みえ国際協力大使 水越健介さんからの活動報告 その2(2013年11月)
赴任国:マラウイ 職種:コンピュータ技術 2012年9月派遣
マラウイ共和国の学校でICT講師として活動をはじめ、1年が過ぎました。
日本に住んでいたころ、アフリカは飢餓が蔓延し、サバンナ地帯がどこまでも広がって、人々は未だ伝統的な衣装を身につけ生活しているといったイメージでした。しかし、田舎ではまだ想像通りのアフリカ生活を送るマラウイ人がいる一方、都市では少なからずICTが普及してきています。例えば、生徒からFacebook経由で「今日の授業は10時からですよね?」、「ネットワーク授業でわからないところがあります」といった質問を受けることもあるくらいです。
写真:コマンドプロンプトの講義中
今回は世界最貧国といわれているマラウイのICT事情と私の活動内容について書きたいと思います。
マラウイの電気普及率は、国全体では8パーセント、田舎では2パーセント程度です。普及率の低さからも分かる通り、ICTの基盤はおろか、社会基盤が整っているとは到底言えない状況です。私が住んでいるムズズはマラウイの北都にあたり、他の地域に比べ生活基盤は整っていますが、それでも停電は月に数回発生します。情報通信技術の発展状況を表す世界経済フォーラムのITネットワーク整備指数ではマラウイは144ヵ国中128番目です。(注1)
(注1)出典:The Networked Readiness Index 2013
そんなマラウイですが、インターネットへの接続は個人的には比較的発展していると感じます。いまやアフリカ全土で言えることかもしれませんが、携帯電話が爆発的に普及しています。マラウイも例外ではなく、活動先の同僚、生徒や近所の方々を見ても携帯電話を持っていない人の方が少数です。マラウイでは、専用のドングル(コンピュータに接続する小さな装置)を使うと携帯電話回線を利用してインターネットにアクセスすることが可能になります。電気の普及率が低い地域でも携帯電話の電波は届くので、ドングルとパソコンさえあればインターネットが利用できます。
ただスピードは非常に遅いです。Net Indexによるとマラウイは186ヶ国中182番目の通信速度となっています(日本は7番目)。さらに都市部と地方では回線速度に大きな差があります。都市部ではSkypeのビデオ通信が可能ですが、地方ではFacebookを開いたり、Web上でメールを確認したりするのも一苦労だと聞きます。日本では東京と三重では回線速度に大きな違いはありませんが、都市と地方にて差異が生じるのは途上国の特徴と言えるかもしれません。
マラウイはまだこのような状況ですが、私は情報通信技術の発展に希望を抱いています。インターネットは物理的、経済的な状況(先進国と途上国など)から生まれる情報格差を解消する強力なツールです。ICTネットワークが広がれば遠隔教育や遠隔医療など新たなサービスが生まれ、人々の生活水準向上に貢献すると思います。さらにアプリケーション開発といった情報産業ならば、ここマラウイの地でマラウイ人が起業することも夢ではありません。
写真:廊下でパソコンを使う学生たち
そんなマラウイでのICT講師としての活動内容を少し紹介します。
マラウイのICT教育に関わっていると生徒からICT業界で働くことが想像できず、何を勉強したら良いのか分からない。勉強の目的、目標が分からないので、学業に対する意欲が沸かないという声を聞くことがあります。日本では数多くの企業説明会、セミナーやインターンが設けられ、各々の業界で働くことを知り、体験し、キャリアを考える機会が豊富にあります。しかし、マラウイでは、ICTインフラの状況からも分かるとおり、ICTキャリアに対する考え方、学生と企業を結ぶシステムは未熟と言わざるを得ません。
しかし、マラウイにも少なからずICT企業は存在し、ICTエンジニアとしてキャリアを歩んでいる人はいます。そこで、マラウイ国内のICT関係者を招き、社会で求められる知識・技術、キャリアに対する考え方、マラウイでの就職活動方法、ICT学生へのアドバイスをプレゼンテーションして「ICT学生のためのキャリアセミナー」を企画しました。
マラウイの首都リロングウェで開催した第1回「ICT学生のためのキャリアセミナー」ではマラウイの中央銀行職員、大手企業社員やICT講師をプレゼンターとして招き、約150名のICTを専攻する学生が参加しました。セミナー終了後に実施したアンケートでは、ほぼ全員モチベーションが向上した等のポジティブな回答を得ることができました。また、セミナー後に私の活動先で行われた資格試験では、去年と比べて合格率が約30パーセント向上しました。
活動全体にいえることかもしれませんが、こういったセミナーは継続性が重要だと思います。マラウイで活動できる任期はあと10ヶ月程度しか残っていません。その残り10ヶ月で、講師活動に加えて、継続的にセミナーを開催するなど、より多くの学生にICTを武器にキャリアを積む手助けができればと思います。そしてICT人材の育成がこの国のICT発展に寄与すると信じています。ITの発展を通して、ほんのわずかでもマラウイの発展に貢献できるよう今後も頑張りたいと思います。
写真:キャリアセミナー開催中