することや退職教員を指導員に斡旋することについて記載できないか、検討してほしい。
文化財の保存・継承の施策では、地域の伝統行事の担い手不足が深刻な状況であることから、例えば総合的な学習の時間で地域の伝統文化と関わる機会を持つ等学校を巻き込んだ取組を記述できないか。
・幼児教育や食育、家庭の教育力の向上に取り組んでいくため、家庭科教育を推進する旨を盛り込んでほしい。