不妊治療の種類
一般不妊治療
ホルモン療法
排卵障害がある場合や、黄体機能不全により着床障害が起こっていると考えられる場合などに行なわれます。
排卵誘発剤による治療が中心になります。飲み薬と注射薬があります。
一方、自然の排卵がある人に対しても、妊娠しやすさを高める目的で、排卵誘発剤がよく用いられます。
ただし、副作用で卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)※ を起こしたり、多胎妊娠の可能性が高くなるなど、デメリットもあるので注意が必要です。
※卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)・・・排卵誘発をすることで多数の卵胞が育ち、その結果、卵巣が腫れたり、腹水や胸水がたまったりする副作用。
タイミング法
排卵日を予測し、妊娠率の高い時期を指導する方法です。
卵胞の大きさを超音波でモニターすることで、排卵日の予測がかなり正確にできるようになりました。
- 基礎体温表など、過去のデータをもとに排卵日を予測。
- 超音波で調べた卵胞の大きさから、排卵日を修正。
- 排卵検査薬(尿中LH検査薬)が陽性になったら、その日か翌日には排卵。
まずは基礎体温表を病院に持参し、自分の体のリズムや排卵の周期などを伝えましょう。ドクターはここから排卵日を予測します。また、排卵日頃には、超音波で卵胞の成長を調べ、より正確に排卵日を修正。妊娠率の高い夫婦生活の時期を指導されます。
人工授精 (AIH)
子宮内に直接精子を送り込むことで、精子が卵と出会える確率を高め、自然妊娠を目指す方法です。
一般に、タイミング法で妊娠しなかったときの、次のステップとして位置づけられています。
健康保険の適用外になり、1回1~2万円程度です。(医療機関によって異なります)
- タイミング法と同様に、排卵日を予測。
- 夫が精液を採取 (採精)。
- 状態の良い精子を選び、洗浄・濃縮。
- 子宮内に精子へ注入。
子宮内への精子の注入は、ほとんど痛みもなく、1分程度で終わります。
注入された精子は卵管へと移動し、受精→着床→妊娠というプロセスは、自然妊娠と同じです。
人工授精は、精子の状態があまり良くない男性不妊症の場合や、子宮頚管粘液の量や質が悪い場合や、タイミング法やホルモン療法により妊娠にいたらなかった原因不明不妊症に対し有効な治療法だといえるでしょう。
高度生殖医療 (ART)
体外受精 (IVF)
採卵・採精をし、医療技術によって体外で受精・培養をさせ、その後、受精卵を体内へ戻す方法です。
自費診療で、一般に1回20~45万円ほどかかります。(医療機関によって異なります)
- 排卵誘発剤による刺激で、複数の卵胞を育てる。
- 経膣超音波で、卵胞の位置を確認しながら採卵。
- 夫が精液を採取 (採精)。
- 運動性の高い精子を選別し、洗浄・濃縮。
- 卵子を入れた培養液の中に、精子を混ぜ合わせて受精させる。
- その後、受精卵を培養。
- 分割した受精卵を選別し、質の良いものを子宮内へ移植する。
女性側の原因としては、卵管に問題がある場合。男性不妊では、乏精子症や精子無力症などに有効な方法といえるでしょう。また、長期にわたる原因不明の不妊症に対してもすすめられる治療法です。
不妊治療を受ける場合、まずは検査で不妊の原因を特定し、その治療から開始するのが原則です。
原因が見つからない場合は、一般にタイミング法やホルモン療法などの一般不妊治療から治療をスタートします。
タイミング法を数ヶ月から1年程度行っても妊娠しない場合、次のステップとして人工授精を行います。
そして、人工授精を数ヶ月から1年程度行っても妊娠しなければ、体外受精へのステップアップを考慮します。腹腔鏡検査が勧められる場合もあります。
顕微授精 (ICSI)
体外受精とほぼ同様の治療法ですが、精子の状態が非常に悪く、体外受精においても受精卵を得ることが難しい場合などに、医療技術によって人為的に精子を卵子の中へ直接注入し、受精を促す方法です。
自費診療で、一般に1回25~55万円ほどかかります。(医療機関によって異なります)
- 体外受精と同様に、採卵・採精。
- 選別した質の良い精子を1個、細いガラス針を使って卵の細胞質内へ直接注入する。
- その後、受精卵を培養。
- 分割した受精卵を選別し、質の良いものを子宮内へ移植する。
精液の所見が極端に不良な場合など、体外受精で治療をしても受精卵が得がたい場合に有効とされています。