おさかな雑録
No.97 イシガキダイとイシダイの交雑個体 2014年11月10日
両親の性質を受け継いでいます
イシダイとイシガキダイの交雑個体 南伊勢町贄浦 平成26年11月5日撮影
活魚水槽に違和感のある姿を発見。形はイシダイなんですが、模様がはっきりしない上に中途半端です。すこし失礼ながら、汚らしい印象を持ちました。
イシダイとイシガキダイの交雑個体 南伊勢町贄浦 平成26年11月5日撮影
じっくりと拝見したところ、この個体の模様は不明瞭ですが、横帯があり、それぞれの横帯の間には斑点が確認できます。イシダイのオスは縞模様が消失しやすいのですが、この個体のような状態は見たことがありません。
イシダイ おさかな図鑑より
イシダイでは上の写真のように明瞭な横縞模様が特徴です。縞のない部分には模様はありません。大成して縞模様が消えると、全く模様がなくなり、口元だけが黒い状態になります。
イシガキダイ 南伊勢町贄浦 平成26年11月5日撮影
こちらは形はそっくりだけど模様が全く異なるイシガキダイです。縞模様はなく、体中に黒い斑点が散らばっています。イシガキダイも大成して模様がなくなることがありますが、口が白くなります。
このように並べてみると、この中途半端な模様の個体は、イシダイとイシガキダイの両方の特徴を備えていることが明らかで、両種の交雑個体と判断されます。普通、種が異なれば子孫を残すことはないといわれていますが、近縁種どうしでは稀に交雑個体を生じることが知られており、筆者の経験ではフグ類で比較的よく見かけます。イシダイとイシガキダイの交雑個体は、かつて大学が実験的に生産してニュースになったことがあるのでご存知の方もおられるかもしれませんが、天然海域でも生まれることはあるようです。
(2014年11月10日掲載 企画・資源利用研究課)