三重の木づかい人
第3回 森林組合おわせ一級建築士事務所 平成27年6月23日
一般的に森林組合というと、森林管理や木材生産を担っており、「木を使う側」というよりは「木を生産する側」の組織ですが、尾鷲ヒノキの産地にある森林組合おわせには2名の建築士さんがいらっしゃいます。「三重の木づかい人」第3回は、その内のお一人、塩﨑弘享さんにお話を伺いました。
森林組合おわせ一級建築士事務所では、地域内の豊富な森林資源を生かし、木の良さが感じられる空間づくりに取り組まれています。森林組合という利点を生かし、材料調達から設計まで一貫した体制で住宅をはじめとする建築物をつくられています。
また、塩﨑さんは、地域内で生産される尾鷲ヒノキの伝統を守り、地域の環境と産業を未来へ伝えるための組織である「東紀州・尾鷲ひのきの会」の一員としても熱心に活動されています。
さらに、県産材を使った新商品「GRフローリング」の製造・販売等を目的に三重県内の関係者が設立したGR内装材協会においても、中心的な役割を担われています。
※ 「GRフローリング」とは、木材にプラスチックを注入するWPC技術を活用した三重県産無垢材の新製品で、キズに強く汚れにくいという特徴を有しています。「GR」という名称は、三重県内の企業が、互いに輪(和)を育み、一年一年着実に成長するという意味で「Growth Ring(年輪)」の頭文字を取って命名されています。
仕事へのこだわりやコンセプトを教えてください。
地域の資源である尾鷲ヒノキを生かしながら、木の良さが感じられる空間づくりをしたいと思っています。従来は、尾鷲ヒノキを柱として見せる使い方が中心でしたが、生活スタイルが変化する中で、新たな見せ方も提案していきたいと思っています。
また、お客様との打合せを通じて、その方に合わせた、使いやすい、最適な間取りを提案していきたいと思って設計をしています。
尾鷲ヒノキの良さや特徴を教えてください。
急峻な地形とやせた土壌という木が生育するには非常に厳しい条件の中、ゆっくりと長い年月をかけて育っているので、年輪が緻密で、油分が多く光沢があり、耐朽性にも優れています。
強度面でも優れており、実際に試験をしてみると材の強さを示すヤング係数は平均E110程度と、一般のヒノキのヤング係数(E90~100程度)に比べて大きいことがわかっています。
また、耐朽性があり、長い年月が経っても傷みにくいため、建物をリノベーションする際にもそのまま使うことができ、無駄な出費を抑えることができると思います。
新製品「GRフローリング」について、特徴等を教えてください。
GRフローリングは、良質な三重県産のヒノキを使用し、従来の無垢フローリングにはない高い耐汚染性・耐久性を実現した製品です。生活スタイルが変化し、椅子を使うことが多くなりましたが、GRフローリングは「キズに強く汚れにくい」という特徴を有しているため、設計者として無垢材をフローリングに提案しやすくなりました。
実際にGRフローリングを使用したお宅でも、従来の無垢フローリングよりもキズがつきにくいという評価をいただいており、新たな県産材の需要を開拓していける製品ではないかと思っています。
森林組合おわせ、東紀州・尾鷲ひのきの会の詳細については、下記HPをご覧下さい。