矢野英子氏
最初に
こんにちは、ただいまご紹介にあずかりました、矢野英子です。今日こうして、皆様とお目にかかれる様になりましたのは、平成15年度に、ここの県庁の方々に、私の家に濃泊体験なさっていただいておりますのがご縁で、昨年、突然電話をいただきまして、この会に出ていただきたいということでしたけれど、私も不慣れで、こういう会に出たことがありません。だからちょっと、躊躇しましたところ、主人が「人から頼まれた時は、勇気を出して、挑戦するのが、グリーンツーリズムではないか」と勧められて。津は、私始めてです。レジメに沿ってお話していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
大分県安心院町のこと
大分県の、安心院町を説明していきますと、大分県の北部で、湯布院の隣町になります。そして大都市の福岡市から2時間ちょっとと、北九州市から1時間ちょっと大分市から50分ぐらいで着く所に住んでおります。人口8千5百余りで、ご多分にもれず、少子高齢化、そして過疎の進んだ町です。この町で農家の生き残れる道としては何があるかと、農村活性化の一つとして考えついたのが、都市との交流、滞在型交流、グリーンツーリズムということを民間で立ち上げたのが、平成4年でございます。8人で立ち上げました。これは、アグリツーリズムと最初は名付けておりましたけど、それから農家だけでは、なかなか広がりもないし、町内に住む皆さんの力を借りてやらねばということで、職業は農家だけに限らず、年齢も超えまして、みんなで立ち上げたのが、安心院町グリーンツーリズムです。35名で立ち上げました。そして、平成9年には、グリーンツーリズム宣言町として、議会で認められて、官民共同の推進母体ができまして、これが、私達ツーリズムの大変大きな飛躍となっております。私は特に今回は、自分の実践に基づいたものを皆さんに発表して、少しでもお役にたてたらと思って参っておりますから、聞いていただきたいと思います。
私と農泊の出合い
次のページに入りまして、私と農泊との出会いというタイトルであります。私の家は、兼業農家でございます。そして、築75年の和風の家に二人で住んでおりました。これに目をつけられましたのが、今の会長さんの宮田静一さんでして、平成9年のワイン祭りの時に、「矢野さん、人を泊めてみませんか?」と、声をかけられたのです。「えー、人を泊めるって家にですか?」と言ったらそうですよって、農家では親戚以外の人を家の中に入れるっていうことは、ちょっとタブーでしたよね。農家の方みんな分かると思いますけど、昔から親戚以外の人、家の中に泊めるっていうことはタブーとされておりましたけれど、役所の方から色々な心意気を聞いて、まあ、主人なんか現役の時色々お世話になったし、宮田さんとの人間関係を大事にしたいということで、じゃ私たちやれるかなと思いました。どういうことしたらいいのでしょう?お家の料理に1品足すくらいの料理でいいですよ、そして、矢野さんそのままの状態で迎えて下さい、って言うのです。そうですか、私何も出来ませんよ、って言ったら、何も出来ないのがいいのですよ。そうですか、じゃ、主人もやってみよう、と。その時、今もいつも思うのですけど、グリーンツーリズムをやるのには、勇気とエネルギーがいりました。私丁度60歳でした。やった事もない何にも空白の状態でしたから、かえってそれで、こぎつけたのかなと、思います。そして、お迎えすることになりました。その時にみえたのが、旅慣れた老夫婦で、私達と同じような年配のご夫婦でした。その夜は、とても意気投合してお互い和気あいあいとして、ほんとにもう楽しい一夜を過ごしました。ああこれで、私は農泊に向いているのかなー、私これは、人をお泊めすることができるのかなーって、そのときに自分で自分を納得させたような、ほんとに良かったなあというような気持ちで、そのお客さんを送り出すことができました。
安心院の場合は、最初からリピーターカード、メンバーズカードというので、農泊体験所、農村体験所ということで、お金を頂くことになっております。この資料の、一回泊まりは遠い親戚、10回泊まりは本当の親戚って、ここの所に載っておりますね。こういうものを皆さん会員制民泊って言うのです。安心院方式です。会員になって、さっき平井先生のお話の中にございました。これは、安心院特許でございます。最初から会員制民泊ということで、スタートしております。それで私も農泊体験所ということで、ご夫婦から宿泊体験料をいただきました。そのときほんとに私のした事は、こういうふうに喜ばれてお金をいただけて、いいのかな、勿体ないなという気持ちは、ほんとに第一回目泊めた時、しました。
そして、9年にはその年は何人も来ませんでした。4、5人位で終わりました。10年には50人くらい来まして、11年には38人くらい、12年には、ぐっと増えまして90人と、お客さんが増えるたびに私は、又、心の葛藤がありました。農村民泊で人をお泊めするのに許可もなくて、お泊めしていくことは、いいものだろうか?自分一人で考えてどんなもんなのだろうか?と、お客さんがみえれば、みえる程心の中で葛藤しておりました。
ドイツ農泊体験旅行
その年の12年の11月に安心院町では、ヨーロッパ宿泊体験旅行ということで、ドイツ農泊体験旅行って言います。そういうのを4千円積み立ての5年計画、それで、毎年行っているわけです。それに、私達夫婦で参加しました。7泊8日です。ドイツの体験というのは、ドイツの農家に3泊します。私達が行った農家は、ぶどう農家でございました。その家に農泊致しまして、いろいろお話を聞きましたけど、女性の方がこれを副業として農泊をやって、そして収入の30%位が農泊でお金を得ているという話をしていました。そして、ドイツ農泊で自分に得たものというのが、日本は、素晴らしいということ。春、夏、秋、冬があって、野菜が豊富であるし、山の物もあるし、海の物もあるし、川の物、四季それぞれの野菜以外果物も採れる、それを来たお客さんに提供できる、我が家で提供できるっていうのは、私は日本に住んでいるおかげじゃないかなって、自分の町を見直しましたね。そして、この時初めて私は、ふらふらしていた気持ちが、あっ、私は農泊をやるべきだ、ほんとにこの時に、許可がある、ないとかいうものを超えて、自分として、この地域に生まれて、この良いことを私一人がするのではなくて、こういう良さを知らない人に、ここに来て貰って感じて貰い、体験して貰うのが、私の勤めではないかとその時決心しました。ドイツ農泊は、とても私の、農泊をやることについては、有意義なものでございました。現在もこのドイツ旅行は、安心院町は、実践しております。その年齢が、10代から70代まで行きたい人は、先に積み立てしているのを使っていって、行きたい人から順に使っていくということです。4千円の5年間積み立てをやっております。
グリーンツーリズムをやっていくにあたっては本当に思わぬ事が起こるという事は、今言った様にドイツ旅行なぞ私達のライフプランには、入っていませんでした。夫婦で行って、本当に色々な見聞も出来たし、歳とっても勉強は、いつまでも続くものだということが分かりました。
農泊の広がり
どうしてこんなに、私達の農泊が全国的に広がっていったかと振り返ってみます時に、まず平成13年の7月に、私の所にテレビの取材が入りまして、私の所に農泊して取材されましたし、平成14年の4月29日テレビで、日本の元気は田舎にある、というタイトルで、3時間半程私の所を記事にして、全国放送していただきました。これは、私の所から、半径500m以内で採れる食材を使った、昼ご飯ということでした。これは、スローフードの始まりだったかな、と思います。
それから、平成13年だったかな、有名なテニスのプレーヤーの方もみえて、私の家には、裏庭に岩清水が湧いているのです。そのお水を使って、お豆腐とこんにゃくが出来ますよ、おうどんが出来ますよ、っていうことをうたってあるのですけど、その岩清水で作ったお豆腐、それとおうどんっていうのを取材していただいて、一緒にテレビに出させていただきました。また、色々雑誌が、安心院町の農泊を取材しております。新聞も、全国紙、地方紙とあらゆる所が、入ってきております。最近2、3日前かな、ここへ来る前にもFM放送ですかあの方達が来てちょっと取材させてくれ、ということで取材していきましたけど、マスコミの応援というのは、とてもすごいな、と思います。私達は、他に自分達ではやっておりません。グリーンツーリズム研究会からやっているだけで、自分としては、個人的には、広告は出しておりません。
農泊のお客さん
農泊所は、どんな人達がみえているか?というのをちょっと皆様にお話しておきたい、と思います。私の家にも、全都道府県からみえております。行政からの視察と一般客、中学、高校生の宿泊体験、その他韓国からとなっておりますが、行政からの視察につきましては、やりたいとする行政の方達が、直接私のお家とか近くにある農泊のお家に、宿泊体験されております。遠く岩手県の市長様、福島県の市長様、沖縄県の村長様とか、九州の農政局長様とか、市町村役場の方、県職の方、市長村役場の方々が、その地域のやりたい人と一緒にみえていただいたりしております。
一般客について、ちょっと詳しく皆様にお話したいと思います。一般客の中でも私の心に残っているというか、私のお家にずっと続けて来られている夫婦、それからファミリー、グループをちょっと紹介してみましょう。老夫婦で2年間位の間にも、14回もみえられている人がいます。その方達は山好きですね、登山です。登山目的で、自分の健康管理をなさっている方が、私の家に来て予約で泊まっていって、私の家から、あっちの山に登ったり、こっちの山に登ったりするので、1泊じゃなくて、少なくて2泊、3泊しております。日本の山登りも、大変好きみたいですけど、外国の山にも色々と登られているようで、ビデオなんかを持ってきて、私の所に持ってきて、私達に映して見せて、色々説明して、それを又、私たちに見せるのも楽しみな様で来られています。そして、登山して帰って、私の町は温泉に入って、宿泊する様になっているのです。家から5分くらいの所に湯治の温泉場があります。そこで、温泉に入って、私の家で宿泊するのに、その日の登山の様子とか、私の手作りの料理をとても喜んで、みかんをゆっくり食べて、これを自分の健康の管理として、だから年間に何回かおいでた事になりますね、2年位で、2年ちょっとで14回も来たということは、不思議な位です。
それから、もう一方、私達位の年代で、去年の11月で、10回になりました。この方達は、自分だけじゃなくて、自分のお友達を来るたびに色々なメンバーのお友達を連れてきてくれます。そして、自分の子供とか孫とかも連れてきてくれております。だから私いつも、そんなにどうしてここにそんなに来てくれますか?と、10回にもなったら、厚かましくなるものだから、聞きました。「どうして、ここがそんなにいいの?」と、言ったところが、「安心院の野菜おいしいから食べにくるのですよ。それと、あなた達に会いにくるのですよ。」と、言ってくれました。「あーそうですか、ありがとう。」そう言う以外にありません。ほんとに頭が下がる思いというか、お互いに、私も嬉しいし、向こうも私の家に来て喜んでくれる。これ、半分半分、お互いに分け合う、喜びを分け合うということですね。
もう一つ4、5人の老人グループで、もう80歳以上になっておりますけど、男性の一人住まいのご老人がグループになって来ますけど、心身のリフレッシュといいますか、食べ物がやっぱり偏るからここに来て、バランスをとる、食べ物のバランスをとりに来ているってそんなふうにおっしゃって、これは、福岡の方ですけど、私も楽しみにしておりますし、向こうも来るのを楽しみにしております。
老夫婦でファミリーとして、毎年来られている方は、小学校の子供さんを3人連れて、1人はお母さんが姉妹です。小学生の男の子を、1人が3人連れて、1人の方1人連れて来ますけれど、夏休みになるとすぐ電話がかかってきます。夏休み前に、今度の何日は、おじゃまします。という電話がかかって、毎年来てくれておりますけど、ま、私の所に来てこうする様子を見ておりますと、子供達が家の中でファミコンとかするのではなくて、来たらすぐ、ぱっと外に出ていって、蛙捕ったり、蟹を掴んだり、トンボ捕まえたりして、溝に入ったりして、もう、充分外で遊びます。お母さん達は、家の中でほんとにゆっくりできるって、子供が家の中でファミコンとかしていると、もうこっちもいらいらして気分が良くないけど、ここへ来たらほんとに、もう何にも心配しなくていいって、喜んでおります。そして、外で、充分遊んだ子供達は、おにぎりとかも1回に5個位食べます。で、食欲も出るからお母さん達も、本当にいいねって喜んでくれます。だから自然が子供を相手にしてくれます。こちら全然手をかけなくても、自然と子供が、都市では味わえないものを安心院で味わって、帰って行ってくれます。すぐ次の日、そしたら子供達から又ファックスで、おばちゃんありがとう。昨日捕まえて帰ったコオロギは鳴かなかったよ、あれ雄だったっけ?とかいって帰ってファックスが届いたりします。私も雄か雌かそういうの、答えるわけいきません。少し勉強しなくてはと思ったりしました。そういう小さい子供からも色々な刺激を受けております。
夏休みとか春休みの前には、必ず1泊して小休止して自分のお家に帰る、そういうパターンをとっているファミリーがあります。最初来た時、子供さんは、2人連れておりますけどね、女の子と男の子と連れておりますけど、下の子供がまだ、2歳だったのです。で、もう何回も、これは1年に1回だけですけど、何回も1泊して、山口に帰っておりましたけど、その間に1回は、ご両親を山口県からわざわざ呼びよせて私の家に1泊して、又、山口の方に帰っていきました。この家族をみておりますと、お父さんいわくここが、子供の第二のふるさとになってくれたらいいなーというようなことを口にしておりました。私達もそういう第二のふるさとになるような努めができたらいいなと思っております。来るとおじいちゃんとは、言いません。矢野さん矢野さんって言って、主人にとってもこの男の子が好きで、抱っこしてやる、なんかこう本当のおじいちゃんみたいな感じで接してくれております。
中高生の農村宿泊体験
次に中学、高校生の農村宿泊体験が、ずっと増えてきました。平成12年からやっておりましたけれど、昨年は、中学校は9校で、高校は3校で、全てで12校入りました。それも、5月、6月、10月、11月に、集中しております。子供達が入って宿泊をする場合、人数の少ない学生の時には、私達14軒で出来るのですけど、人数の多い場合は、松、竹、梅で今やりたいけど、やれないとかいう色んな人を招集して、やっていただいております。特に今の子供達は、家庭でもそうと思いますけど、それぞれがそれぞれの時間を持って一緒に作って一緒に食事をするとかいう時間がとても難しい時代になっていると思います。農泊した場合は、それが、もう私達の農泊の家庭では、お手伝いをしてもらえる。子供達を公民館に一同に集めまして、各家庭に自分達に受け入れる人数をそこできちっと把握しているわけですね。そして対面式をします。子供と受け入れ家庭と、町の方々と中に入りまして、皆さん時間を決めて受け入れ農家の家庭がずっと揃いまして、学校側と対面式をして、そして自分のお家に連れて帰る人数の子供を自分達の車に乗せて連れて帰ってくるわけなのです。そして、自分の家庭のメニューで体験させて、子供達を次の日に、又、公民館に連れて行くわけです。安心院の場合は、こうして、体験がそれぞれの家庭でそれぞれの持ち味を生かしたのをやるということは、やっぱり他の所と違うのではないかと思います。それだけ皆さんも、努力していると思います。私たちもやっぱり努力しております。
農村での体験というと、屋外体験だけと考えるのは、天気のいい日もあるし、悪い日もありますから、そうじゃなくて、お料理体験も体験のうちに入れております。私の家の場合は、子供達と一緒にゴボウを採ってきて、ゴボウをさいて里芋を剥いてもらうとか、子供達に出来る範囲のことっていいますか、私は、やれる人って聞いたら、はいって言ったら、やれない人もやれる人も、一応分類してやって貰いますけど、最初はやれない子供もだんだんやって、そして、自分の作った物を一緒に食べるわけです。おにぎりもして貰います。色々なおにぎりができます。子供達は、あっ、これはあんたが作ったのね、これは、私が作ったよ、お菓子類も芋餅、芋餅ってわかりますかね?小麦粉の中にサツマイモを切り込んで作ったお餅、安心院しかないお餅でしょうかね。そういうのが体験してもらえるのですけど、自分達の作った物を、これも私が作ったんだ、あれも私が作ったんだ、とか言いながら食べる。これも体験のうちに入れております。屋外の体験だけじゃなくて、家庭でつくれる農村体験に入れております。料理を作って一緒に食べるということも、これは大きなウエイトを占めております。
ある学校から寄せられた手紙を読ましてもらいます。「生徒総数229名が安心院町の農家の方々に大変お世話になりました。生徒自身が考え、生徒が主体的に行動できる修学旅行を探しておりました。その時にあったのが、安心院グリーンツーリズムでした。修学旅行中および旅行後、生徒達の反応が、がらりと変わりました。各農家の方々の暖かく木目の細かな対応をしていただき、すぐに我が吹き飛んだようです。田植え、野菜、ブドウ、椎茸、イチゴなどの農業体験、パン作り、うどん作り、流し素麺、蛍狩り、川遊び、皿回し、中には、犬の散歩をしたり、鶏を絞め殺したりと豊かな自然の中で、農業体験、遊び、町内観光など、日頃都会では体験できない活動を、一人一人を主人公にして、取り組めたことや、安心院の人々の底抜けに明るい笑顔に接したことは、生徒一人一人の心に強く焼き付いていることだと思います。生徒達は、安心院町でのグリーンツーリズムの修学旅行で、一人一人が大切にされたこと、人間の温かさなどを人として、一番大切なものを学べたのではないでしょうか。ごくろうさんでした。来年も又、生徒がお邪魔になると思います。よろしくお願いいたします。」というお便りを貰っております。私の家では7名の女生徒を引き受けました。地元の中学生、高校生も農泊体験しております。修学旅行は中学生、高校生の農泊体験です。どの方面から来ているかというのを言っておりませんでしたね。昨年は神戸とか埼玉県、神奈川県、北九州、特に北九州は中学がだんだん増えております。中学は1泊2日で体験を主にしております。
韓国からのお客さん
農泊をやっていると国内だけじゃなくて、今もう、インターネットで出ておりますから、韓国からも最近、月に1団体から2団体位入ってきているのではないかと思います。私も昨年は、7回も引き受けました。だいたい4、5人ぐらいで、通訳のついてくる時と通訳なしの時とありますけど、だいたい韓国から入って来るのはグリーンツーリズムのリーダーの人が多ございまして、中には、日本語が、ちょっと分かる人が入ってきております。私達も韓国語の勉強をちょっとしなくてはとやりますけど、すぐ身に付くものではありませんし、ちょっとした、こうテキスト的な物を持っていて、お互いにうん、うんとしあうのです。来て、勉強しようとする人はだいたいこちらのことも、よく理解していただけますし、韓国の方が来た時、日本では、目上の人を大事にするという精神が、ちょっと廃れかけているのですけど、韓国の方とてもそれを大切にして、私の所へ1泊したなかにも、そういうのが、みうけられました。これは日本では、昔はそういう精神があったのだけど、最近は廃れかけているな、こういうことは、あくまでも、大事なことではないかな、と、皆さん受け入れた後に私達は反省して帰る度にそういう話もでております。とっても熱心です。言葉がよくわかりませんけど、大きな声でお互いに話あっております。これは、もう熱心な証拠だなと思って私もみております。
安心院町グリーンツーリズム研究会
安心院町のグリーンツーリズム研究会は農泊部だけじゃないのですけど、広報部、企画開発部、アグリ部、環境美化部、農泊部、応援団部があります。どうしても農泊部は一番前に出てくるというか、農泊は対外的に時間的に多いものですから、農泊が前に出てきてしまいます。農泊は個人で経営しているけど、安心院町を背負っているし、現在、14軒やっておりますけど、14軒が一つである、一人が14軒であるということをいつも私達はみんなで、話あっております。そういうことから、一番先にお受けする時におもてなし、どういうお料理でおもてなししたらいいかなといって、みんな農家の主婦は悩みました。会長さんは、自分の所の夕食に1品加えたのでいいですよ、って言われましたけれど、東京とか遠いところから来られるお客さんに、夫婦二人で食べる食事に1品加えたぐらいでは、とても気の毒で、そこで迷いましたから、みんなで私達がお客になって、みんなの家をまわってみましょうと、それが一番いいねえ、って、みんなのお家をお客になって、各部屋をずっと回りました。それで2年かかりました。安心院のお料理になりますと、だいたい農家ですから、自分の家でとれたものを使える、米、野菜は特に、お味噌も自分の所で作っておりますし、自分の家で採れた物を提供できると、それから一番みんなで言ったのは、自分の家でとれたものを旬の物をお客さんと一緒に畑から採ってきて、その新しいものを提供できるじゃないか、それが一番喜ばれるみたい、旬の物を提供しよう、それが一番良いのではないかなとみんなで考えつきましたし、家庭を回っているうちに、一番良かったと思うのは、年齢にも差があるし、いろいろありましたけど、各家庭の雰囲気といいますか、その家に入りますと1回入って夕食をいただくとその家庭の雰囲気が分かりますから、ほんとに急に14軒が親しくなりました。あのお家に行ったら、あのおじいちゃんおばあちゃんがいる、あのお家に行ったら、朝、ちっちゃい子供もいる、あのお家は何頭か飼っていた牛がいた。私のお家には、ああいうのはなかったけど、家には、こういうのができる。それぞれの家庭をそれぞれの人が認め合うといいますか、家にはないけど、あのお家ならできるよ、だから家に来てお客さんが、もし出来ない場合は、あのお家なら、家の代わり、家にない物を持っているから、あのお家ならいいよ、って、お互いを認め合うことができたと思います。急に親しくなりました。14軒それぞれ。本当にこれは、良かったなーと思いました。そういうふうに和気あいあいになりましたから、今度は色々なイベントとか交流会で色々人を呼んだりするときは、オードブルなどを買うのではなくて、一品を持ち寄って、私達の作ったもので、おもてなししようということも決まり文句になっております。だから私が、今回はこういう会がありますから、皆さん一品持ち寄りお願いします、と言うと、はい分かりました、って言って、そしてバランスよく、私は何を作って来ます。はい、私は何です。って、みんなそれを打ち合わせて、バランス良くないとお客さんにも良くないから。それだけみんなが接触できて、前は尻込みしていたのが、前に自分達のお料理を食べて貰おうという気持ちがどんどん出てきて、本当に嬉しく思っております。
夏でしたか、知事さんをお呼びした時も、そういうお招きをして大変喜ばれました。そういう機会が増える度に農泊の行事に自信が出来ているように思います。女性がシェフになると、大変強いものになります。お料理になると、女性は色々と新しいものを見いだすし、そういうふうになって、イベントの時とか大変喜ばれております。
最後に これからのグリーンツーリズム
最後に、これからのグリーンツーリズムというタイトルになっておりますけど、今まで10年間やってきました安心院の農泊で、一応こういう事を研究会の方からだしております。農泊の魅力ということで。1番にお金をかけないで、だれでも簡単に始められ、仲間同士のネットワーク作りはうまくいく。2番目に1軒1軒違う個性があること。3番目に確実なリピーターを作る。4番目に、農泊受け入れ家庭、特に女性や高齢者の方が自信にあふれていること。5番目に、温泉やグルメでなく農村と農業を舞台とした、人が人を呼ぶ新しい旅である。6番目に農村・農業の重みだけでなく、環境、高齢者、教育、福祉対策にもなる。7番目に、泊まることにより地域に倍近いお金が落ちる。これは、農家の方が出している直売所で皆さん買って帰って行きますから、泊まられたお客さんが、そこで買って帰ると、だから周辺にもお金が落ちるというわけです。そして、グリーンツーリズムは感動産業である。これは、先程言い残しましたけど、1泊して帰る高校生、中学生などは、もう別れる時は、泣いて別れるのです。本当に楽しかったけど涙が出るのだよって。本当に感動です。私たちも本当に、本当に感動しております。だから、やめられません。子供達がくるのは、6月は、植え付けなどで忙しいけど、皆さんそれをわきまえて、受け入れております。
私のこれからの、グリーンツーリズムに対する思いをちょっと発表させていただきます。大分県からは、グリーンツーリズムは、バカンス法が出てこそ、本物のグリーンツーリズムが出来るということを、県から国会の方に提出しております。これが、成功する様に私たちも頑張りたいと思います。安心院町のグリーンツーリズムといたしましては、平成17年度には、実践大学を開校することに予定しております。長期短期と、もうカリキュラムができております。私のほうでは、2月26日には既にアイデア餅作りというので、実習するようになっております。来年度からは、長期の方で、こんにゃく芋植えから、収穫、こんにゃく作りまでを、私が担当するようになっております。今までやってきているものを基盤にしてのカリキュラムですから、一所懸命頑張って、成功させたいと思っております。昨年度8月に安心院グリーンツーリズム研究会専門の事務局ができました。一人若い子を事務局で雇って、専ら行政の方と連携をしながら、やっていってくれております。この子がこういう計画を立て、やることになっております。私達夫婦におきましては、農泊を始めてから、農泊に関しては、今までの夫唱婦随が逆転いたしました。私がちょっと強くなりました。でも二人で一人前です。出来ないこともありますし、加勢してもらって前に進んでおります。今この農泊やって、私は、自分の60年してきた総復習をやっているような感じでございます。だから今からも、初心を忘れずに安心院の本物をずっと守り続けて、この楽しい生き甲斐を一人でも多くの方々に味わって貰えたら、又私も他地域に農泊体験をさせていただきたく、いろいろな農家に泊めていただきたいと思います。
先程お話しました老人グループの中の一人から、今年いただいた年賀状を読ませてもらいます。この方は、80過ぎてお一人で生活しております。「生きるということの意義は、例えば私共が未知であった安心院を知り、しかも龍泉亭(矢野氏民泊の屋号)で心と身体のクリーニングをさせて貰い、次への期待に弾む、なんと嬉しいことではありませんか。今年は、もっともっとご夫妻との交流を深め、生きる喜びに浸りたいと念願しています。年頭の所感です。」こういうお年賀をいただきました。私達二人で、もうこの方の意を粗末にしないで、農泊を続けていきたいと思います。今後とも皆様と力を合わせて、新しい農業の生き方、農泊を求めていきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。