三重県と和歌山県との県境となっている熊野川は、熊野本宮と速玉大社とを舟で結ぶ、いわば川の道でもありました。また、川を横断するのに、速玉大社へ向かう成川の渡し、熊野本宮に向かう楊枝の渡しなどの渡し場があり、成川から新宮への渡し賃は、江戸時代には一人25文と決められていました。
和歌山県指定文化財の速玉大社の祭礼(現在毎年10月15・16日)の一つである御船祭は、熊野川が舞台となります。神霊を乗せた神幸船(じんこうせん)を曳航する諸手船(もろとぶね)は、かつて速玉大社の神領であった三重県の鵜殿村の人々が漕ぎ手となり、御船島を回ります。この時、ハリワイセと呼ばれる赤衣を着て女装をした人物が船上で掛け声とともに踊る「ハリハリ踊り」は、村の無形民俗文化財にも指定されています。