旬のおさかな情報
No.29 ウスバハギ 2015年12月25日
ウスバハギ
ウスバハギは、産地では「ラケット」と呼ばれることもあるカワハギの仲間です。「ラケット」とはテニスやバドミントンのラケットの意味で、薄べったく拡がる前半部と、尾がきゅっと締まった形から来ています。カワハギ類としては大型になりますが、扱いは「ハゲ」、でも「ハギ」でもなく、「ラケット」で、カワハギやウマヅラハギよりも下に見られています。高級品ではないところは余計なお世話かもしれませんが、動作が緩慢なところや、その顔つきのユーモラスさもあって、ついつい親しみを覚えてしまう魚のひとつです。
ウスバハギ 南伊勢町奈屋浦 平成27年11月11日撮影
カワハギ 全長33㎝ 南伊勢町奈屋浦 平成24年1月10日撮影
以前紹介した超大型カワハギと、手の大きさを基準にして画像を比べてみました。「ラケット」と呼ばれるウスバハギの大きさがお分かりいただけるでしょうか。
ウスバハギ 南伊勢町奈屋浦 平成27年11月11日撮影
カワハギでは鋭い小棘が並ぶ背鰭棘も、ウスバハギではひょろ長く、とても武器にはなりそうもありません。ウスバハギはどこをとっても危険な場所がなく、安心して触ることができる魚で、そんなところも、穏やかで親しみやすい印象を強めます。
ウスバハギ 南伊勢町奈屋浦 平成27年11月11日撮影
ご覧のとおり、体は大きくても薄べったく、正面を向かれると驚くほど小さく見えます。逆に、正面を向いていたこの魚が横を向けば、相当インパクトのある物体として認識されることでしょう。ひょっとすると、この相手を驚かせる戦術で身を守っているのでしょうか?
さて、ウスバハギの水揚げですが、ブリの定置網で漁獲され、どちらかというとブリよりも早期に来遊するようです。筆者が調査に行く市場では、ほとんどが活魚で出荷され、活魚水槽を埋め尽くすように浮かんでいる状況をしばしば見ています。実は前回紹介したヒラソウダと同時期にもまとまった水揚げがあったのですが、ソマの刺身と比べるとやはりパンチ力に欠けるため、つい後回しに。
しかし、今は暖冬といっても冬、鍋物の季節です。鍋物といえばトラフグが高級かつ有名ですが、いくらお金を払ったところでトラフグの肝は食べられません。その点、肝を楽しめるカワハギ類は強い魅力を持っているところで、カワハギよりも大きくて安く、もちろん肝も食べることができるウスバハギは、コストパフォーマンスという意味では最強といえるでしょう。鍋のだしにもなる魚ですから、火を通す料理といっても鮮度は大切です。ぜひ鮮度抜群のウスバハギで、暖かい幸せな夜をお過ごしください。
(2015年12月25日掲載 企画・資源利用研究課)