みえ国際協力大使 水越健介さんからの活動報告
赴任国:マラウイ 職種:コンピュータ技術 2012年9月派遣
赴任国と活動先紹介
マラウイという国を知っていますか?
実をいうと、私は協力隊に合格するまで知りませんでした。協力隊に合格すると、合格証と共に派遣国が書かれた紙が送られてきます。合格したことに喜びながら、派遣国が書かれた紙を確認しました。そこに書かれていたのは「派遣国:マラウイ」。頭に浮かんだのは「どこ!?!?」の二文字でした。今後2年間暮らし、活動する国が決まるわけですから、今でもあのときの衝撃はハッキリと覚えています。
ここで少しマラウイを紹介させてください。マラウイは南東アフリカにある小さな国(九州と北海道を合わせた面積くらい)です。国民の約80%が小規模農家として農業に従事し、約40%が1日1ドル以下で生活している世界最貧国の一国です。ここマラウイでの生活は本当にのんびりしていて、世界で最も歩くのが遅い国という統計データも出回っているくらいです。
写真:ムズズ市の路上マーケット
次に、私の任地と仕事を紹介します。私の任地はマラウイ北部の都市であるムズズという町です。ムズズはコーヒー(ムズズコーヒー)が有名で、町にはマラウイには珍しいCafeがあります。私の配属先は、町から車で10分ほど離れた丘の上にあるムズズテクニカルカレッジという学校です。学校ではICT科の講師として、ネットワーク、情報セキュリティ、プログラミングやWebテクノロジーを教えています。私は講師としての経験は無く、どう教えればよいのか、何を準備すべきなのか、生徒のモチベーションをどう向上させればよいのか、など試行錯誤の毎日です。
写真:ムズズテクニカルカレッジでのICT講義
青年海外協力隊で得られる4つの力
青年海外協力隊の参加にあたり、やはり不安もありました。青年海外協力隊の課題としてよく挙げられるのが、帰国後の就職です。残念ながら、企業から途上国で過ごす2年間はブランクと考えられることがあるようです。ただ私は青年海外協力隊で得られる知識・技術・経験は決して少なくはない、日本企業は経験を過小評価していると感じています。まだ赴任して半年しか経過していませんが、今までの経験をもとに、協力隊を通して得られる力、得られた力について書いてみたいと思います。
(語学力)
まず、やはり語学力です。活動言語は活動国によって異なりますが、私が活動しているマラウイは元々イギリスの領土ということもあり、英語が公用語です。つまり、授業、ミーティングから日常的な雑談まですべての活動を英語で行わなければなりません。私は英語の能力を伸ばす秘訣は、「使わなければいけない環境に身をおくこと」だと考えています。確かに、語学の基本的なことができないと活動に支障が生じそうですが、協力隊は語学の合宿型事前研修が2ヶ月間にわたりみっちりと行われるため、基礎は日本で学ぶことができます。協力隊の2年間を通して、文法的に正しい英語力は向上するかどうかは曖昧ですが、実践的な語学力は確実に向上します。
写真:ムズズテクニカルカレッジの生徒たち
(生活力)
次ぎに生活力です。派遣される国々はどこも、日本のようにレストランに行けば美味しいものが何でも食べられる、スーパーに行けばなんでも売っている環境ではありません。マラウイのレストランでは5~6種類の(どこも同じ)メニューしか提供していません。そして、私の住んでいるところではスーパーや市場に多少種類は豊富ですが、町から少し離れたところで活動する隊員が買える野菜はタマネギ、トマト、たまにキャベツくらいだと聞いたことがあります。そこで私たちは、自炊はもちろんこと、畑を作り、野菜を種や苗から育てています。私の友人はニワトリや豚を食べるために飼っています。日本では炊飯器での米の炊き方も危うかった私ですが、マラウイに来て、生きるために必要な力が格段に上がったと自分でも感じます。
写真:自宅の庭で育てている野菜やハーブ
(柔軟性と寛容性)
そして、柔軟性と寛容性です。マラウイに限ったことではないかもしれませんが、アフリカで活動していると、本当に何事も思い通りにいきません。基本的に約束や時間は守られません。なにか活動しようと物事を進めると、集合時間に誰も集まっていなかったり、集合場所がバラバラだったり、物が壊れたり、盗まれたりと日本では考えられないようなトラブルが多発します。一つ一つのことに苛立ったり、落胆したりしていては、精神が持ちません。最初は「なんでそうなるの、、、」と思うことも多々ありましたが、今は問題が発生したら冷静に判断して柔軟に対応する力と、時にはきっぱり諦める、許す力が身につきました。
写真:自宅近くの路上でモノを売る子どもたち
(日本力)
最後に日本力です。なぜ海外に住んで日本力向上?と思われるかもしれません。海外に住んでいると、私たち日本人は日本の代表として周りから見られます。そのため、日本の文化・食事等を紹介する機会、日本のニュースや情勢に関して訪ねられる機会が頻繁にあります。そして、私が説明する日本の実情は、彼らマラウイ人から見る日本の印象に直結します。下手な意見は言えません。しかし、実際のところ私は日本の文化、歴史や政治などを語れるほど日本を知らないということに気づきました。そこで、日本の代表として日本を語るために日本のことを勉強します。日本のことを学び、日本を海外から客観的に見るにつれて、段々と知識が増えるだけでなく、日本文化の素晴らしさや奥深さを知ることができました。
写真:ローカルレストランにて他国ボランティアと食事
(最後に)
私は赴任してまだ半年しか活動していませんが、日本では味わえないような濃厚で刺激的な日々を送ることができています。あと任期は1年半です。日本に帰国後に「あれをやっとけばよかった」などの後悔が無いように「思いついたことは積極的に周りを巻き込んでまずやってみる」をモットーに活動して行こうと思います。
写真:生徒と共にマラウイ企業を訪問