市町村の合併の推進についての要網(概要版)[平成12年12月25日]
4 合併に際して懸念される事項への対処
合併に際しての懸念に対し、国においては、合併特例法による行財政措置をはじめとする総合的な支援が図られることとなっているが、地域においても、合併協議会で市町村建設計画を策定する際に、これらの懸念を念頭に置いたうえで、地域の実情に基づき、住民の意向を十分尊重して手続きを進めるなど、細やかな配慮を行いながら、新しい地域づくりを行っていくことが重要である。
(1)市町村合併と地域社会との関係
合併により広域化を進める場合には、行政が地域に密着した問題を住民の参加や住民とのコラボレーション(協働)の下に解決していくための仕組みを作りあげていくことが重要である。例えば、NPO等市民活動団体やコミュニティ組織がその役割を発展させて、地域の自治組織として多面的に自由に機能できる機関となるなど、基礎的な自治組織を強化していく観点での改革が必要である。
(2)地域の特性を活かした新しいまちづくり
合併後の市町村の中心部と周辺部の格差の問題については、合併協議会において「市町村建設計画」を策定するにあたり、地域振興のビジョンを明確にし、それぞれの地域の特性を活かした施設整備や事業の実施ができるよう留意しておく必要がある。
また、合併特例法上の地域審議会(旧市町村の区域ごとに設置され、新市町村長の諮問により当該区域の振興について審議し又は意見を述べる審議会)を有効に活用していくことも重要である。地域審議会には、行政サービスに不合理な格差が生じないよう意見を述べるということだけではなく、それぞれの地域の特性を十分に活かす施策を実現することにより、全体として市町村を個性的で魅力あるまちにしていくという積極的な役割が期待される。
市町村合併に際して懸念される事項とその対応
分野 | 懸念される事項 | 懸念される事項への対処 |
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1.住民の利便性と住民負担 | ○行政サービスの水準に団体間格差がある場合、合併することによって高い水準の団体の行政サービスが全体として低下してしまう。 |
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○住民税の均等割が上がる。 |
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○行政区域の拡大により、従来受けていた役場ごとのきめ細かな行政サービスが受けられなくなる。 |
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○行政区域が拡大する一方で職員数、各種施設などが合理化されるので、行政サービスの水準が低下する懸念がある。 |
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2.まちづくり | ○合併により中心地から遠くなると、地域が寂れてしまう懸念がある。 |
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○旧市町村の歴史、文化、伝統といった特徴や個性が失われることへの不安がある。 |
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○住民にとって強い愛着のある名称が消えてしまうことへの不安・抵抗が想定される。 |
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○役場が統合されるので、旧町の地域では行政機関までの距離が遠くなる。 |
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○自主的な合併が進めば、過疎地域が取り残される懸念がある。 |
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表(1) 市町村建設計画について 概要 市町村建設計画は、合併市町村の建設を総合的かつ効果的に推進することを目的として作成されるもので、合併特例法に基づく計画。同計画では、合併市町村の一体性の速やかな確立、住民福祉の向上などを図るとともに、均衡ある発展のために適切な配慮がなされることが求められている。また、住民に対し、合併後の将来ビジョンを示すことで合併の適否を判断する材料ともなる。 |
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表(2) 合併特例債の概要
合併市町村が市町村建設計画に基づいて行う次の事業のうち、特に必要と認められるものに要する経費について、合併後10か年度に限り、特例的な地方債を充当できる。
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表(3) 「地域審議会」の概要 (1)性格・目的
(2) 任務
(3) 設置方法
(4)設置単位
(5)設置期間
(6)組織・運営に関して協議で定める事項
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3.行政と住民の関係 | ○議員数が減少し、住民の意見が行政に反映されにくくなるのではとの懸念がある。 |
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○行政が広域化すると少数の意見が切り捨てられるのではとの懸念がある。 |
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4.行財政の効率化と行政組織 | ○旧市町村の一般職の身分は保障されるため(特例法9条)、人員の削減が容易に進まない(退職による自然減を待たねばならない)。 |
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○旧市町村の行政区域に対応して支所や出張所をおいたり「市町村建設計画」でさまざまな事業を盛り込むと、場合によっては事務効率が低下したり経費削減効果につながらない懸念がある。 |
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○行政文書の移管、役所の整理統合、コンピュータシステムの統一、名称変更など、合併にともない多額の経費がかかる。 |
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○合併後、一定期間は地方交付税が保証されるが、その後は交付額が減額となる |
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○財政力に格差のある市町村が合併した場合、豊かな財政力を有する団体の住民に不満が残る。 |
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○一般職の管理職昇進や特別職等の選出を旧市町のバランスに配慮して選考しなければならなくなる。 |
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○首長の権限が増大し、権力が一極集中化する懸念がある。 |
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