おさかな雑録
No.98 ゴマフエダイ 2014年11月26日
ドキッとしました
ゴマフエダイ 南伊勢町奈屋浦 平成26年11月21日撮影
活魚水槽に50㎝を超えるとみられる大きな赤い魚。ものすごく目立つ姿で、遠くから一目見てドキッとしました。赤くて大きいフエダイ類は沖縄などではおなじみですが、熊野灘ではめったに見かけません。ただ、筆者も単に珍しいだけではそれほどドキッとすることは少なくなりました。実は赤くて大きいフエダイの仲間には、シガテラ毒を持つことが知られているバラフエダイという種があり、ひょっとするとそれではないかと思ったからです。
ゴマフエダイ 南伊勢町奈屋浦 平成26年11月21日撮影
しかし、バラフエダイはおろか、赤くて大きいフエダイ類の見分け方が頭に入っていないため、現場で即答できません。かつて学生時代に調査で沖縄へ行った際、同じように見える赤くて大きなフエダイ類が次々と異なる種に同定されていったのを呆然と眺めていた記憶がよみがえりました。とりあえず写真を撮って、市場の担当者には、後で名前を調べ、問題があれば伝えると言い残してその場を去りました。
ゴマフエダイ 南伊勢町奈屋浦 平成26年11月21日撮影
研究室に戻り、急いで写真と図鑑を見比べたところ、側線より上の鱗列が側線とほぼ平行に走ることから、この魚はゴマフエダイであることがわかりました。とりあえず一安心。
ゴマフエダイはマングローブのあるような河口域~岩礁域にすむ魚で、幼魚の時は淡水に入ることもあり、黒っぽい体色をしています。筆者も幼魚を見たはずなのですが、赤い成魚は図鑑の写真でしか見たことがありませんでした。なお、幼魚、成魚ともに、鱗に黒い部分があることも特徴のようです。
さて、バラフエダイですが、側線より上の鱗列はすべて斜め上後方に向かい、体側下半分の鱗は体軸とほぼ平行に走り、尾柄部や体側上半分に顕著な斑紋がなく、鼻孔が溝の中にあるという特徴があります。上の写真では、鼻孔は普通に開いていて、それだけでバラフエダイではないことがわかります。もしバラフエダイと疑わしき個体に遭遇した場合、色や模様はともかく、顔をしっかり見れば区別はできそうです。
(2014年11月26日掲載 企画・資源利用研究課)