旬のおさかな情報
No.21 スルメイカ 2015年1月23日
スルメイカ
例年厳冬期には魚が減り、冬枯れといわれる状態になるのですが、どういうわけかアオリイカ、ケンサキイカ、スルメイカは獲れ続け、ヤリイカに至っては水温が下がってから姿を見せます。したがって、冬になるとイカ類が目立つようになり、逆にイカしか獲れなくなってしまうと、いよいよ冬本番を実感するものです。今年はしばしば熊野灘に暖水が流入しており、イカ以外の魚が極端に少ないということもありませんが、それでも先日の定置網やまき網ではスルメイカの存在が際立っていました。
スルメイカ 外套長約28㎝ 南伊勢町贄浦 平成27年1月21日撮影 協力:中西商店
スルメイカの特徴は、鰭(いわゆるエンペラ)が比較的小さく、外套膜のおよそ1/3程度の長さであること、外套膜の中央に濃褐色の縦帯をもつことなどです。もっとも漁獲の多いイカなので、イカといえばスルメイカを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
生きているイカは、店頭で並んでいるイカとはずいぶん印象が異なります。まず、筋肉からなる外套膜はかなり形を変えることができ、円筒状になったり、扁平になったり、とにかく動きます。手でつかむとギュッと縮むので思わず手を放してしまうほどです。もちろん、腕は自在に動き、棘のある吸盤や、腕の付け根にある鋭いくちばしは強力な武器になります。魚のように見た目から威嚇されることはなくても、結構怖い生き物といえるでしょう。墨も吐きますし。
スルメイカ 左:皮膚表面 右:吸盤 南伊勢町贄浦 平成27年1月21日撮影
協力:中西商店
イカ類は色彩を自在に変えることで有名で、生きているスルメイカもほぼ透明なものから、濃い褐色まで、よく色を変化させています。スルメイカの体表を拡大すると、画像のように大小の斑点が見えます。これらの斑点は色素胞と呼ばれる細胞で、斑点の大きさを変えることによって、体表の色を変化させているのです。したがって、細胞が死んで、大きさを変えることができなくなれば、色も変わらなくなります。本当に新鮮なイカは、色ではなく、軽く触れてみて、その部分の色が変化するかどうかを見る方が、判断しやすいかもしれません。もちろん、目や体の透明感は特に新鮮なものでないとみられませんので、そのような個体は触れて確かめる必要もないでしょう。一番上の画像では、鰭の部分が透けて見えているのがおわかりでしょうか。
スルメイカ 頭部 南伊勢町贄浦 平成27年1月21日撮影 協力:中西商店
イカも鮮度が重要ですが、生きたものをお刺身にする場合、冷やしすぎないようにするのがコツです。特に氷をあてると、白く変色して身が固くなってしまうため、定置網で水揚げする場合にはイカだけ別の水槽に入れて冷やしすぎないようにしている例もあります。今の時期なら、産地へ行けばそのようなイカを手に入れることができるかもしれません。生きている状態から冷やさずに作ったお刺身は、何とも言えない独特の甘みとプリッとした歯ごたえを持っています。なお、一旦冷えて固くなった場合は、冷蔵庫で寝かせるか、一度冷凍するとしっとりと旨みのある味わいが楽しめます。
(2015年1月23日掲載 企画・資源利用研究課)
定置網漁業業(水産資源課へのリンク)