おさかな雑録
No.100 ヒゼンクラゲ 2015年6月30日
大型クラゲも実物確認が大切
ヒゼンクラゲ 南伊勢町贄浦 平成27年6月24日撮影
定置網の漁獲物を測定に行くと、「エチゼン(クラゲ)が獲れたぞ」と声をかけられました。「大きいですか?」と聞くと、腕で輪を作り、「大きくないよ」とのこと。
エチゼンクラゲは大変有名な大型クラゲですが、エチゼンクラゲではない大型クラゲもあります。一方、非常に大きく、大量に押し寄せて漁業被害が生じるのはエチゼンクラゲで、要注意種も同じなのですが、漁業の現場でそれらがきちんと区別されているかといえば疑問があるといわざるを得ません。今回も、話だけではエチゼンクラゲだとも、そうでないとも言えない困った状況になるかと思ったのですが、クラゲ類や選別後の魚が入れられる大きな水槽で現物を見ることができました。
ヒゼンクラゲ 傘の表面 南伊勢町贄浦 平成27年6月24日撮影
このクラゲの傘の直径は50㎝くらいで、表面には色のついたぶつぶつがあります。大型クラゲ類の同定方法(日本海区水産研究所) をみると、この特徴だけでもエチゼンクラゲではなく、ヒゼンクラゲであると考えられましたが、もう一つの特徴である、生殖腺下腔の突起を確認します。
ヒゼンクラゲ 口腕側 矢印は生殖腺下腔の突起 南伊勢町贄浦 平成27年6月24日撮影
矢印のように、生殖腺下腔には明らかな突起があり、この個体はヒゼンクラゲであると同定されました。
すぐに定置網の漁業者さんに伝えると、「ああ、太平洋側のクラゲやな。」と納得したご様子でした。当方としても、「エチゼンクラゲか?」という記録と「ヒゼンクラゲ」というそれとでは大きく異なるため、一件落着して一安心でした。改めて、現物の確認と、確認のための資料の重要性を痛感いたしました。
ところで、大型クラゲにはさらに他にも種類があり、しかも名前がみんな旧地名でややこしいことになっております。ついでと言ってはなんですが、熊野灘で混獲されたビゼンクラゲ(スナイロクラゲ)の写真が残っていましたので紹介します。この種の傘の表面は平滑で、色は青みがかり、生殖腺下腔には突起があります。
ビゼンクラゲ(スナイロクラゲ) 傘の直径約19㎝ 矢印は生殖腺下腔の突起
南伊勢町贄浦 平成22年7月22日撮影
(2015年6月30日掲載 企画・資源利用研究課)