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平成20年10月15日

三重県の市町村合併

市町村の合併の推進についての要網(概要版)[平成12年12月25日]

4 合併に際して懸念される事項への対処

合併に際しての懸念に対し、国においては、合併特例法による行財政措置をはじめとする総合的な支援が図られることとなっているが、地域においても、合併協議会で市町村建設計画を策定する際に、これらの懸念を念頭に置いたうえで、地域の実情に基づき、住民の意向を十分尊重して手続きを進めるなど、細やかな配慮を行いながら、新しい地域づくりを行っていくことが重要である。

(1)市町村合併と地域社会との関係

合併により広域化を進める場合には、行政が地域に密着した問題を住民の参加や住民とのコラボレーション(協働)の下に解決していくための仕組みを作りあげていくことが重要である。例えば、NPO等市民活動団体やコミュニティ組織がその役割を発展させて、地域の自治組織として多面的に自由に機能できる機関となるなど、基礎的な自治組織を強化していく観点での改革が必要である。

(2)地域の特性を活かした新しいまちづくり

合併後の市町村の中心部と周辺部の格差の問題については、合併協議会において「市町村建設計画」を策定するにあたり、地域振興のビジョンを明確にし、それぞれの地域の特性を活かした施設整備や事業の実施ができるよう留意しておく必要がある。
また、合併特例法上の地域審議会(旧市町村の区域ごとに設置され、新市町村長の諮問により当該区域の振興について審議し又は意見を述べる審議会)を有効に活用していくことも重要である。地域審議会には、行政サービスに不合理な格差が生じないよう意見を述べるということだけではなく、それぞれの地域の特性を十分に活かす施策を実現することにより、全体として市町村を個性的で魅力あるまちにしていくという積極的な役割が期待される。

市町村合併に際して懸念される事項とその対応

分野 懸念される事項 懸念される事項への対処
1.住民の利便性と住民負担 ○行政サービスの水準に団体間格差がある場合、合併することによって高い水準の団体の行政サービスが全体として低下してしまう。
  • 住民ニーズがより高いものに資源を重点配分する等の方法により、合併市町村の行政サービスが向上するよう、「市町村建設計画」を策定する場である合併協議会において行政水準の調整を十分に図る。また、サービス水準の高い団体のノウハウを受け継ぐことにより、合併市町村が高水準の行政サービスを行うこともできる。
  • 合併後10年間は交付税が保証されるため、一般に行政サービスの水準は高い方に、負担は低い方に調整されることが多い。
○住民税の均等割が上がる。
  • 個人住民税の均・刳рヘ、人口5~50万の場合年額2,500円、5万人未満の市町村の場合年額2,000円であるが、合併市町村の住民負担に公平性を欠くと認められる場合には、合併後3年度の間は不均一の課税を行うことができる。
○行政区域の拡大により、従来受けていた役場ごとのきめ細かな行政サービスが受けられなくなる。
  • 市町村の規模が違っても行政が行うべきサービスに違いはないが、役場が遠くなるなどの懸念に対しては、旧役場を支所・出張所として機能させることにより、地域に身近なサービスについて一定の対応が可能である。
○行政区域が拡大する一方で職員数、各種施設などが合理化されるので、行政サービスの水準が低下する懸念がある。
  • 住民ニーズがより高いものに資源を重点配分する等の方法により、合併市町村の行政サービスが向上するよう、「市町村建設計画」を策定する場である合併協議会において行政水準の調整を十分に図る。また、専門分野の集約により合理化、充実化が図れるので、より高度な行政サービスを提供することも可能となる。
2.まちづくり ○合併により中心地から遠くなると、地域が寂れてしまう懸念がある。
  • 「市町村建設計画」において地域振興のビジョンを明確化し、「合併特例債」の活用などにより計画的な施設整備やイベントなどのソフト事業を行うことで、地域性を活かした活性化が図れる(表(1)・表(2))
  • 旧市町村の単位で「地域審議会」(表(3))を設置したり、定期的に地域懇談会等を開催し、地域の意向をきめ細かに施策に反映させていくことで一定の対応が可能である。
○旧市町村の歴史、文化、伝統といった特徴や個性が失われることへの不安がある。
  • 「市町村建設計画」において、各地域の特徴を生かしたゾーニングを行い、「合併特例債」等を活用して、地域の特徴や個性を引き出す事業を行うことにより、一定の対応が可能である。また、合併による豊富な人材を活用し地域のリーダーを育成していくこともできる。
○住民にとって強い愛着のある名称が消えてしまうことへの不安・抵抗が想定される。
  • 旧市町村の名称を市町村内の町・字名や学校などの公共施設の名称として残すことができる。また、「合併特例債」等を活用して、地域の一体性や地域住民の連帯感を確保する事業を重点的に行い、人々の生活のなかに名称を残していくことができる。
○役場が統合されるので、旧町の地域では行政機関までの距離が遠くなる。
  • 旧役場を支所・出張所として機能させ、従前の行政サービスを確保することで対応することができる。
  • CATVやインターネットを活用して双方向型の情報ネットワークを構築するとともに、支所・出張所や郵便局等においてワンストップサービスを提供することで一定の対応が可能である。
  • 巡回・出前型のサービス提供や手続きの簡素化により行政機関へ出向くこと自体を減らすことも有効である。
○自主的な合併が進めば、過疎地域が取り残される懸念がある。
  • 都市的な機能と豊かな自然環境をあわせもった地域づくりを進めるなど、地域の特色ある発展を図る視点に立って、各市町村が積極的に合併を検討していくことにより一定の対応が可能である。
表(1) 市町村建設計画について
概要

市町村建設計画は、合併市町村の建設を総合的かつ効果的に推進することを目的として作成されるもので、合併特例法に基づく計画。同計画では、合併市町村の一体性の速やかな確立、住民福祉の向上などを図るとともに、均衡ある発展のために適切な配慮がなされることが求められている。また、住民に対し、合併後の将来ビジョンを示すことで合併の適否を判断する材料ともなる。


表(2) 合併特例債の概要

合併市町村が市町村建設計画に基づいて行う次の事業のうち、特に必要と認められるものに要する経費について、合併後10か年度に限り、特例的な地方債を充当できる。

  • 合併後の市町村の一体性の速やかな確立を図るため又は均衡ある発展に資するために行う公共的施設の整備事業
  • 合併後の市町村の建設を総合的かつ効果的に推進するために行う公共的施設の統合整備事業
  • 合併後の市町村における地域住民の連帯の強化又は旧市町村の区域における地域振興等のために設けられる基金の積立
    (充当率95%・普通交付税措置率:元利償還金の70%)

表(3) 「地域審議会」の概要

(1)性格・目的

  • 合併前の区域の立場に立って、合併市町村が行う当該地域の区域の事務に関し、合併市町村の長に対して意見を述べる機関。
  • 合併市町村の施策全般に対してよりきめ細かな意見を反映できるようにする目的で、1999(平成11)年7月に創設。
  • 対象は合併前の市町村の区域における住民代表、議員など。

(2) 任務

  • 合併市町村の長の諮問に応じ意見を述べること(市町村建設計画の執行状況、予算編成時の事業等に関する要望など)。
  • 必要に応じ合併市町村の長に意見を述べること(公共施設の設置・管理運営、福祉・廃棄物処理等の施策の基本的な計画の策定、実施など)。

(3) 設置方法

  • 合併前に合併関係市町村の協議により設置及び運営に関する事項を決定。
  • 設置は任意

(4)設置単位

  • 合併前の市町村の区域を単位。

(5)設置期間

  • 地域の実情に応じて合併関係市町村の協議により決定(任意)。

(6)組織・運営に関して協議で定める事項

  • 構成員の定数、任期、任命、会長、庶務等に関すること、審議会の召集、開会要件、議決要件に関すること等。
3.行政と住民の関係 ○議員数が減少し、住民の意見が行政に反映されにくくなるのではとの懸念がある。
  • 合併直後の一定期間は議員の在任特例、定数特例制度があり、急激な環境変化は緩和できる。
  • 旧市町村の単位で「地域審議会」(表(3))を設置したり、定期的に地域懇談会等を開催し、地域の意向をきめ細かに反映させていくことで一定の対応が可能である。
  • CATVやインターネットを活用して双方向型の情報ネットワークを構築することで一定の対応が可能である。
○行政が広域化すると少数の意見が切り捨てられるのではとの懸念がある。
  • 行政が地域に密着した問題を住民とともに解決していくための仕組みを作り上げていくことが重要。
  • 旧市町村の単位に「地域審議会」を設置したり、定期的に地域懇談会等を開催し、地域の意向をきめ細かに反映させていくことで一定の対応が可能である。
  • CATVやインターネットを活用して双方向型の情報ネットワークを構築することで一定の対応が可能である。
4.行財政の効率化と行政組織 ○旧市町村の一般職の身分は保障されるため(特例法9条)、人員の削減が容易に進まない(退職による自然減を待たねばならない)。
  • 県から様々な権限の移譲を受けたり、専門組織の拡充等による新たなニーズへの対応を図ることにより、合併による規模・能力の強化にふさわしい体制づくりを進めることで、人員を有効に活用し、一定の対応をすることができる。
○旧市町村の行政区域に対応して支所や出張所をおいたり「市町村建設計画」でさまざまな事業を盛り込むと、場合によっては事務効率が低下したり経費削減効果につながらない懸念がある。
  • 「市町村建設計画」の策定段階に住民の参画を図り、将来ビジョンを見据えながら社会資本整備や行政水準、事務効率等を検討することで一定の対応が可能である。
○行政文書の移管、役所の整理統合、コンピュータシステムの統一、名称変更など、合併にともない多額の経費がかかる。
  • 合併直後に必要となる以下の経常経費については、次の事項について「合併直後の臨時的経費に対する財政措置」が適用されることにより、一定の対応が可能である。
  1. 行政の一体化
    (基本構想の策定・改訂、コンピュータ・システムの統一、ネットワークの整備等
  2. 行政水準・住民負担水準の格差是正
    (住民サービスの水準の調整等)
○合併後、一定期間は地方交付税が保証されるが、その後は交付額が減額となる
  • 「地方交付税の額の算定の特例」(合併算定替)の適用は、合併による地方交付税の急激な落ち込みを緩和し、合併後の市町村の円滑な運営を確保するため、合併実施年度を含む10年度について合併前の旧市町村の合算額を交付し、11年度目~15年度目の間に段階的に縮減するもの(16年度目以降から通常の算定方法となる。)である。
    地方交付税が減額されるのは、一般に規模が大きくなると行政効率が良くなるため、必要とされる経費が削減されるからであり、少ない経費で合併前と同等の仕事ができるようになるということである。
○財政力に格差のある市町村が合併した場合、豊かな財政力を有する団体の住民に不満が残る。
  • 「市町村建設計画」の策定段階に住民の参画を図り、将来ビジョンを明らかにした上で、「合併特例債」等を積極的に活用し、地域バランスに配慮して新しいまちづくりを進めることで、一定の対応が可能である。
○一般職の管理職昇進や特別職等の選出を旧市町のバランスに配慮して選考しなければならなくなる。
  • 人事や昇進等については、旧市町村の単位に縛られないよう十分に留意し、合併市町村の行財政運営においては住民参加や情報公開等を積極的に推進して行政の透明性や応答性を高めていくことで対応することができる。
○首長の権限が増大し、権力が一極集中化する懸念がある。
  • 各行政分野において専任の組織・職員を置き、専門性の高い組織で行政運営を行うことで、長からの権限の委任を進め、組織として適正な権限配分を行うことができる。
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