記事作成:三重大学 畑中 麻緒
私が暮らす地元三重県の熊野は、自然に恵まれた温暖な土地です。たくさんある魅力の中から、今回はそんな自然の恩恵を受けて育った農産物に注目し、その素顔に迫っていきたいと思います。
農産物から熊野の声を聞く ~ファーマーズマーケット「ほほえみかん」~
私の家から車で10分くらいの距離にあり、なじみ深い場所でもある「ファーマーズマーケットほほえみかん」さん。ここは5年ほどまえから特産のみかんや地元産の農畜産物を中心に販売する店舗「ほほえみかん」にリニューアルされた直売店です。地元農家の新鮮な農産物のほかにも、地元産の米粉を使った焼きたてパンなどの販売も行われています。取材では、そんなファーマーズマーケットの「ほほえみかん」さんの 素顔から、美味しくて新鮮な野菜がやりとりされる秘訣に迫ってみました。
「見てごらん!こっちのみかん。美味しいみかんはなぁ、、、」
以前私が「ほほえみかん」で、友人のお土産で渡すみかんを購入しようとした時のエピソードです。私はどのみかんが美味しいだろうかと悩やんでいたところでした。よくよく考えたらいつもお店にでている店長さん。私はその時思い切って声をかけてみることに。すると店長さんはとても親身になって、みかんを手にとり比べながら、どんなみかんが美味しいみかんなのかを私に教えてくれました。
「ほほえみかん」さんの魅力に触れたのは、そんな店長さんと交わしたやりとりがきっかけでした。そんな気さくで笑顔を絶やさない店長さんがお店に立っている理由は、農家さん、お客さんなど訪れる様々な方々との会話を大切にしているためとのこと。今回店長さんとお話しさせていただいたところ、なんと翌朝訪れる農家さんとも直接お話しさせていただけることに!
「飛び込んだら、ちゃんと応えてくれるよ」
朝の7時半、野菜を並べている農家の方にさっそくお話しをきかせていだきました。「他の農家の人と相談したりしながら値段をつけて、自分のペースで農産物を出せるのがいい。」と話してくれたのは朝の7時から野菜を並べる農家の苅屋さん。
「海も山も両方ある。気候も温暖。何より人があたたかい」苅屋さんにこの地域の魅力をお尋ねしたところ、そう答えてくれました。こちらのほほえみかんさんでも、朝野菜を下ろすときに農家同士で会話をするそう。「ただ野菜を卸すだけじゃなくて、ここは農家同士のコミュニケーションの場にもなってる」ということで、確かにみなさん和気藹々と会話をされていました。「この地域の人らは若い人に親切。自分から飛び込んだら、ちゃんと応えてくれるよ」。苅屋さんのそんな一言がインタビューの最後、心に残りまし た。
農産物から熊野の声を聞く・消費者の側から ~熱血ナポリ大食堂「と Cous Cous」~
そんな熊野でとれる野菜を通じて繋がる人々の素顔を、今度は消費者の側からのぞいてみました。
熊野でとれた新鮮な野菜をふんだんに使って料理を出すのは、イタリアンレストランの『熱血ナポリ大食堂「と Cous Cous」』さん。お店に入るとカラフルなタイルで作られたピザ釡が目に飛び込んできます。なんとピザだけではなくて釡もまた手作りというから驚きです。ピザをつくる過程にまで手ぬかりない『熱血ナポリ大食堂「と Cous Cous」』さんは、扱う食材や場所にもこだわりぬいた末、ここ熊野にたどり着いたそうです。料理も季節に合わせて熊野でとれる野菜を使って、日々試行錯誤を重ねオリジナルのものが提供されています。若者が減る地域での、外食産業の難しさを語る一方で、シェフが熊野の地に感じた魅力は一体なんなのでしょうか?
秘宝眠る熊野の地
三重県尾鷲市出身のシェフが熊野でお店を始めたのは、この地域の食材の豊富さが魅力の一つであるそう。「目に見える形で安心・安全な食材が手に入るのがいいところ。都会だとどうしてもお客様に届けるまでにワンクッションおいてしまうけど、ここだとすぐに新鮮な食材が手に入る。」とシェフは語る。
朝摘みの野菜や、尾鷲で水揚げされた魚介類などをすぐに調理することもできるのだとか。シェフをここまで魅了した熊野ですが、驚いたことにこうした地元食材を使った飲食店はまだまだ少ないのだそう。美味しい地元野菜を使った飲食店の経営など、熊野の魅力を伝える方法はまだまだ可能性に満ちていそうです。
取材を終えて
今回取材を通じて、農産物をとりまく様々な人の素顔から熊野の魅力に触れることができました。インタビューを行っていく中で改めて感じた魅力は、そうした人と人のつながり方にあったように感じました。こうした人と人のつながりによって生み出され、守られた熊野の農産物としての魅力ごと、さらにたくさんの人へ伝えていきたいと思いました。