三重県の海は、美しい景観や豊かな水産資源により身近な自然環境として親しまれている一方、海岸にごみが漂着することよって本来の美しい姿が損なわれることが問題となっています。
このような問題の実態把握と今後の発生抑制対策の効果的な実施のため、三重県では漂着ごみのモニタリング調査を実施しています。
1. 調査方法
漂着ごみのモニタリング調査は、漂着ごみ組成調査ガイドライン(令和元年度環境省策定)に基づき実施しました。・調査時期:夏季(6月~9月頃)・冬季(11月~1月頃)の年2回
・調査地点:鼓ヶ浦海岸(鈴鹿市)、奈佐の浜海岸(鳥羽市)、阿児の松原海岸(志摩市)
・調査範囲:汀線方向の幅 50m × 汀線から後背地まで(後背地まで30m以上ある場合、汀線から30m)
・調査対象:2.5cm以上の漂着ごみ(マイクロプラスチック等の微細なごみは除く)
漂着ごみ組成調査ガイドライン
調査地点
分類例
2. 調査結果
回収した漂着ごみを分類し、データシートに取りまとめ、量や組成割合の経年変化をグラフ化しました。
2-1. データシート
・令和2年度 夏季
・令和2年度 冬季
・令和3年度 夏季
・令和3年度 冬季
・令和4年度 夏季
・令和4年度 冬季
・令和5年度 夏季
・令和5年度 冬季
・令和6年度 夏季
※ガイドラインの改訂の都度、データシートの様式が変更されています。
2-2. 経年変化
2-3. 漂着ごみの例
3. 結果
令和2年度以降の3地点に漂着しているごみの量を比較したところ、奈佐の浜海岸(鳥羽市答志島)に多く漂着する傾向がみられました(図2-1)。過去の調査結果も同様の傾向を示しており、答志島は、伊勢湾流域圏から発生したごみが漂着しやすい地理的環境にあると考えられます。漂着ごみの組成については、流木や灌木などの自然物が約8~9割、プラスチックや金属などの人工物が約1~2割という傾向でした(図2-2)。
人工物の中ではプラスチック類が最も多く、プラスチック類の組成をみると、食品包装・製品や海域に由来するものが含まれていました(図2-3)。具体的には、ペットボトルや食品容器、漁具、苗木ポットなどであり、私たちの生活や事業活動から排出されたごみが確認されました。
4. まとめ
海洋ごみは、海岸の景観悪化、船舶の航行阻害、漁業の仕掛けの損壊など、さまざまなところで悪影響を及ぼします。特に、プラスチック類については魚や鳥などの生物が餌と誤って飲み込んでしまうことがあり、生態系への影響についても懸念されます。ごみが流出する原因は、ポイ捨てだけではなく、風に飛ばされるなどして意図せず流出させてしまう場合もあると考えられます。発生するごみの量を減らすこと、発生したたごみは適正に処分することにより、海への流出を防ぎましょう。さらに、陸域や海岸での清掃活動を実施することにより、きれいで豊かな海を守りましょう。