三重の木づかい人
第16回 社会福祉法人洗心福祉会 平成28年3月10日
これまで「三重の木づかい人」では建築関係や製材関係の方々にお話を伺ってきましたが、第16回では施主側として木づかいに関わられている社会福祉法人洗心福祉会(津市)の山田俊郎理事長にお話を伺いました。
洗心福祉会では県内6市において、保育施設、高齢者福祉施設、障がい者福祉施設、診療所の4部門を運営されています。すべての部門に木造の施設があり、平成27年度に設置した3施設を合わせて17の木造施設を有されています。施設整備の際には、県産材をはじめとする木材をふんだんに使用しており、昨年7月には木造建築集「木の心と木の技」を法人独自で出版されています。
木をふんだんに使用して施設を建設する理由を教えてください。
洗心福祉会では、「洗心の心で地域に貢献する」という理念のもと児童福祉、高齢者福祉、障がい者福祉、医療のサービスを提供していますが、利用者の方が最高のサービスを受けられるようにすること、環境との共生を実現することを追い求めた結果、利用者の方に木の空間で過ごしてもらうのが良いということに行き着きました。木造以外のものも含め、多くの施設を運営する中で、馴染みやすさや心地よさといった木の素晴らしさを強く感じています。特に保育園は、すべての園舎が木造になっているのですが、子どもたちも保護者の方も園への馴染み方がスムーズで、このあたりからも木の良さを感じているところです。
これまでに建設した施設の特徴等を教えてください。
保育園の保育室にヒノキの丸太柱を使用しているのですが、2才児から5才児まで年齢に合わせて丸太の太さを変化させています。子どもたちは保育園の中で、木と友達になって、木に触れ、木の気持ちが分かるように木に寄り添い、木の香りを感じています。木とコミュニケーションをとることで、園舎に使われている木や建築に携わった方々に感謝する気持ちを自然に持ってくれています。
それから現在、津市美杉町で美杉ホットテラスという高齢者向けの施設と診療所を建設しているのですが、この建物では美杉地域の木材をふんだんに使用しています。施設内には、障がい者福祉施設で制作した工芸品も設置する予定になっており、地域の木材との組み合わせでどんな施設が完成するのか今からとても楽しみにしているところです。
保育園児や高齢者の方等、施設利用者の方の反応はいかがですか。
「いいなあ」「すごい木やなあ」といった反応を良く聞きます。木をふんだんに使っていることで心地よい空間が実現できているおかげか、利用者の方からも「入りやすい」「使いやすい」といった声をいただいています。
また、安全面にも十分配慮して施設を作っていますので、保育園の子どもたちが木のぬくもりの中で寝ころんだり、柱を触ったりして、気持ちの良い木の肌触りを楽しんでくれています。
今後の抱負等を教えてください。
大規模な施設を是非木造で建ててみたいと思っています。建築基準法等の規定に従って建築しなければなりませんのでまだまだ難しい部分もあるのですが、近年の法改正等によって木造で建てられる建物の範囲が広がってきています。集成材等を用いることでかなりの大空間を実現することもできますし、これまでRC造や鉄骨造などで作ってきた建物を是非木造で建ててみたいと思っています。
それから、既存の施設を大切に使っていきたいと思っています。奈良の法隆寺が1300年の長きにわたって立派な姿を見せているように、木の建物は適切な維持管理をすれば相当な期間使用することができます。施設に使われた木や建築に携わった方々に感謝するとともに、細かな管理を大事にすることで、施設を長く大切に使っていきたいと考えています。
社会福祉法人洗心福祉会の詳細については、下記のページをご覧ください。