三浦峠越えの古道は、当地では熊ヶ谷道とも呼ばれ、紀北町道瀬(どうぜ)と同町三浦を結ぶ古道です。江戸時代のガイドブックである「西国三十三所名所図会」に三浦峠あるいは三浦坂とあり、江戸時代後期に熊野古道の景観を描いた「熊中奇観(ゆうちゅうきかん)」でも三浦坂と呼ばれていたことがわかります。
始神峠(はじかみとうげ)は、紀北町三浦と同町馬瀬を結ぶ古道の峠で、痩せた尾根筋にあたる峠には茶屋跡があります。また、北東側の海を見渡すことができ、大島をはじめ、暖地性植物群落として県の天然記念物に指定を受けている鈴島も正面にみることができます。
始神峠を通る古道は、江戸時代まで利用されていた道(通称,江戸道)と、明治時代に入ってから、生活道として荷車が往来できるほどに広げた道(通称、明治道)がありますが、本来の参詣者の道であった江戸道には、雨水などを路面に滞水するのを防ぐ「洗い越し」などの工夫がみられます。